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2020年09月23日 13:00

【ラスト50kmの攻防】〈広報〉と〈情報公開〉 突然“消えた”データ

「プロパガンダ的に議論を呼び掛けることはしない」山口知事

 佐賀県議会9月定例会の一般質問最終日の16日。九州新幹線長崎ルート(博多―長崎間)の新鳥栖―武雄温泉間の整備方式協議を拒む山口義祥知知事が、「今後は佐賀県の広報手段を使い、県民への情報提供を検討する」と答弁し、積極的に広報展開する転換方針を示唆した。

 同ルート建設推進の立場から一般質問を締めくくった木原奉文氏(自民)に対して明らかにしたもの。木原氏は6月定例会終了後、佐賀県の全10市10町の20歳~69歳男女を対象に、調査会社に委託してインターネットで800人の聞き取り調査を実施したという。

 調査結果を基に木原氏は、「佐賀県の財政負担がないなら55%の人がフル規格に賛成、国との協議で財政負担が最小限に抑えられるなら53%の人がフル規格に賛成と回答した。長崎ルートを整備する、しない、を決めるのは最終的には主権者であり納税者。佐賀県の情報提供は十分なされていないのではないか」と指摘した。

 これに対し山口知事は「長崎県はフル規格推進の立場で広報しているが、我々は受け身の立場だった。プロパガンダ的に広報ツールで県民に議論を呼び掛けることはしていない。今後は広報ツールを使って情報提供を検討したい」と答弁した。

 さらに南里隆・地域交流部長は、国交省が提案する5つの整備方式に対応するアセスメントに同意しなかった理由について、山口知事の答弁を補足説明した。

 国交省とのやり取りで、アセス同意が必要な整備方式はフリーゲージトレイン(新在直通電車、FGT)、ミニ新幹線、フル規格新幹線(標準軌新線)の3つと確認。このうちFGTは技術上のメドが立たないので選択肢にならず、法令上必要なのはミニ新幹線とフル規格新幹線の2つ。武雄温泉駅のプラットフォームで特急と新幹線を乗り継ぐリレー方式は、もともとアセスは不要だった。

 ミニ新幹線建設に必要なアセス期間は4年前後、フル規格新幹線は4年~6年かかる。その結果、アセスが整備財源の確保策を協議する2023年度までの2年半で終了するのは、旧国鉄が実施した佐賀駅経由のルート以外になかった。

 南里部長は、「複数アセスの提案は事実上の佐賀駅経由ルートのフル規格新幹線案と同義と判断した」と決定までのプロセスを伝えた。同部長によると、新鳥栖―武雄温泉駅間のフル規格新幹線ルートは佐賀駅経由以外、長崎道沿いの北ルートと佐賀空港経由の南ルートもあり、十分検討されていないという。

突然、“消えた”九州新幹線のデータ

 ただ国交省が提案した5択の整備方式を基に、一般質問のやり取りの中で、フル規格新幹線建設、ミニ新幹線建設、リレー方式固定の3択が残った様にみえる。一方で山口知事は、一般県民の判断に役立つ情報提供の検討を表明したが、積極広報の半面、県民に判断材料を提供する「情報公開」の透明性はどうなのか。

 「実は、山口知事が知事に就任した後、県庁のホームページから突然、“消えた”九州新幹線のデータがある」と県庁を退職した職員は指摘する。この職員は、井本勇、古川康、山口祥義と3人の知事に仕え、主に福祉の仕事に携わり、ホームページにアップされる九州新幹線の整備費用に注意を払っていたという。

 消える前、佐賀県のホームページは九州新幹線トップから入ると、「分類から入る」→「西九州ルートの紹介」→「建設費」と進み、「整備新幹線の財源」と「九州新幹線の整備費用」を記載。鹿児島ルートと西九州ルートの佐賀県負担対象の延長と工事、負担額、実質負担額が公開されていた。

 そこには、「将来の佐賀県の基盤づくりに必要な新幹線の整備は、福祉や教育の予算を確保したうえで投資的な経費の枠の中で計画的に進めています」と記述。国と地方の負担割合、佐賀県負担額のうち駅舎など建設費の一部を駅舎所在地の鳥栖、武雄、嬉野3市に負担を求め、県負担額の45%は後に国が地方交付税として補填すること――などが説明されていた。

 現在、そのページは見当たらない。「新幹線建設に伴う佐賀県の負担額や実質負担額の公開は県民に大切な情報提供。そのデータが、どうしてホームページからなくなったのか……。『広報』と『情報公開』は違う」。県職員OBは広報に傾きがちな〈古巣〉の情報公開の透明度低下を危惧する。

佐賀県庁のホームページから“消えた”九州新幹線の整備費用に関するデータ。
佐賀県の負担対象の延長や工事費、負担額、実質負担額などが記載されている

【南里 秀之】

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