2024年05月02日( 木 )

韓国の半導体輸出、前年同期比で52%増(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 コロナ禍によって、物理的な移動や対面接客、対面会議などの「リアル」から、オンラインを活用する「バーチャル」への転換が進んだ結果、世界の半導体業界に大きな需要が生まれ、半導体企業の業績に追い風になりつつある。さらに、パンデミックによる経済状況の変化は、半導体産業に長期的な成長をもたらす要因となっている。

 韓国の12月1日~10日の半導体輸出は、前年同期比で52%も増加したことが新聞の発表で明らかになった。2020年1~11月の半導体の輸出額は897億ウォンであり、前年同期比で3.5%伸びている。これは同期間の韓国の総輸出額4,615億ドルのうち19.4%を占めている。

 半導体は韓国輸出の稼ぎ頭であり、18年には総輸出額の20.9%を占めるようになり、最高記録となった。19年には、米中貿易戦争や需要減少による価格下落の影響を受け、総輸出額に占める半導体の割合は17.3%まで落ち込んでいた。しかし、今年になり、半導体輸出がいくらか回復したことになる。

 半導体の輸出が伸びた理由は、新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワーク、遠隔教育などが普及し、データセンターが増設されて、半導体の需要が旺盛であったことが挙げられる。

 半導体の輸出は20年7月から11月まで連続して成長を続けたのみでなく、直近の3カ月間では2桁の成長を記録している。とくに、韓国の半導体産業はメモリ分野に偏っていることが問題として指摘されていたが、今回の輸出では非メモリ分野の輸出も加わり、将来の展望が明るくなった。

 このように半導体の輸出が伸びているのは、世界市場の状況に起因している。世界半導体市場統計(WSTS)によると、21年の世界半導体業界の売上高は今年より8.4%増加して4,694億ドルになると予測されている。

 そのなかで、DRAM()などのメモリ市場の売上高は、今年より13.3%増加して1,353億ドルになると予想されている。とくに「来年メモリ価格が大幅に上昇する」という声を聞く。デジタルトランスフォーメーションを進める企業がますます増え、データ流通量が爆発的に拡大することにより、高価なメモリ需要が伸びると予想される。加えて、米半導体大手のMicron(マイクロン)台湾工場の稼働中止による影響により、メモリ価格が上昇すると予想されている。

 サムスンはEUV露光装置を積極的に導入し、TSMCとファウンドリー事業の1位の座をめぐり争っている。製造業では、1社のみに発注するとトラブルの発生時に対応が困難になるため、複数のメーカーに生産を発注するのが一般的であり、半導体業界もこのルールが適用されている。発注側は、TSMC1社に頼るより、Samsungというもう1つの選択肢を確保しておくことが望ましい戦略になる。

 コロナ禍で大打撃を受けた業界がある一方で、半導体業界のようにコロナ禍が追い風になっている業界もあるのは興味深い。中国企業による半導体産業への莫大な投資は、韓国半導体業界にとって一時は懸念材料であった。しかし、米国が中国に対してさまざまな規制を行ったことにより、中国が半導体産業で優位に立つのは少し遠のいたようだ。

(了)

※:半導体メモリの一種。 ^

(前)

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