雪解けの磐梯山(前)─異常に早い雪解け─

福島自然環境研究室 千葉茂樹

 2026年4月26日、磐梯連峰の頂部に行ってきました。全国的には「会津磐梯山」の名が通っています。その様子を紹介します。

異常に早い雪解け

 磐梯連峰は、磐梯山(1,816m)・櫛ヶ峰(1,636m)・赤埴山(1,430m)の3峰から構成されます(画像01)。この3つの峰の間に沼ノ平と呼ばれる低地があります。

画像01

 また、赤埴山の南斜面には「林道赤埴線(通称:赤埴林道)」があり、標高1,300m付近まで四駆の乗用車で登れます。当然、冬は雪で閉ざされます。

 これまで、春の再開通は雪が消える5月中~下旬でした。画像02は、昨2025年5月13日の様子で、赤埴林道の標高約1,200m付近です。この日でも例年より雪解けは早いです。ところが、今年は雪解けが異常に早く、4月18日には赤埴林道のこの付近(画像02の付近)まで車で登れました。

画像02

 4月26日に私は赤埴林道の1,200m付近まで車で登り、そこから歩いて磐梯山の頂部付近を歩いてきました。なお、私が車を止めた付近には、山小屋関係者の車が2台止まっていました。山小屋の再開の準備のためです。

要注意、雪の崩落

 4月26日に赤埴林道の1,200m付近に車を止めて、ここから雪の残る赤埴林道を歩きました(画像03)。

画像03

 ただし、このような雪解け道を歩く場合、要注意です。画像03のように林道の法面からの雪の崩落があります。画像の雪は真っ白で、「柔らかい雪」を想像するかもしれません。しかし、これは「板状の氷」です。崩落は、画像の赤矢印あるいはその上からで、スピードと雪(氷)自体の重さがあるので、大変危険です。崩落に巻き込まれると大怪我をします。頭に当たれば死の危険があります。なお、画像03のスケールは赤白各20cmです。

雪の残る磐梯連峰

 画像04は、登山道の様子です。登山道は雪に埋もれています。中央奥には磐梯山が見えます。ただし、「例年ならば5月下旬」の状態です。降雪量について書きますと、昨年2025年1月から2月は、例年にない大雪で、猪苗代町の豪雪の様子は全国放送もされました。これに対し、今年26年1月から2月は降雪が少なく、このため雪が異常に早く解けているものと推察されます。

画像04

 画像05は、沼ノ平の残雪です。画像の左上には、櫛ヶ峰が見えます。木々はシラカバです。手前の雪の下は竹藪です。この付近を夏に歩くと、竹藪のなかの登山道となり、画像右側の池はよく見えません。この池に名はなく、常時水をたたえています。梅雨時には、モリアオガエルの卵嚢が見られます。卵嚢は、ソフトボールくらいの大きさで、マシュマロのような感じです。 

画像05

 画像06は、沼ノ平です。中央奥に磐梯山が写っています。沼ノ平はすり鉢状の地形で基本的には湿原です。中央の山吹色の枯草の部分は湿地帯で、歩くのは容易ではありません。私が地質調査に入った1979年頃は、この付近に常に水があり浅い沼のようでした。最近は乾燥化して沼ではなくなりました。画像中央の磐梯山と枯草原との境界付近は、シラカバの林です。以前は、シシウドの群落でしたが、90年以降は樹木が成長し、シラカバの林になりました。

画像06

 また、6月頃には沼ノ平を中心に磐梯連峰の固有植物「バンダイクワガタ」が花を咲かせます(画像07)。以前は個体数が少なかったのですが、近年とくに登山道周辺で個体数が増加しています。

画像07

 画像08は、赤埴山北側の斜面から北東方向を見たものです。低木が残雪でおおわれて眺望が良くなっています。この付近は夏は低木の藪で、この眺望は望めません。残雪期限定の眺望です。木はシラカバです。画像では傾斜がきつくは見えませんが、手前で約30度、奥では70度くらいの急傾斜です。遠方に、安達太良連峰と吾妻連峰が見えます。

画像08

 画像09は、画像08とほぼ同じ付近から北方を見たものです。左に磐梯山、中央に沼ノ平、右下に鏡沼が見られます。磐梯山の頂部(画像では黒い塊状のところ)は、マグマが噴火の際に通って固まった岩石群で、「火道(かどう)」と呼ばれます。その東側の沼ノ平は、水蒸気爆発で山体が吹き飛んだ所で東に開いたすり鉢状です。

画像09

 画像10は、画像09の右下の鏡沼付近です。幹の白い樹木は、シラカバです。なお、鏡沼はモリアオガエルの繁殖地でしたが、ある時サンショウウオが大量発生しました。サンショウオは、オタマジャクシを食べます。ところがモリアオガエルもしたたかで、次の年から隣の池に移動して産卵するようになりました。移動したのは画像05の池です。

画像10

 画像11は、登山道のシラカバです。白い樹皮と赤っぽい芽が印象的です。画像10の矢印の場所です。この付近は、私が地質調査を始めた79年頃は人の背丈より低い木しかなく、ほとんどがネマガリ竹の藪でした。ネマガリ竹の新芽は「ジダケ」として販売されます。春先、ジダケ採りの人とクマが遭遇し、問題となります。話は戻って、90年頃から降雪量が減り、樹木がどんどん大きくなって、今では高さ10mくらいになっています。

画像11

 画像12は、赤埴山の南西稜線上の風景です。「天の鏡」と呼ばれる猪苗代湖が眼下に望めます。目を足元に向ければ、地表も石積みも赤茶色です。これは酸化鉄(赤さび)の色です。赤埴山ができたとき、火口からマグマがちぎれて飛びました。噴石や火山弾です。マグマのなかには鉄が多く含まれ、高温で酸化すると黒い色(黒さび)、低温で酸化すると赤い色(赤さび)になります。と言っても数百度はあります。赤埴山の噴出物を観察しますと、黒い噴出物もありますが、赤い噴出物が圧倒的に多いです。「赤埴山」の名前の由来も、この赤い色のためだと思います。山麓の猪苗代から見ても、山頂は赤く見えます。

画像12

 画像13は、画像12より100mほど下ったところです。目を引くのが、枝が片方にしか伸びていない松の木です。この付近は冬の季節風が大変強く、木の枝も風下にしか伸びられません。稜線上も石だらけで、強風のため植物が育ちにくいためと考えられます。なお、現在、展望台と大型リフトの建設「会津テラス計画」が進行中です。この場所には、3階建て横幅250mの「会津スカイテラス(展望台)」が建設予定です。また、この会津テラスは「通年営業」とのことです。このように自然環境の厳しいところに展望台をつくり、また強風のなかでリフトの運行ができるのか、私には甚だ(はなはだ)疑問です。

画像13

(つづく)


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

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