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2020年11月30日 16:20

激化するコロナ用ワクチンの開発レース 隠蔽された副作用のリスク(前) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸

 世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が5,500万人を突破し、死者も130万人を超えたため、治療薬や予防用ワクチンへの期待は高まる一方だ。ワクチン開発で先頭を切ったのはロシアだ。プーチン大統領が自らの娘に投与して、その安全性や効果のほどを大々的に宣伝している「スプートニクV」と命名されたワクチンが注目を集めている。

「コロナ感染とワクチン開発問題」が米大統領選の争点に

 世界的にワクチンの需要は250億ドルから1,000億ドルに達するとの予測が出ており、各国の研究機関や製薬メーカーは早期開発に向けて必死の取り組みを続けている。ロシアは「世界市場の3分の1を押さえよう」と意気込み、旧ソ連邦のウズベキスタン、カザフスタンから、友好国であるインド、ブラジル、メキシコ、ネパール、エジプトなどへの売り込み攻勢に余念がない。

 もちろん、中国やアメリカも負けてはいない。世界保健機関(WHO)が期待する開発中のワクチン10種のうち、中国製もアメリカ製も各々4種を占め、残りはロシアとイギリスである。残念ながら、日本メーカーは有望株には入っていない。武漢が発生源と目されているため、中国は国際的な非難を解消するためにも、ロックダウンを含む自国内での感染対策に強権的な取り組みを見せ、「感染の封じ込めに成功した」と内外に向けての情報発信に力を入れると同時に、独自のワクチン開発には国家を挙げて注力している。

 こうした状況を受け、世界最悪の感染者1,150万人と死者25万人を出しているアメリカでは先の大統領選挙でも「コロナ感染とワクチン開発問題」が大きな争点となった。トランプ大統領は当初、「コロナは風邪のようなもので、時間が経てば自然に消失する。マスクなどは弱虫が着けるもので、自分には不要だ」と非科学的な言動に終始していた。

 しかし、感染状況が悪化の一途をたどると、さすがに「これではまずい」と判断した模様で、「予防用のワクチンが間もなく完成する。11月の頭には用意できるはずだ」と方針を転換。とはいえ、11月3日の大統領選挙の投票日には間に合わなかった。

 バイデン候補からは「トランプ大統領が初期対応を誤ったため、感染や死者が急増した」と批判され、マスメディアもトランプ大統領に厳しい姿勢を向けたため、仕方なく「製薬メーカーに開発を急がせている。開発費も援助する用意がある」と防戦に追い込まれることになった。そこで生み出されたのが「オペレーション・ワープ・スピード」と銘打った、製薬メーカーへの支援策であった。

 このコロナ問題が急浮上しなければ、「トランプ大統領の再選は固い」と思われていただけに、新型コロナウイルスはアメリカの政治や社会を大きく変えることになった。トランプ大統領は「武漢ウイルス」とか「中国ウイルス」と言い募り、いかにも中国がアメリカの混乱をもたらすためにウイルスをアメリカに持ち込んだと批判の矛先を転換させようと試みたが、選挙結果を見ると、そうした言動にはあまり効果がなかったと言わざるを得ない。

 というのも、感染症を装った生物化学兵器の開発はアメリカも中国も長年にわたって密かに取り組んでおり、メリーランド州にある軍事研究所からウイルスが流出した事故を受け、アメリカは中国の武漢にある細菌研究所に人と金を出して、共同研究を実施してきたことが明らかになっているからだ。中国を非難すれば、その刃は自らに降りかかることになる。

 いずれにせよ、11月に入ってからは大手製薬メーカーのファイザーやモデルナによる「ワクチン開発、成功間近」といったニュースが相次いでいる。年明けにはジョンソン・エンド・ジョンソンも新型ワクチンを市場に投入するという。

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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