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2020年10月15日 14:26

内藤工務店の内藤建三社長を偲ぶ~企業価値40億円を積み上げた経営者(2)

 (株)内藤工務店の内藤建三社長が10月1日に逝去した。75歳だった。葬儀は3日、しめやかに執り行われた。故人・建三氏は1978年3月に初代・内藤正治社長の後を受け継ぎ、陣頭指揮を執ってきた。32歳から75歳まで最前線を走ってきたのである。
 建三氏の経営の特徴はトップセールス力であろう(詳細については後述する)。建三氏はその努力の結果、地元ゼネコン業界の中堅として内藤工務店の地位を確立させた。

 建三氏は一見すると、頑丈な体格を有する印象だが、近年は白血病に侵され、ハードな治療を余儀なくされていたという。今春からは、九州大学病院で入退院を繰り返していた。寿命が長い現代における75歳での逝去は「短い人生だ」と惜しまれる。本人もやり残していたことがまだたくさんあったはずである。

屈辱の歴史

 この時代は内藤工務店=内藤建三氏を含めた建設業界全体にとって、屈辱の日々だった。毎月のように建設業者が倒産し、その下請業者が連鎖倒産していった。

 昭和40年代の終わりごろ、内藤工務店の本社近くで新築の計画があった。同業のある担当者が営業をかけたところ、施主が申し訳なそうに「建三さんが毎朝、挨拶に来られます。彼の熱心さには頭がさがる。彼に頼むしかない。ごめんね!」と断られたそうだ。必死で努力していた故人のエピソードの1つである。

 建三氏は1978年に社長に就任した。これまで以上に必死のセールスをしたが、年商10億円を超えるのは容易ではなかった。

 2代目社長となるAが父の経営する会社に入社したのが87年である。「私の会社は当時、せいぜい15億円規模、内藤さんの会社が10億円規模。当時会員が約50社だった福岡県建設業(協)で当社が22位前後、内藤工務店さんが30位前後だったと記憶している」と証言してくれた。

 建三氏は経営者として研鑚を積んできたが、残念ながら報われるまでにはまだまだ時間を要したのである。A社長の場合も「2010年までは何で家業を継いだのかと自問自答していた。オヤジ!俺に事業を譲ってくれてサンキューと素直にいえるようになったのは2013年の決算を待ってであろう」と語る。

バブルの到来

内藤工務店本社

 (株)東建設(福岡市南区)が1987年に年商100億円を突破した。これは業界に革命が起きたことに匹敵するほどのトピックスだった。従来の福岡の建設業界においては松本組を頂点としたヒエラルギー(階層)が形成されていたため、「あいつを抜いてやる」という闘争心を燃やす者がいなかった。しかし、東建設が福岡で初めてゼネコンとして100億円企業になった。「東が100億円企業になるのなら俺たちにも可能だろう。挑戦してみよう」という競争原理が働くようになったのである。

 平成初頭のバブルが昭和末期に高まりを見せ始めていた矢先の時期でもあった。当時の受注キーワードは(1)不動産絡み、(2)マンション・集合住宅、となる。この2点が絡んでくると爆発的な売上の伸びを示す。とくに地上げ不動産の領域に絡んでくると建設業者は売上額が半端ではなくなる。(株)トミソー建設(福岡市中央区)は売上高が600億円を突破するまでに急成長した。東建設も400億円を超えるところまで迫った。最終的にこの2社の負債金額は前社が1,000億円に迫り、後社は700億円におよんだ。この2社の倒産により業界の常識が“木っ端みじん”に粉砕されたのである。

 内藤工務店よりもはるかに業歴が浅い前宮建設(福岡市博多区)、南建設(株)(福岡市東区)が不動産絡みで業績を伸ばしていた(ともに75年以降設立)。立ち話の途中で建三社長は「マエダさん(前宮建設社長)、ミナミさん(南建設社長)のような真似をしきらない。すごい勇気があるな」とため息をついていたことを思い出す。請負主義に徹している人たちから見れば、まさしく「冒険」である。建三氏同様、請負主義の方々にとって不動産絡みで業績をアップさせた新興勢力のゼネコンが倒産したことは、ある意味「期待通り」の結末であった。

 (2)のマンション請負で業績を伸ばした建設業者として(株)高木工務店(福岡市中央区)、(株)橋詰工務店(福岡市中央区)が挙げられる。橋詰社長は自らマンション室内の間仕切り工法を開発するなど研究熱心な経営者だったのが印象に残る。この2社はデべ倒産による焦げ付き、回収遅延などで倒産。請負主義に徹していたこの2社も倒産してしまった。今考えれば「デべからの回収条件では商売できない!これはビジネスではない」と喝破し、誰もが相手をしないだろう。だが当時は回収条件に目をつぶって受注するしか選択肢がなかったのである。平成バブル時代に建設業界がいたぶられていた実例といえる。

 バブル崩壊以降もマンション・戸建市場と建設投資は減らずに推移したため、建設業界が受注に困ることはなかった。建三氏は学んだ。「短期間で急成長する同業者はみんな“終わる”。やはり請負で成立させるビジネスを構築させるべきである。だが請負で努力しても利益を捻出させるのは至難の業である。どうすべきか?」と苦悶する日々が続いた。

(つづく)

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