2024年04月16日( 火 )

激化するコロナ用ワクチンの開発レース 隠蔽された副作用のリスク(後)

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国際政治経済学者 浜田 和幸

 世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が5,500万人を突破し、死者も130万人を超えたため、治療薬や予防用ワクチンへの期待は高まる一方だ。ワクチン開発で先頭を切ったのはロシアだ。プーチン大統領が自らの娘に投与して、その安全性や効果のほどを大々的に宣伝している「スプートニクV」と命名されたワクチンが注目を集めている。

ウイルスで死ぬよりワクチンで死ぬケースが急増?

 そのうえ、モデルナの場合には3万人の治験者のうち、コロナに感染した参加者は95人で、そのうち、同社のワクチンを接種していたのはわずか5人であった。この5人の結果を基に予防成功率94.5%という発表をしているのである。

 ファイザーの場合もほぼ同じで、170人の感染者のうち、同社のワクチンを接種していたのは8人に過ぎず、それでも「成功率は90%超」という強気の説明であった。アメリカでは12月には緊急承認が得られる見込みという。そうなれば、ファイザーだけで年内に5,000万回分のワクチンが製造され、2,500万人に接種可能となる。そして2021年には13億回分のワクチンが出回る見込みである。

 製薬会社からの宣伝広告費に期待しているせいか、海外でも日本国内でも、メディアは成功率の高さを大きく報道しているが、その詳しい内容にはあえて触れようとしない。これでは人命軽視とのそしりも免れないだろう。

 こうした利益最優先の対応にファイザーの元副社長のマイケル・イエードン博士からは「危険極まりない」との批判の声も出ているほどだ。同博士によれば、「治験者は製薬メーカーに騙されている。ましてや不完全なワクチンをこれから投与することは犯罪行為に等しい」。これほど強烈な内部告発はないだろう。何しろ、イエードン博士はファイザーの元副社長であり、後にノバルティスに買収されたジアルコの創業者である。薬理学の第一人者と目される人物に他ならない。

 これでは大半のアメリカ人が「接種を希望しない」と答えているのも当然だろう。新型コロナウイルス対策の責任者を務め、国立感染症研究所(CDC)の所長でもあるアンソニー・ファウチ博士曰く「最大の課題はアメリカ人の多くがワクチンの接種に否定的なことだ」。当然のことであろう。

 あまり知られていないが、ファウチ博士自身はCDCとともにファイザーやモデルナに投資している利害関係者である。ファウチ博士はことあるごとに「いまだ効果的な治療薬やワクチンは存在しない」と繰り返しながら、「今回のファイザーやモデルナの治験結果は極めて有望である」とお墨付きを与えるような発言をし始めている。これでは「裏取引」を疑われても仕方ない。

 すでにアメリカでは3万人を超す医師や感染症の専門家が声明を出しており、「現在開発が進行中のワクチンは安全性の保証が不十分であり、使用には慎重にならざるを得ない」と疑問を呈しているのである。こうした医療関係者が懸念するのは「ウイルスで死ぬより、ワクチンで死ぬケースが急増すること」と言っても過言ではない。

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 一方、中国で開発が進む北京生物工学研究所とカンシーノ・バイオロジカルが共同で取り組むウイルス・ベクター・ワクチンの場合でも治験者の75%が発熱、痛み、頭痛、疲労感などの副作用を訴えている。同じくウイルス・ベクター・ワクチンを研究中の英国のオックスフォード大学とアストロゼネカもすでに治験の第3段階に入っており、ワクチンの完成と効果には期待と自信を示しているが、国民の大半が抗体をもつまでには時間がかかるため、「マスクやソーシャルディスタンスは来年夏までは不可欠だ」という。

 やはり重要なことは、ワクチンに過度の期待を寄せる前に、食事や睡眠、運動など日常生活を健全なものに改善していくことだ。遠回りのようだが、そうした自主的な取り組み姿勢がウイルスを寄せ付けないことにつながるに違いない。

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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