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2020年10月31日 18:12

【「大阪市廃止」問題】維新の毎日新聞バッシングは無理筋な「言いがかり」 松井代表が財政局長に圧力か

突然始まった、「維新 vs 毎日新聞」のバトル

松井一郎維新代表と馬場伸幸幹事長(右)

 大阪都構想(大阪市廃止)の住民投票(11月1日投開票)が賛否拮抗のまま最終盤を迎えるなか、臨時国会の審議にも“飛び火”した。維新の馬場伸幸幹事長は10月29日の代表質問で、毎日新聞が「市4分割 コスト218億円増」と伝えた10月26日付の記事を「大誤報」と批判、「毎日新聞にはメディアの真の役割を自覚し、適切な対応をとるよう強く申し上げておく」と訴えたのだ。

 これに対して毎日新聞は翌30日朝刊で社長室広報担当が、「当該記事は大阪市への適切な取材に基づいたものです。代表質問後に市が一転して説明を変えたもの」「(馬場氏の大誤報発言は)極めて遺憾」と反論。訂正や謝罪はなかった。

 都構想論議の最終盤で維新と毎日新聞のバトルが急に始まったかたちだが、維新の無理筋な言いがかりであることは一目瞭然だ。

 馬場氏が問題視したのは、「大阪市を4つの自治体に分割した場合、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト『基準財政需要額』の合計が、現在よりも約218億円増えることが市財政局の試算で明らかになった」という部分だったが、代表質問の2日前(27日)の時点では、試算を出した市財政局は「(毎日新聞の記事は)取材内容をきちっと書いてある」と問題視していなかった。

 しかし2日後の29日になると、東山潔・財政局長が松井一郎市長から厳重注意を受けた後に一転して「捏造」と言い出し、「誤った考え方に基づき試算した数字を報道してもらったことで、報道各社や市民に誠に申し訳なく、深くおわび申し上げます」と会見で謝罪したのだ。

 維新代表でもある松井市長の圧力によって、財政局長が発言内容を変えたようにしか見えないのだ。しかし松井氏は、29日のまちかど説明会を終えた後の囲み取材で、発言内容が当初と変わったことについて聞くと、こう答えた。

 「今日、僕が(財政)局長から聞いたのは、『大阪市として根拠のない数字を出したことについては非常にまずかった。それは毎日新聞の記者の方からの熱心な取材で、圧力的なものを感じた』『(記者から)プレッシャーを感じて毎日新聞側の主旨に沿って出しました』と」

 この後に、記事を書いた毎日新聞の記者と松井氏の質疑応答が10分以上続いた。まず毎日の記者が「圧力をかけるようなことは取材のなかでできない」と反論すると、松井氏は「でも誘導はしただろう。こういう方法だったら出せると」と、今度は“誘導説”を持ち出した。

 これに対しても毎日の記者は「(市を4分割することで)スケールメリットがどう失われるのかを知りたいので、『こんなことはできますか』『教えてください』と言ったら(試算が)出てきた。これは誘導になりますか」と切り返した。そして「こうやって質問させていただいていますが、これは圧力と感じることはないと思うが」と続けると、松井氏はこう答えた。「俺はないよ、言い返すし。部下はわからない。気の弱い人もいるだろうし」。

試算文書を報道しなかった日経新聞は「だんまり」

 記者から圧力を受けて市財務局が“捏造試算文書”を出したと松井氏は主張したが、あまりに非現実的で前代未聞の話だ。しかも松井氏は勘違いをしている。じつは市財務局への取材をしていたのは毎日だけではなく合計3社で、記者から圧力や誘導を受けたと財政局長が29日の会見で話したのは日本経済新聞社だったのだ。日経は同じ試算結果を入手していたのになぜか報道せず、いち早く紙面化した毎日が日経の取材方法(圧力や誘導)の“濡れ衣”を着せられてしまったということだ。日経がだんまりを決め込んだ結果、毎日だけが余計な重荷まで背負わせされ、維新から「毎日の圧力による大誤報」という集中砲火を浴びることになったのだ。

 29日の会見で財政局長が名前をあげたのが「日経」であることを毎日の記者が指摘すると、松井氏は勘違いであることをこう認めた。

 「君のところ(毎日新聞)ばかりと思っていた。そこは僕の勘違いや」。続いて「(29日の市財政局長の)会見では(圧力や誘導を受けた記者は)他社の名前があがってました」と毎日の記者が念押しをすると、松井氏は「うん、ほなまあ、他社の名前や」と答え、これを受けて毎日の記者が「(松井)市長が『毎日新聞が誘導』と言ってしまうと、本当にそういうふうに思う方もいる」と抗議。財政局長から再度の聞き取りと発言内容の訂正を求めたのはこのためだ。

 「言論弾圧」のような事態に陥っているように見える。毎日新聞の圧力や誘導で試算が出たわけではないのに、維新は「毎日の圧力による誤報」と批判、事実無根のレッテル貼りで記事の信憑性を失墜させようとしているのだ。その一方で、試算を入手しながら報道しない日経に対しては、維新は集中砲火を浴びせることをしていない。毎日への恣意的な狙い撃ちと言われても仕方がないのだ。

 「維新の代表でもある松井市長が財政局長に圧力をかけて、発言内容を変えさせた可能性の方が高いだろう」(維新ウォッチャー)という見方もあるが、“維新 対 毎日”のバトルが住民投票の結果にどんな影響を与えるのかも注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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