2024年04月20日( 土 )

筑紫野市が旧上下水道庁舎で 公募型プロポーザル「市民のために」

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筑紫野市旧下水道庁舎

旧庁舎活用の第1弾は定期借地権方式で実施

 2019年1月から新庁舎での行政サービスの提供を行っている筑紫野市だが、以前使われていた旧庁舎の今後の利活用の動向に注目が集まっている。

 旧庁舎は、その一部が筑紫野市の前身である二日市町の役場として1936年に建てられたもので、築80年以上が経過して老朽化が進行していた。また、町村合併や市制施行を経るなかで建物自体も狭隘化しており、その対応策としてプレハブによる増設などを繰り返したことで、庁舎自体が6棟に分散。本館のほかに別館5棟、さらに上下水道庁舎と文化財担当事務所などが離れた場所に設置され、施設・機能が分散していたことで、市民や職員などの多くが不便さを感じていた。

 こうした状況を踏まえて、市民に対して庁舎に関するアンケートを実施したところ、7割以上が「庁舎を建て替えてほしい」と回答。庁舎の利便性向上は喫緊の課題であることが明らかとなったことで、市民からの要望に応えるかたちで、市は新庁舎の建設を計画し、2017年7月に着工。18年12月に落成式を迎え、年明けの19年1月4日から供用を開始した。完成した新庁舎はこれまで6棟に分散していた施設・機能を集約したことで、ワンストップでの公共サービスの提供が可能になり、市民からも好評だという。だが、その一方で、旧庁舎跡地の今後の利活用の動向については気になるところだ。

 市は今年6月、旧上下水道庁舎跡地を活用した「筑紫野市旧上下水道庁舎用地活用事業」を公募型プロポーザルで行うと発表した。公共事業の業務委託先を決める際の代表的な手法としては、価格の安さで選定する競争入札方式や、提案内容の優劣を競うプロポーザル方式があるが、「筑紫野市旧上下水道庁舎用地活用事業」では高い専門性に加えて、市民が日常的に利用し、交流を深められる場所として相応の要求水準を満たすことが求められるため、公募型のプロポーザル方式を採用。すでに応募は締め切られており、9月3日の申込事業者へのヒアリングを経て、優先交渉権者を決定する予定となっている。

 筑紫野市では、民間事業者の資金やノウハウなどを事業地の有効活用に生かすほか、事業用定期借地権方式により事業者に賃貸するため、新たな収入源の確保にもつなげたい考えだ。借地料は年間600万円(最低価額)で、借地期間は30年間。事業者は既存建物等を解体・撤去後、借地上に新施設を建設し、同施設の管理運営までを手がけることになる。

【内山 義之】

【筑紫野市旧下水道庁舎物件概要】
対  象  地:筑紫野市二日市中央2-1025-1
敷地面積:883.78m2(約267坪)
用途地域:商業地域
建ぺい率:80%
容  積  率:500%
<既存建築物の概要>
竣工時期:1958年4月
建物構造:鉄筋コンクリート造地上2階建
延床面積:919.92m2


筑紫野市長 藤田 陽三 氏

 本市の市役所旧庁舎跡地の利用をどのようにしていくかは、市民の意見を聞いて慎重に考えていきたいと思います。今の段階で私の方から具体的な内容を申し上げることはできませんが、たとえば、市が頭を悩ませている問題の1つに、待機児童の問題があります。旧上下水道用地活用事業の事業者には、この問題の解決に貢献していただきたいという思いはもっています。

 人口が増えるのは非常に嬉しいことですが、待機児童問題は保育士不足を顕在化させました。保育士の皆さまが働きやすい環境の整備という点でも、新規保育所の提案が出てくるのか、非常に期待をしております。

 旧庁舎跡地をいつまでもそのままにしておくわけにはいきませんが、災害発生時における市民の安全を第一に考えた場合、旧庁舎跡地はあえて新規の開発を行わずに残しておくという選択肢もあります。そうすれば、万が一災害が発生した場合に、市民の避難所や仮設住宅地、災害支援物資の格納に使用できます。市民にアンケートをとって、その結果の通りにすればよいという簡単な話ではなく、「今の状態でも利用方法はある」という認識はもっておく必要があります。

 旧庁舎跡地は、大事に使わせてもらいながらも、そのときが来れば、市民の皆さまのご意見を参考にしながら、活用案をご提示し、市民の皆さまの了解を得たうえで、計画の概要を公表したいと考えております。現在はそのときに備え、「避難所や格納庫はどこにするんだ」ということを一生懸命に模索している段階であり、必要な対策と合わせて必要な準備をしているところです。

 どこの市町村も、同じような問題を抱えていると思います。球磨川の氾濫や大牟田の水害が記憶に新しい「令和2年7月豪雨」では各地で甚大な被害が発生し、多くの首長が住民の命に直結する災害への対策に腐心していると思います。

 住民の安全を守ることは、一義的に首長の責任です。皆さまの協力を得ながら、敷地の提供をしてもらったり、仮設住宅を設置することが可能となれば、飲食の確保など、その次に求められる安心・安全な生活の確保のために知恵を絞り、行動に移していかねばなりません。ただし、なかなかそこに到達できなくて苦労しております。

 今後は、「第六次筑紫野市総合計画」に則り、ご高齢の方々を地域で見守る地域包括ケアシステムの構築、そして、児童幼児教育の段階から、子どもたちが知育・徳育・体育を通じて健やかに体をつくり、学力をつけ、心を養えるような環境づくりも合わせて行ってまいります。高齢化社会において、筑紫野市が住みやすい、「住んで良かった」と思っていただけるように、誰もがこの地域で心豊かに元気で一生を過ごすことができるようなまちづくりを行ってまいります。


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