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2020年12月01日 16:26

激化するコロナ用ワクチンの開発レース 隠蔽された副作用のリスク(中) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸

 世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が5,500万人を突破し、死者も130万人を超えたため、治療薬や予防用ワクチンへの期待は高まる一方だ。ワクチン開発で先頭を切ったのはロシアだ。プーチン大統領が自らの娘に投与して、その安全性や効果のほどを大々的に宣伝している「スプートニクV」と命名されたワクチンが注目を集めている。

必要な検査を省略

 こうした発表がなされるたびに、製薬会社の株価は急騰し、株式市場全体の景気も押し上げる効果があるようだ。しかし、こうした期待先行の動きには注意が必要だろう。

 なぜなら、これまで世界を襲ってきた感染症に対するワクチン開発には安全性や効果を確認するためには、少なくとも4、5年の時間がかかってきたからだ。まずは動物実験から始め、徐々に人体への応用が試みられるのが通常のパターンであった。

 ところが、現在進行中のワクチン開発は今年2月ごろから実験が始まったばかりである。数万人規模での治験が実施されているとはいうものの、急を要するということで、動物実験は皆無という。

 しかも、ファイザーもモデルナも「mRNA」と呼ばれるワクチンを使用しており、この遺伝子を組み替えるメッセンジャーRNAはこれまで人体には使われたことのない技術である。安全性の確認には慎重な作業が求められねばならない。この点が「スピード重視」のあまり、軽視されているのではないかが大いに気になる。しかも、安定性が悪いため、冷凍保存が欠かせない。ファイザーの場合はマイナス70℃、モデルナはマイナス20℃で半年が限界。当然、コストも高くなる。

 何しろ、感染者が急増しているので、とにかく早急にワクチンが必要というわけだ。かつて人類が経験したことのない「新型コロナウイルス」と言われながら、そのワクチン開発には「人命軽視」になりかねない拙速な対応が見られるのは問題であろう。

 とくに、ファイザーといえば、「バイアグラ」が有名な製品であるが、今回のワクチン開発に提携企業として主に取り組んでいるのはビオンテック(BioNTech)という2008年に創業されたドイツ企業に他ならない。実は、mRNAワクチンを開発したのもビオンテックである。

 そして、同社は19年9月にビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と契約を交わしている。中国の武漢で新型コロナウイルスが発生したとするニュースが伝わる直前のことで、この時期にビオンテックは株式上場をはたしており、ゲイツ財団は「ビオンテックのmRNAワクチンはガンやHIV、また結核の治療薬として大いに期待される」と評価するコメントを自前のHPに掲載していた。ところが、このコメントは現在、削除されている。不可解なことである。

 さらには、ビオンテックは中国の大手製薬メーカーである上海の復星(Fosun)医薬との間で新型コロナウイルスのワクチン製造に関して契約を交わしているのである。ということは、ビオンテックは新型コロナウイルスのワクチン製造に関してはアメリカ、中国、そしてEUの製薬メーカーとも手を結んでいるわけだ。

 こうした根回しの良さも影響しているようだが、各国の保険衛生当局は前例のないスピードでワクチンの承認を進める手続きに入っている模様である。通常であれば、シロイタチやマウスなどによる動物実験を経て、安全性の確認が行われるのだが、今回のmRNAについてはすべて特例的に免除されている。動物実験を素通りし、本年7月下旬ないし8月上旬から人体実験という治験が始まった。

 その結果、わずか数カ月で「効果が立証された」という報告がなされているわけだ。通例、新たなワクチンの安全性や効果が確認されるには数年の時間がかかるものである。世界的なパンデミックという恐怖におののく心理状態のため、副作用の予防のために必要な検査が省略されてしまったと言わざるを得ない。はたして、これで安全性や効果が担保されることになるのだろうか。02年に発生したSARS-1の場合には、人を対象にした治験を開始するまでには20カ月の準備期間が必要だった。

 実は、ワクチン製造会社は法的に免責特権を有している。万が一、こうした新たなワクチンが原因で死亡したり、不具者になったりした場合でもメーカーは訴追されない決まりになっているわけで、だからこそ、徹底的な安全性の確保が最優先されるべきだろう。これまで承認されたことのない遺伝子改変のmRNAワクチンであれば、なおさらのはずだ。

 わずか3カ月ほどの治験で本当に安全性が確保されたといえるのだろうか。いわゆる「ピアレビュー」といわれる同業他社、あるいは外部の専門家による追加の確認作業も行われないままである。医学の専門誌への情報提供も行われていない。

 さらに驚くべきは、ファイザーのアルバート・ブーラ社長の行動である。ワクチン開発の成功を期待させる記者発表の影響で、同社の株価が急騰するや、自らが所有する自社株の62%を即座に売却し、100億円近い利益を懐にしているからだ。通常であれば、「インサイダー取引」に当たる行為であるが、8月の段階で「売却予定」を証券取引所に申請することで、違法行為を免れる手配を完了させていたという。あまりの手回しの良さに同社内からも疑問の声が出されているほどである。

 注目すべきは、ファイザーの場合も、モデルナの場合も同じで、治験は第3段階の途中で、いまだ最終的な結果は得られていないのである。当然のことながら、いずれの場合も、第三者機関による安全性や予防効果の検証も行われていない。

 しかも、治験段階で死亡者や発熱、関節痛、不眠症、情緒不安定など、いくつもの副作用を訴える治験者が発生しているが、「すべて問題ない範囲」と切り捨て、記者発表用の資料にはマイナス情報は一切言及がないのである。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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