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2020年10月20日 17:00

ヤクルト本社、仏ダノンとの資本関係解消 背景にはダノンを利用した経営陣と販社の対立(前)

 仏食品大手ダノンは10月6日、保有するヤクルト本社の全株式6.61%を売却すると発表した。売却額は600億円規模。両者は約20年にわたる資本関係を解消したことになるが、ヤクルトにとって中身をともなわない提携関係で時間を空費した20年だった。ヤクルトとダノンの提携を、社内抗争の歴史から見てみる。

デリバティブ運用で巨額損失が発生

 発端はヤクルト本社の財テクの失敗であった。
 1998年3月20日。ヤクルト本社は、デリバティブ(金融派生商品)の運用で、評価損1,057億円を出したと発表。運用責任者である副社長の熊谷直樹らは引責辞任した。

 熊谷は国税庁キャリアの肩書を買われ、ヤクルト本社の取締役に迎えられていた。同社は84年から特定金銭信託(特金)による資金運用を始め順調に利益を上げた。89年6月、熊谷は副社長に就任すると資金運用チームの最高責任者(管理本部長)を兼ねた。

 90年、バブル崩壊で東京市場の株価は暴落。管理本部長の熊谷は損失の拡大を防ぐために、91年10月からデリバティブにのめり込んでいった。92~96年、熊谷ら資金運用グループは、クレスベール証券東京支店が販売した私募債のプリンストン債を計390億円分購入した。購入に際し、熊谷はクレスベール東京支店の会長から5億3,000万円のリベートを受け取っていた。

 プリンストン債事件は、日本企業70社に1,200億円という莫大な損失を発生させた巨額金融詐欺事件であった。財テクの失敗により、多額の損失を行わざる得なくなった企業が、損失隠し(飛ばし)のスキームとして、プリンストン債に飛びついた。

 しかし、ヤクルト本社には、国税庁OBの熊谷を除いて金融取引に関する専門的な知識を持つ役員はいなかったため、社内でチェック機能が働かなかった。

堀社長は実質オーナーの松園尚巳の亡霊に怯えてダノンを招く

 ヤクルト本社は大激震に見舞われた。副社長の熊谷(脱税などで有罪)によるデリバティブ運用の巨額損失により、会長の桑原潤、社長の堀澄也ら役員が株主代表訴訟を起こされたほか、私募債プリンストン債を使った粉飾決算事件によって会社自体が起訴され、株式も管理銘柄入りした。

 社長の堀は絶体絶命のピンチに追いつめられた。開発・研究部門出身の堀は96年、初のヤクルト本社入社組として本社社長に就任したが、就任2年目に窮地に陥った。
 そんな堀が頼ったのが、かつて販売提携交渉をもちかけたことのあるダノンであった。“中興の祖”と呼ばれた松園尚巳が社長のころ、ダノンのヨーグルト「プチダノン」を日本国内で販売しようと提携の交渉をして断られており、堀はこの交渉に加わっていた。

 ダノンにとって、堀の依頼は渡りに船だった。ヤクルトは以前に提携を持ち掛けられたころとは異なり、腸内バランスを改善して免疫力を高める「プロバイオティクス」技術という成長分野の技術をもっているうえ、アジアや中南米で高い販売力をもち、なかでもブラジルではダノンのライバル「ネスレ」を上回る魅力的な存在となっていたからだ。

 堀はなぜ、ダノンのもとに駆け込んだのか。事実上のオーナーといえる松園尚巳の亡霊に怯えていたからだ。

(つづく)

【森村 和男】

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