2024年04月28日( 日 )

政府主導で大韓航空がアシアナ買収へ、大型再編の先駆けとなれるのか

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 大韓航空は16日、韓国航空業界2位のアシアナ航空の買収を理事会で決議したと発表した。この買収が実現すると、航空会社の国際的な指数(旅客キロ)が世界15位となり、日本首位のANAホールディングスを上回る規模となる。

 大韓航空は1969年に韓進グループが国営「大韓航空公社」の民営化を引き受けるかたちで発足。2019年は約12兆ウォン(日本円で約1兆1,000億円)の売上高で韓国航空業界のトップに。164機の航空機を保有しており、世界43カ国、121都市に運航している(20年10月時点)。

 アシアナ航空は1988年に第2の航空会社として創業。2019年の売上高は約6兆9,000億ウォン(日本円で約6,500億円)で大韓航空につぐ2位。79機の航空機を保有しており、世界21カ国、64都市に運航している。

 アシアナ航空は経営難のため19年に売却を決定し、韓国の大手建設会社などが買い取りに着手していたものの、新型コロナウイルスの影響で負債が急増し、売却の話が破綻していた。大韓航空が買収するかたちとなったが、政府系の産業銀行が8,000億ウォン(約754億円)を第三者割当増資で引き受けていることもあり、今後政府主導で生き残りを目指すようだ。大韓航空はアシアナ航空の約11兆5,400億ウォン(約1兆887億円)の負債を抱えこむことになる。

 両社の国内線のシェア率を合わせると約42%、系列の格安航空会社(LLC)を含めると62%になり、寡占議論を呼び起こしかねず、公正取引委員会が買収承認をどう審査するか注目される。なお、韓国ではアジア通貨危機の際に自動車産業界トップの現代自動車による2位の起亜自動車の買収を特例として承認したことがある。

 新型コロナウイルスにより、タイ国際航空が経営破綻、アリタリア航空(イタリア)やルフトハンザグループ(ドイツ)が政府に支援を求なるなど、航空業界が瀬戸際に立たされている。今回の買収案件が韓国のみならず、各国の航空業界の再編をうながすきっかけになる可能性がある。

【河原 多聞】

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