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2020年11月25日 07:00

コロナ禍での子ども食堂、フードロス、そして直筆の手紙(後)

大さんのシニアリポート第94回
 コロナ禍で日常生活そのものに大きな変化が生じた。運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)での子ども食堂も例外ではない。まず、「三密」は避けようがない。子どもの仕事は大きな声で話し、激しく動き回ることだ。
 当然、手づくりの食事提供は不可能となった。食堂を閉鎖することは簡単だが、コロナ禍が長引くと食事づくりのボランティアの士気にも影響する。一度閉めれば、再開は容易なことではない。とはいえ、閉鎖を回避できたのはレトルト食品などの提供のおかげであったが…。

食品ロス~消費期限の迫る商品を扱うスーパーが増加

 食品ロスは深刻である。環境省などの推計によると、「国内で発生する食品ロスは年612万トン。半分以上の328万トンが、外食産業での食べ残しなどを含む食品関連事業者に由来する。食品業界では、賞味期限の3分の1が過ぎる前に小売店に納品できなければ、店頭にも並ばず返品、廃棄される商習慣もある」(朝日新聞 10月29日付)。

「ぐるり」の入り口で袋詰めされた
食料品を配るボランティアさん

 多くの加工食品に、「賞味期限」が導入されたのは、1995年だ。それまでは一部の加工食品を除き「製造年月日」で示されていた。「期限表示導入の背景には国内外からの要望があった。1つは期限表示が一般的な欧米から迫られたこと。食品輸入の拡大をにらんだ欧米諸国から『製造年月日の表示は輸送に時間のかかる外国食品を不利にしている』という批判があったという。1日でも新しい製造年月日をつけようと深夜・早朝の労働を強いられた生産現場の負担を軽減する狙いもあった。保存技術が発展し、消費者から日持ちの情報を求める声が挙がったことも導入を後押しした」(同)という理由もあった。

 ここに目をつけたのが、東京、神奈川、埼玉の3都道府県に出店するスーパー「OROフードレス救」だ。「賞味期限・消費期限が近づいた商品を『安くなっていれば買う』と答えた人は58.4%にのぼる」(同)という。2019年10月に、「食品ロス削減推進法」が施行されたことも出店の動機となり、こうした消費期限の迫る商品を扱うスーパーが増えた。

 賞味期限が近いことを明示することで、消費者に納得して購入してもらい、当然、思い切ったプライス・ダウンをする。たとえば定価2,856円のキャンディーが、なんと税込み240円(ルピシア ボンマルシェ代官山店)で販売されているなど、目を疑いたくなるような商品もある。仕入れ値を無視してでも買ってもらいたい製造業者はいる。

 消費者のなかには「賞味期限に神経質になりすぎ。昔は賞味期限切れを決めるのは自分の鼻と舌」という人も多い。新型コロナ禍の影響で商品が大幅に余り、これが思わぬ商機を生むことにつながる。それでも余る商品が、社協などの窓口を通して子ども食堂に集まることになった。

子どもたちの気持ちに添う「手紙作戦」

 一方で、こんな朗報もあった。「ぐるり」には、大学生が「学生ボランティア」として参加しており、子どもの宿題や勉強の相手をしたり、一緒に遊んだりするのが主な仕事である。子どもたちもそれを楽しみにしているが、当然のように、学生も子どもたちに会うことができない。コロナ禍で子どもの利用者が皆無になったのだ。

 大学生は授業がリモートになり、アパートで巣ごもりするしかない。Y氏という女子大生は新潟の実家に帰省した。あるとき、Y氏からメールが届き、「何とかお手伝いをしたいのですが、直接伺うことができません。子どもたちのために、何かいい方法はありませんか」という。子どもと直接接触しないで、子どもたちの気持ちに添うことができる方法として、筆者は「手紙作戦」を提案した。子どもたち1人ひとりに心のこもった手紙を書く。こうすれば接触する危険性を回避できるし、Y氏の気持ちも伝えることができる。

Yさんの書いた子どもたちへの手紙

 Y氏は筆者の提案を受け入れ、手紙を書き、その手紙を筆者のところにまとめて送り、それを筆者が直接子どもたちに手渡した。思いがけず数人の子どもたちからお礼の手紙が届けられ、それをY氏に送ると、間もなくY氏からメールが届いた。

 Y氏は「うれしくて、何度も何度も読み返しました。それで気づいたんです。手書きの手紙って、なんと暖かみのあるものなんでしょう。普段、友だちへの連絡はメールで済ませていました。そのことになんの疑問も感じていませんでした。しかし、子どもたちからの手紙で目が覚めました。手紙を書くって凄いことなんだって」という。

 朝日新聞(10月18日付)に、「80歳で始めた文通 小学生とも」という見出しで、新聞紙上で知り合った小学生などに直筆の手紙を書くことを思いつき、そのことに至上の喜びを見出した80歳の女性の話が掲載された。彼女のようにコロナ禍による巣ごもりを逆手にとり、人生を豊かに過ごす人もいる。

(了)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』(同)など。

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