2024年05月07日( 火 )

耐震強度不足に加えマンション全体で7,000本鉄筋不足 驚愕の“殺人マンション”パークサンリヤン大橋の裁判(4)

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 続けて、パークサンリヤン大橋に関する訴訟の原告側技術意見書の内容を報じる。

建築基準法令が定める最低限のレベルに対して不足している耐震強度

 下図はB棟の構造特性係数(Ds)と保有水平耐力比(耐震強度)の一覧表である。建築確認時の不適切な構造計算書では、2~13階のDsは不正に低減された「0.35」という数値になっている。建築基準関係法令に従い、鉄筋コンクリート造(RC造)とした場合のDsは「0.4」となる。

0.35/0.4=0.875 ← 本来の耐震強度より12.5%も不足。

 13階を例に挙げると、表の通り、耐震強度(Qu/Qun)は、最低限で1.0が必要なところ0.91となっており、耐震強度不足である。

 上の表では、Y方向(耐震壁方向)のDs値が0.35となっており、次の表のランク「Ⅲ」に相当する。しかし、RC造では「0.4」としなければならない。

 ほかのマンションの構造計算において、この規定を考慮した検討(Dsを再計算)を行った例があるため、以下に記載する。

 建築基準法(以下、法)と関連法規との関係としては、法20条に「安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること」とある。ここでいう政令は建築基準法施行令が該当する。

 建築基準法では「政令で定める技術的基準に適合すること」などと示しているが、具体的な基準・方法として、施行令、告示、日本建築学会規準、「建築物の構造関係技術基準解説書」などに定められた方法により、安全を確認しなければならない。法20条に定められた構造耐力確認の具体的な方法は施行令および告示で定められており、これらの方法により行われていない構造計算は、建築基準法令に不適合である(特別に認定を受けた場合などを除く)。 

 鉄骨が配置されていない方向の構造耐力(保有水平耐力ともいう)の計算においては、RC造として計算することとされており、RC造の柱につき部材群としての種別に対応して告示で定められたDs値は、SRC造の柱につき部材群としての種別に対応して告示で定められたDs値よりも、いずれも「0.05」高い値を使用することが必要とされている。

 このことについては、建築基準法施行令82条の3第2号の規定に基づいてDsおよびFesを算出する方法を定めた、昭和55年建設省告示第1792 号(平成19年国交省告示596号で改正)の第一の三において、「柱及びはりの大部分が鉄骨鉄筋コンクリート造である階にあっては、この表の各欄に掲げる数値から0.05以内の数値を減じた数値とすることができる」としている。ゆえに、RC造とされる本件マンションの耐震壁方向の保有水平耐力計算においては、SRC造としての低減をすべきでないことがわかる。

 本件マンションの構造計算においては、本件マンションの耐震壁方向の保有水平耐力計算において、SRC造の場合の柱の部材群と同等のDs値を用いた計算がなされている。従って、本件マンションの保有水平耐力計算については、安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準である「Qu≧Qun」に適合していることが確認されていない。

 よって、本件マンションは、建築基準法第20条第1項第2号イ、施行令第81条第2項第2号、同条2項1号イ、同第82条の3および昭和55年建設省告示第1792号(平成19年国交省告示596号で改正)に違反している。

Dsの算出について定めた告示
(昭和55年建設省告示第1792 号)

(つづく)

【桑野 健介】

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