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2020年11月20日 17:06

内定取消から浮かび上がる、就職・採用業界の問題

 コロナ禍が長引くにつれ、多くの企業が不況に立たされている昨今、その影響は就職・採用活動において「内定取消問題」として如実に現れてきた。この問題が議論される際には、学生側からみた就職活動、企業からみた採用活動のいずれかの目線に立つことが多い。
 この問題について、既存の就職・採用システムに疑問を抱き、まったく新しいマッチング事業「Pando」を展開するクインテット(株)代表取締役社長・松下耕三氏に、両者の立場を踏まえて話を聞いた。

 ――最近、内定取消問題が取り上げられていますが、なぜここまでの大規模な問題になったのでしょうか。

 松下 さまざまな要因があると考えていますが、採用・就職活動において「内定」の認識をめぐり企業と学生で大きく異なっていたことが要因の1つではないでしょうか。

 企業の経営者という目線でいえば、業績が著しく悪化した場合に、採用後の教育にかけるコストなどを考慮すると、そのタイミングで新卒採用を行うのは確かにリスクが大きいことは理解できます。

 また、コロナ前は空前の売り手市場とも言われていたこともあり、「内定を出した人数」と「実際の採用者数」には大きな違いがあり、10人の学生に内定を出したが、採用に至ったのは1人だったという経営者もいました。加えて、後継者・人材不足の問題もありましたから、今年も実際に採用したい人数を見越して、想定する人数より多く内定を出している企業も少なくなかったと考えています。

 今回のコロナ禍は、突発的に起き誰も予想できなかった事態です。そのために企業の経済状況が大きく変わり、内定した学生を他の企業に押し付け合う事態になってしまいました。一方で、突然の内定取消という事態に直面し学生は「理不尽」と感じたでしょう。しかし、今回の事態について、企業側の対応を批判するだけでは根本的な解決にはならないと考えています。

 ――企業と学生で内定の認識に違いがあったということですね。なぜ、このような事態になったのでしょうか。

 松下 それは人材紹介会社、教育機関などを含めた「社会」が、学生に対して「たくさんの内定=選択の自由=幸福な社会人」との認識を与えていたことが要因の1つではないかと考えています。選択の自由が広がることは、可能性が広がるという点で大切ですが、今のシステムでいえば、人材紹介会社の利に寄りすぎている状態だと感じます。

 学生には多くの企業の面接を受けてもらい、収益源である企業に対しては人材不足、売り手市場の背景を基により多くの学生に内定を出してもらう。人材紹介企業は、採用斡旋の実績として顧客企業にイベントのブース来訪者数、内定者数をアピールします。企業は人材不足などの観点から、実際に必要な人数分の採用につながらなくても、コストをかけてでも採用活動を継続していかなければなりません。

 一方、学生にとって就職活動をしたすべての企業は、本当に自らが行きたかった企業だったのかという疑問があります。就職活動は、人生において重要なイベントであり、滑り止めという考え方をもつことは間違っていないでしょう。しかし、そこにかこつけて、内定の数を多く取ることがステータスになり、ゴールになっていたのではないでしょうか。

 つまり、「内定」が企業にとっては保険であり、学生にとってはステータスに近いものになっていたのではないかと考えています。新卒採用は、学生にとっても企業にとっても必要不可欠であり、人材紹介会社にとってはビジネスです。教育機関にとっても、就職率は大切なものです。しかし、学生の人生を考えたとき、そのような表層的な就職活動をさせてしまっている社会に問題を感じざるを得ません。今回のコロナ禍によって、その実態が現れたともいえるのではないでしょうか。

 ――最近では、企業が内定取消を隠すために、内定辞退を勧めたり、事前研修としてプレッシャーをかけて内定を学生側に取消してもらうように仕向けたりするサイレント内定取消も問題視されています。

 松下 そうですね。これはたしかに企業倫理の問題ですが、やはり人材ビジネスの弊害として捉えなければ解決できない問題であると考えています。就職・採用活動における真のマッチングには、企業の掲げるビジョン、事業の意義への深い共感、共鳴が欠かせません。

 学生は内定をもらうためだけにかたちだけの志望動機を用意するのではなく、自らの人生観(歓)を改めて考え、志望する企業で何を成したいのか、その仕事にどんな意義を感じられるのかをみつめるべきです。企業は履歴書に載っている能力やスキル、数回の面接だけで学生を判断するのではなく、その人の生き方や考え方をみて、これからの自社の未来を担うための“人間”であるのか判断すべきです。当社の運営するPandoは、学生と企業の真のマッチングを実現させるためにするための取り組みです。

 今回のコロナ禍で浮き彫りになった問題を議論する際、就職者と採用者のいずれに問題があるのかという議題になりがちですが、もう一歩踏み込んで、人材紹介業、教育機関などによってつくられた社会の在り方に目を向けなければならないのです。

【麓 由哉】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:松下 耕三
所在地:東京都新宿区市谷本村町2-10
設 立:2003年12月
資本金:1,620万円
URL: http://pando.life/qwintet


<プロフィール>
松下 耕三
(まつした・こうぞう)
1977年、福岡県生まれ。東京大学理科二類(農学部)に進学、大学卒業後の2003年、(有)TRCを設立。05年(株)クインテットを設立し、代表取締役となる。18年から、新たなビジネスプラットフォーム事業「Pando」を推進している。

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