2024年04月20日( 土 )

中国経済新聞に学ぶ~「90後」の若者、「ニュープアー」になった(後)

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 「90後(1990年代生まれ)」は、1人あたり平均12万元もの負債を抱えるという。このデータはいささか大げさかもしれないが、彼らの多くは従来の意味での貧乏人ではないまでも、「ニュープアー」と呼ばれている。高等教育を受け、一定の美意識をもつ一方で、経済力はブルーカラーと大差なく、都市の周辺に暮らす若者たちだ。

原因は2つある

 90後が「ニュープアー」になった原因は、主に2つあると考えられている。1つ目は、彼らが親たちのように貧しい時代を経験していないこと。2つ目は、フィンテックがお金を借りる便利な手段を提供してくれていることだ。信用記録に問題がなければ、基本的に彼らは借りようと思えばすぐにお金を借りられる状況にある。この「ニュープアー」の消費を分析してみると、旅行、健康づくり、贅沢品、自動車、ペットなどに集中していることがわかる。全体としていえるのは、いずれも純粋な消費行動ということだ。そしてこうした現象には警戒が必要だ。

 90後の過剰な消費をあおる企業もある。
 アップルはかつて、音楽プレイヤー「iPod」(アイポッド)のバッテリー寿命を18カ月と設計し、スマートフォン「iPhone」(アイフォーン)を修理しにくくし、わざと新型の5角形のネジを採用していた。こうしたやり方は企業側の「計画的スクラップ戦略」と呼ばれた。メーカーがわざと故障しやすい製品をつくり、消費者が新たにお金を払って買い換えざるを得ない状況をつくり出していたのだ。

 こうしたやり方が徐々に過去のものになると、アップルはカラフルなスマートフォンをそろえて大量に売りさばく手段に打って出た。これは、1920年代にゼネラルモーターズ(GM)のスローン社長が元祖だ。スローン氏は売上を伸ばすため、消費心理を一新させる手法、「計画的陳腐化」を創造した。

 この手法は新しい自動車に性能や技術の大幅な改善がないときに、カラーやデザインを変えて消費を促進するというもので、スローン氏は車にとってもっとも重要なものは何かを消費者に忘れさせ、新しいカラーを追いかけるべきトレンドへと祭り上げた。

 業者に包囲攻撃されて、業者のやり方をよく知っていても、自分をコントロールできない若者は、あっという間に「ニュープアー」になってしまった。

「貧乏の罠」に陥る

 2019年にノーベル経済学賞を受賞した3人の研究者は、「貧乏人の経済学」の概念を打ち出している。貧乏であることの根本的な原因は、貧乏人が資源と余剰の利益を有効に利用できないこと、本来は未来の発展に利用されるべき資本的支出が大量に浪費されていることにあるという。現在、こうした90後の「ニュープアー」は、明らかな過度の消費という「泥沼」に足を踏み入れて抜け出せなくなりつつあり、徐々に「貧乏の罠」に陥りながらそれに気づいていない。

 彼らは何かモノを手に入れるために頻繁にお金を使い、いいと思えば新しい商品が出るたびに買い換える。たとえ不合理だとわかっていても、結局は、一時的な満足感を得ることを繰り返してしまう。このような暮らし方は必ず長続きしない。

 高額の負債は過剰な消費行動が招いているため、最終的に本当に貧乏になってしまう可能性がある。若者は冷静にならなければならない。買い物することばかり考えるより、実のあることにより多くエネルギーを振り向け、自分の手で価値を生み出し、自分のためにより良い未来を切り拓く方がいい。

(了)


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