2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

19年台風15号の停電時、地元住民にスマホ充電~太陽光市民発電所が地域を救う

台風15号で1週間近く停電

市民エネルギーちば(株) 代表取締役 椿 茂雄 氏
市民エネルギーちば(株) 代表取締役 椿 茂雄 氏

 昨年の台風15号で、大きな被害を受けた千葉県。市民エネルギーちば(株)代表取締役・椿茂雄氏は当時の状況をこう振り返る。「とても風が激しく、屋根の瓦が飛び、畑のビニールハウスが倒壊するほどだった。近くの神社も樹齢が数百年の杉が倒れて壊れたり、電柱が倒れたり、近くの木が倒れて電線が切れるほどで、停電は7~8日間続いた」。

 千葉の房総半島で停電が長期間におよんだのは、その被害が広域にわたり、倒木などで道路が通れずなかったためだ。「想定外」に被害が大きかったため、東京電力パワーグリッド(株)(以下、東電)だけでは停電の対応が間に合わず、椿氏は「1週間近く経ってようやく電柱の修理がなされた。全国から人手を集めていたようで、実際に工事に当たったのは関西電力だった」という。

 毎年のように「これまでにない」豪雨、台風などの災害が続き、「例年にない」事態がもはや普通になりつつある。

停電時にソーラーパネルで地域住民のスマホを充電

ソーラーシェアリング
ソーラーシェアリング

 地震もそうだが、大規模な災害が起こり、インフラの復旧が追い付かなくなると、これまで当たり前とされたインフラを頼ることはできず、地域で解決するしか方法は残されていない。

 1週間近い停電が続くなか、市民エネルギーちば(株)では、畑の上にソーラーパネルを設置する「ソーラーシェアリング」の太陽光発電を運営していることを活かし、千葉県匝瑳市と協力して飲食店・産地直売所である「ふれあいパーク八日市場」(匝瑳市)に小さい太陽パネルと蓄電池(バッテリー)を運び、停電時に食事や買い物に訪れた地域住民に無料でスマホや携帯などの充電を行った。

 市民エネルギーちばには、太陽光発電のソーラーパネルがあるため、家庭用に電気を変換できるパワーコンディショナーを使って電力を地域に開放すれば、地域住民の家に停電時でも電気を供給することができる。しかし、太陽光発電でつくられた電力は東電の送電網を通って各家庭に送られるため、停電時には地域の送電網が使えなくなり、太陽光発電をしても各家庭に電気を送ることはできなかった。そこで、「地域の人々にスマホや電化製品、蓄電池を発電所にもってきてもらい、太陽光発電でつくった電気を使ってもらえるようにした」(椿氏)。

停電しても、太陽光発電で地域への電力供給が可能に?

停電時、ソーラーパネルでスマホやケイタイを充電
停電時、ソーラーパネルでスマホやケイタイを充電

 市民エネルギーちばは9月1日に、災害時に匝瑳市内の同社20発電所を開放し、地域の電力として使ってもらえるよう、協定を市と締結した。

 さらに来年からは、匝瑳市の賛同を得た補助事業()として、停電時には東電の送配電ネットワークを切り離し、地域独自のネットワークに切り替える地域マイクログリッドで、停電時に地域に無料で電力を供給できる仕組みに取り組む予定だという。椿氏は「学校や公共施設、避難所など緊急性が高く食事供給に必要な場所からはじめ、今後は、地域600世帯への電力供給を目指す。昨年の台風以来、市も停電対策に前向きだ」と話す。

 市民エネルギーちばでは、地域600世帯が使う合計2.3MWの電力を太陽光発電しており、曇りや雨の日、夜間などを蓄電池に充電して対応できれば、計算上、地域の家庭の電力を確保できるという。地域で自立した電力インフラができるということだ。椿氏は「送電網は公営がベストだが、発電設備を含めて地域の住民が運営に関わることのできる体制が必要だ。将来的には、災害に関係なく常時、地域に電力を供給できる仕組みを目指す」という。

 同社では発電した電力を充電する蓄電池を導入予定だが、電気自動車(EV)が有効活用できると見込む。「ふれあいパーク八日市場」にEVの急速充電設備を設置し、緊急時には避難所などに電力を運ぶ仕組みを計画している。

市民発電所~ソーラーシェアリングで農業を支える

 市民エネルギーちばの太陽光発電所は「市民発電所」のため、太陽光パネルの市民オーナーは200名以上おり、「都会のマンション住まいで自宅にソーラーパネルを置けない」などの理由から、東京や東北、北海道など遠方のパネルオーナーも多い。

 地域の農業を支援するソーラーシェアリングでは、地域の耕作放棄地の上にソーラーパネルを設置している。地域の土地や環境を守ることを考えてのことだ。

 椿氏は「全国で耕作放棄地が増え続けているのは、その土地の農業だけでは収支が建てられないことが理由。日本の農業を支える仕組みとして、畑の上に太陽光パネルをつくり発電し、土地を借りている営農者に支援金を出すことで自立して農業を続けられる方法を取っている」と話す。

全国から1,000人を超える見学者

 市民エネルギーちばは設立時から、地域を活性化する事業計画を立てており、たとえば1,000kWの太陽光発電所では、その収益から営農者に年間約200万円を支払い、地域基金として200万円を寄付している。この寄付は地域で「村づくり協議会」をつくり、(1)環境保全(2)農業支援(3)子どもたちのため(4)地域を元気にするために使うという条件をつけて、具体的な使途は協議会が決めている。村の祭りや小学校の備品購入、保育園の活動、都会との交流となる収穫祭やホタル観賞会など有効に役立てている。

 椿氏は「コロナ前は全国から年間1,000人以上の見学者がきており、同じような課題を抱えている地域は全国にあるのではないかと感じる。経験やノウハウを伝えることでその取り組みを支援できたら」と語る。

 「地域活性化」という言葉がいわれて久しいが、行政に頼りきらず地域が主体的に実行するこの取り組みが今後、活躍の場をさらに広げていくのではないかと予感している。

※:国の補助金を受けて、地方自治体が主となり行う公共事業 ^

【石井 ゆかり】

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