市内企業の成長促す金融支援~下関市と連携協定で課題解決へ(後)
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(株)山口銀行 頭取 神田 一成 氏
魅力的な地域資源が豊富な維新発祥の地・下関
――下関市のポテンシャルについては、どのようにお考えですか。
神田 まず、何といっても歴史です。日本史の節目にたびたび登場しているほか、明治維新はもちろん、欧米列強の仲間入りのきっかけとなった日清戦争後の「下関条約」締結など、日本の近代化はある意味、この山口・下関の地から始まったといっても過言ではありません。また、ふく(フグ)やウニ、鯨、アンコウなどの水産物をはじめ、「垢田トマト」などのブランド野菜、川棚温泉の「瓦そば」などのご当地グルメなど“食文化”も多彩なうえ、角島などの豊かな自然環境など、他地域にはない魅力ある資源がたくさんあります。地域のポテンシャルがとても高いのは、間違いありません。
ところが、残念ながらブランディングやプロモーションが十分でなく、魅力ある地域資源が、交流人口の呼び込み――つまり観光客の増加につながっていないところがあります。この点は、先ほどの「まちの魅力再発掘プロジェクト」での取り組みも含めて、我々としても取り組んでいかなければならないと考えています。
もう1つ、下関市だけでなく萩も含めて、山口県が“維新発祥の地”というイメージを、もっと前面に出していくべきだと思います。維新のイメージは「スタートアップ」にもつながりますし、「起業するときには山口から」というように、スタートアップ企業に来ていただくような施策をもっと打っていかなければいけません。そのために、通信インフラの整備や補助金などの支援制度の充実などを県にもお願いしているところです。
――これから下関市は、都市としてどのような方向性を目指していくべきでしょうか。
神田 下関市は中核市に位置付けられていますが、人口減少のスピードが早く、とくに郊外部での過疎化が深刻な問題です。市でも「コンパクトシティ」などの都市政策を進めていますが、地区ごとの役割分担などを考えながら、都市機能の集積とともに、各地区の役割や魅力のブラッシュアップを図っていく必要はあるでしょう。
もう1つ、下関市は関門海峡を挟んで九州経済圏とのつながりが強固ですが、とくに政令市である対岸の北九州市とは歴史的にも交流が盛んです。現在、「第二関門橋」(下関北九州道路)の整備に関する検討が進められていますが、実現すれば、北九州の都心である小倉と下関・彦島が直接つながることになります。小倉との交流を増やすことによる、両都市の相乗効果を発揮した活性化やまちづくりには、大きな可能性があるのではないでしょうか。
――そうしたなかで、貴行がはたされる役割は。
神田 先ほどお話ししたような山口地域PPP/PFI官民連携プラットフォームなどの協議の場に積極的に参加し、下関市の“あるべき姿”を描き出すことに協力していくとともに、その実現に向けての支援は積極的に行っていく方針です。また、産業振興に向けては、市内の各事業者への個別の支援にとどまらず、産業界全体の生産性向上の実現に向けて、当行だけでなくグループの総力を挙げて対応していきたいと考えています。
――最後に、下関市のこれからについての期待をお聞かせください。
神田 下関市は山口県で最大の商業都市ですし、本州の最西端の都市としても、ここが衰退していくことはあってはならないと思います。これ以上の人口の減少を食い止め、いかにして賑わいを創出していくかを、皆で真摯に考えていかなければなりません。そのためには、お話ししたように、コンパクトシティの都市政策の下で地域ごとの役割分担を考えていくことも必要でしょうし、海峡都市として第二関門橋を通じた交流による北九州市小倉との双方の発展も重要になってくると思います。
潜在力は十分にある地域なので、一層の官民連携によって賑わい創出を実現させたいですし、そのために私どもも地元行として全力で支援していきたいと思います。
(了)
【構成:データ・マックス顧問 浜崎裕治/文:坂田憲治】
<PROFILE>
神田 一成(こうだ・いちなり)
1962年12月、山口県出身。85年に東京大学法学部を卒業後、(株)山口銀行に入行。2012年に(株)もみじ銀行取締役に就任。その後、もみじ銀行の常務取締役および専務取締役、(株)山口フィナンシャルグループ取締役への就任を経て、18年に山口銀行頭取に就任した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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