2024年04月25日( 木 )

コロナ禍のなかでも韓国造船業界に相次ぐ朗報(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

LNG船 イメージ 造船分野で韓国と1、2位を争っているのが中国だ。は、中国政府は造船業界に全幅的な支援を行い受けてLNG船の建造に心血を注いでいるが、韓国との技術的なギャップをまだ埋めることができず、苦戦を強いられている。

 中国の造船会社のなかでは、中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の2大グループがLNG船の建造能力を有している。中国の造船会社は、2019年から現在までLNG船5隻を受注しているが、すべて自国内の受注である。

 中国は韓国に技術力では遅れているが、莫大な資金力を武器にLNG船の大型受注に成功している。CSSCはカタールとスロット契約を締結したが、その契約は1隻あたり1億8,000万ドルで合計金額は28億8,000万ドルに上る史上最大の規模となった。

 中国はLNG船の建造で船舶に問題が発生したり、納期を遵守できなかったりと、技術面でさまざまな問題があることが明らかになっているが、今回の中国の受注は、カタールからのガスの大型購買契約と引き換えに成立したものと憶測されている。

 韓国では、環境規制が強化されることによって、韓国造船産業に全盛期が再び訪れるのではないかという期待が高まっている。しかし、その他の要因も市場に影響をおよぼすため、韓国が技術優位だからといって中国に勝つという保証はない。

 他方、日本の造船業界はLNG船の建造を断念しているようだ。日本の造船会社もLNG船を建造できる技術を有しているが、中国や韓国との価格競争となると勝算がないと判断したようだ。

 韓国の造船業界はLNG船においても、中国との技術格差をさらに拡大して競争力を確保している。加えて、船舶に燃料電池を利用する研究に勤しみ、次世代の技術を準備している。たとえば、韓国造船海洋は燃料電池を船舶の推進システムに活用するのみでなく、発電システムに活用できるように努力を重ねている。

 また、液化水素を運送する船舶の場合、蒸発した水素ガスを燃料電池の燃料にする研究なども始めている。サムスン重工業は燃料電池メーカーである米国のブルーム・エナジーと船舶用燃料電池の共同開発に取り組んでいる。大宇造船海洋も米国船級協会(ABS)と提携して、超大型原油タンカーに積む燃料電池の開発に着手している。

 環境規制の強化は、このように造船業界に新しい技術の導入を促している。未来の自動車に応用されると見込まれる自動運転技術は、船舶にも適用される可能性が高い。造船産業にも新しい時代が到来すると予想される。新型コロナウイルス感染拡大が早く収束し、世界経済に活気が戻ることを祈りたい。

(了)

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