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2020年09月23日 16:25

【凡学一生のやさしい法律学】有名芸能人の政治的発言(1)

小泉今日子氏の検察官定年延長法案への論陣

 ユーミンが個人的に交流のあった安倍晋三氏の引退会見について、「涙ほろり」というコメントを公表した。その「感想」は本人が意識するか否かにかかわらず、重大政治事件に関する立派な「政治的コメント」であった。そういう意味では、いかなる種類の反論・攻撃コメントも起こりうることは当然である。賛否両論にすぎないためだ。しかし、「反安倍」のみが厳しく攻撃される現象には、「薄ら寒い感」を禁じえない。

 最近では有名芸能人の小泉今日子氏について、『週刊アサヒ芸能』(以下、アサヒ芸能)が「共産党から出馬か」という記事を掲載し、小泉氏本人が激怒したとの報道があった。重大な政治的判断である選挙への出馬を本人への取材も一切なく、根拠なく報道することが許されるか、という問題であり、このことは小泉氏の名誉毀損、名誉感情侵害、さらに芸能活動の妨害などの多くの犯罪法規に抵触する。

 ただし、その多くが親告罪であり、告訴自体を躊躇させる要因がある。また、名誉毀損で民事賠償責任を追及しても、現状の裁判では小額賠償金額しか認められず、ほぼ効果がないと言える。小泉氏は結局のところ、「泣き寝入り」という「賢者の選択」をすることになるだろう。このような社会でいいのだろうか。

 小泉氏は、自民党が無理を通して成立させようとした検察官定年延長法案にネットで論陣を張り、その主張に同調する批判勢力が相当多数に上った。自民党が同法案を撤回したのは、定年延長事件の当事者である黒川弘務検事長が常習賭けマージャンの疑いで辞任を余儀なくされたことが決め手だろうが、小泉氏の提唱による反対運動も無視できなかったとされている。

 今回の事件で、有名芸能人1人の世論への訴求力は、自民党議員の数十人分の訴求力に匹敵することが証明された。有名芸能人が巨大な集票力をもつことは多くの人々の知るところであるが、訴求力も巨大であることを小泉氏は証明した。ネットの存在は大きい。

小泉氏「共産党から出馬か」報道の真相

 小泉氏は「反自民」ではなく、いわゆる個々の事件について是々非々の政治的見解を、党派性のない純粋なかたちで示したにすぎない。これをあえて自民党の天敵である共産党の名前を使って政党色に染め上げたのであるから、週刊誌が売れなくなった事情を背景に『アサヒ芸能』が「金になるなら何でも書く」という末期的段階に入ったことを示している。小泉氏はこのような言論機関の被害者である。

 有名芸能人とその芸能事務所に、何よりも無言の圧力と恐怖感を与えたのは、政権与党を批判する有名芸能人は、有力出版社に容赦なく「デマ攻撃」を仕掛けられ、芸能生活に支障をきたし、芸能人の生命まで絶たれる可能性があることを実演してみせたことである。

 日本の親自民党の市民は、同時に反共産党である。『アサヒ芸能』の誤った報道で、小泉氏は反共産党の多くの市民を敵にまわしたことになる。このような効果を出すために『アサヒ芸能』に「お金を出した者」はいるのか、いないのかは定かではない。『アサヒ芸能』の記事の背景は誰にも知られることはなく、たとえ刑事裁判や民事裁判の記事であっても、その「背景」は深い闇のなかのままである。

 『アサヒ芸能』が自民党の差し金で誤った情報を報道したという証拠はないが、『アサヒ芸能』が、経済的動機もなく、訴訟覚悟で誤った報道記事を掲載するとは考えにくく、この記事が自民党支持者に好んで購入されるという関係にもない。犯罪行為には必ず動機があるが、この記事の動機はすべて闇のなかである。

 芸能人にも人権があるため、政治的発言の是非が議論されること自体が理不尽な話であるが、国民の感情のなかには昔から「河原乞食」の観念が存在し、一種の職業蔑視の風潮がある。芸人が一発の芸で一夜にして金満家になるのも、生涯賃金が芸人の1年程度の年収である平均的日本人労働者には羨望とともに影には妬みがあるのだろう。

 このような事情のためか、芸能人の政治的発言には日本人、なかでも日本の報道記者は過剰に反応する。このような記者に限って、自民党や野党が巨大な集票力を頼みにまったくの政治素人である芸能人、アスリートを候補者に立てても何も言わない。強きを助け、弱きをくじく浅ましさが感じられる。

 この報道の偏りこそ、国民は迷惑をこうむるため、芸能人の政治的発言を批判や報道の題材とする前に、報道姿勢の是正を求めたい。

(つづく)

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