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2020年11月25日 13:52

アメリカ大統領選挙後の世界秩序を模索する!(1)

 「国際アジア共同体学会(ISAC)年次大会」が11月7日(土)、「ポスト・コロナを生きる日本の道」をメインテーマとして、東京・日比谷の現地会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。
同大会の後援者は、朝日新聞東京本社、(公社)日本中国友好協会、共催者は(一社)アジア連合大学院機構、日本ビジネスインテリジェンス協会、日本華人教授会議。

コロナ後には、新しい生活様式、社会秩序、世界秩序が出現

 司会者の中川十郎(国際アジア共同体学会・学術顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長)の挨拶に続き、国際アジア共同体学会の新共同理事長となった木村朗氏(鹿児島大学名誉教授)は次のように開会挨拶を行った。

木村 朗 ISAC新共同理事長

 コロナ危機が急浮上して世界的に大きな混乱を起こし、私たちの生活様式も大きく変わりつつあるなかで、新しい社会秩序、世界秩序の方向性も出つつあります。アメリカ大統領選の結果を受けて新しい世界秩序の方向性が定まっていくでしょうが、私はコロナ危機後の世界の特徴は3つあると考えています。

 1つ目は、「グローバリゼーションの後退」と「ナショナリズムの台頭」です。2つ目は、「国家の宣言集中」と「監視社会化」です。そして3つ目は、国内および国際レベルでの「貧富の格差の増大」と「社会の二極化(分断化)」です。 アメリカ同時多発テロ(9.11事件)以降、グローバリゼーションが加速され、定着してきました。ポスト冷戦では、米国の単独1極支配となりましたが、その後、米中2極支配、そして無極支配、多極支配と変わりつつあるなかで、「米中対立の新冷戦」も語られています。東アジアにおいては、米中対立によって、台湾問題、南シナ海問題など、軍事的な緊張も起こっています。

 国際アジア共同体学会が望む方向とは逆の動きが起こっていますが、そうしたなかであるからこそ、学会の存在意義も高まってくるのではないかと考えています。特別ゲストとして奈良県知事、静岡県知事を迎えています。

 当日のプログラムは、以下の4部構成であった。

<第1部>
「自由論題報告部会」
<第2部>
「記念講演・基調挨拶」
<第3部>
「グリーン・ニューディールの制度設計と日本の道」
<第4部>
「アメリカ大統領選挙後の米中新冷戦と米日関係」

第1部「自由論題報告部会」

 東江日出郎氏(東北公益文科大学准教授)「ドゥテルテ政権の比国外交」、魏向虹氏(国際アジア連合大学院機構主任研究員)「デジタル人民元と米国の金融制裁」、井上良一氏(自治創造コンソーシアム副理事長)「「ソウル宣言の会」を回顧して」の3名が報告した。

 東江日出郎氏は2016年にフィリピン共和国第16代大統領に就任したロドリゴ・ドゥテルテ氏の外交政策について報告を行った。東江氏はドゥテルテ外交が前任のベニグノ・アキノ3世大統領の外交と比較して「どのように変わったのか」をアメリカ、中国への対応を中心に、そのことが日本、東アジア共同体にどのような影響をおよぼすかについて、以下のように語った。

ベニグノ・アキノ3世は親米・中国封じ込め

 ベニグノ・アキノ3世政権は、対中政策においてまるで「米国の属国」のような姿勢を取り、アメリカとの軍事関係を強化して中国の封じ込めに加わることにより、フィリピンの安全を担保していました。アメリカとフィリピンの間には、1998年の「訪問軍地位協定(VFA)」(※1)、さらに2014年には「防衛協力強化協定」(※2)も結ばれ、「中国を睨む」という姿勢を取り続けてきました。

ドゥテルテは米国を批判、中国との関係構築へ

 16年に就任したドゥテルテ大統領はその体制を変更し、当時の米国オバマ大統領を批判、「訪問軍地位協定(VFA)」や「防衛協力強化協定」の見直しを示唆し、国際仲裁裁判所で違法であると裁定された中国の南シナ海問題に対する対応を棚上げしました。

 ドゥテルテ大統領は、中国との関係を築くために、アセアンの首脳会議においても、南シナ海に進出する中国批判を抑えています。一方、アメリカとの関係では、ミンダナオ島で中国を監視する米軍の撤退を示唆し、比米合同軍事演習(バリカタン)は17年が最後となることを示唆しました。

対日政策は前政権を踏襲

 ドゥテルテ政策の1丁目1番地は「麻薬取締」です。中国による「フィリピン国内における薬物取締センターを建設」「最南端のミンダナオ島の鉄道建設への融資」「フィリピン国軍への援助」などを歓迎し、ロシアとの関係も改善しました。16年11月のAPECでロシアのプーチン大統領と会談、17年には、軍事供与を受けています。

 ただし、日本との関係は、ベニグノ・アキノ3世政権での関係を踏襲しています。日本は、フィリピン沿岸警備隊の能力強化を目的に訓練機、多目的船などの援助を行いました。過去の経緯からいえば、フィリピン国軍はアメリカで訓練を受けており、装備も米国製であり親米派が多いため、批判がないわけではありませんが、ドゥテルテ氏の政策は支持されています。

外交・安全保障は「自立外交」「均等・均衡外交」

 米国でトランプ大統領が17年に誕生し、比米関係は改善、決定的な対立はなくなり、紆余曲折はありながら、現在に至っています。ドゥテルテの外交・安全保障政策は「自立外交(Independent Foreign Policy)」と言われており、国軍近代化努力を継続し、日本との安全保障協力は促進するものの、「均等・均衡外交」です。

 とりわけ、米中双方に部分的には従属しつつ、一定の距離を保ち、ドォテルテ氏は安全保障協力の輪をロシアやインドにさらに拡大して、より自立性を高めようとしています。自立外交がある程度、フィリピンの外交に自立性を与え、選択肢を増やし、米中日露などの大国からさまざまな支援を引き出していることはたしかです。

 米中双方と等距離外交を行う「均等・均衡外交」で大国を互いに牽制させて、軍事、経済支援を勝ち取る手法で、フィリピンが何も対価を払っていないわけではありません。しかし、その犠牲を払ってでも、どちらか一方の属国になりたくないというのが、小国を率いるドゥテルテ氏の外交なのかもしれません。

(つづく)

【金木 亮憲】

※1:米兵のフィリピン国内での法的地位について定め、合同軍事演習などの活動を可能にした。 ^
※2:フィリピン軍基地内に米軍駐留を認める。 ^

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