2024年05月02日( 木 )

韓国の半導体輸出、前年同期比で52%増(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 コロナ禍によって、物理的な移動や対面接客、対面会議などの「リアル」から、オンラインを活用する「バーチャル」への転換が進んだ結果、世界の半導体業界に大きな需要が生まれ、半導体企業の業績に追い風になりつつある。さらに、パンデミックによる経済状況の変化は、半導体産業に長期的な成長をもたらす要因となっている。

 コロナ禍でデジタル革新が大きく加速しており、リモートワークや教育などに必要なインターネットの接続環境の構築には半導体業界が深く関わっている。加えて、今後、実社会への普及が予想される自律走行(自動運転)、AI(人工知能)、IoT(物のインターネット)を実現する上で半導体は欠かせず、半導体産業はあらゆる産業の競争力を左右する重要な存在になることは間違いない。

 IoTで収集したデータをAIで解析する、データ駆動型社会の到来が近い将来に予見されている。データは未来の「原油」にあたり、データ社会を実現するために半導体は必須である。

 このような状況下で、世界の覇権をめぐって争う米国と中国は、半導体産業においても勝負をかけているため「半導体戦争」が起こっている。

半導体 イメージ 中国の半導体輸入額は年間3,055億ドルに上り、中国は半導体の大半を輸入に依存している。中国は、半導体を購入するために莫大な資金が海外流出するのを解決するためにも、野心的な半導体戦略を立案した。

 しかし、米国は中国の戦略を潰すべく、設計ツールや製造装置に関する米国の輸出規制を行っているため、中国の戦略は失敗に終わる可能性が高まっている。米国は、最先端の半導体技術が中国の手中に入り、中国が半導体分野で優位に立つと将来の米国の産業競争力が脅かされる。そのため、トランプ政権は今のうちに阻止するため、中国にさまざまな規制をかけ始めている。

 米国は、将来のデジタル社会のインフラになると予測される5Gの世界で、世界首位の座を占めていたHUAWEI(ファーウェイ)を潰しにかかり、中国最大の半導体ファウンドリー企業であるSMICをブラックリストに載せて規制をかけている。半導体はすべての産業の競争力の源泉となる注目の産業であるため、これらは米国にとって意味のある行動だ。

 一方、半導体事業は装置産業であり莫大な投資を必要とするため、参入障壁の高い業界である。半導体の設計は米国企業が長けており、メモリ市場は韓国企業が世界シェアの6割以上を占めている。加えて、製造設備と材料は日本が世界で抜きん出ており、受託製造は台湾のTSMCと韓国のSamsung(サムスン)の2社体制になっているのが現状だ。

 従来の半導体業界では、巨額投資を断行した企業が勝ち組となっていたが、業界のゲームのルールが変わりつつある。その理由として、AIとビッグデータの登場により、データの処理が今までの方法では対応できないほど複雑になっており、消費電力の少ない小型半導体の開発が待たれていることが挙げられる。大量のデータを今までの方法で処理すると、大量の電力を消費し、多くの熱が発生するという問題が起こり、危機的な状況が発生しかねないためだ。

 半導体の省電力化、小型化を実現するためには、線幅をさらに小さくする微細加工技術が必要であるが、線が近寄りすぎて電流の干渉現象が起きるなど、微細加工技術は限界を迎えつつある。そのため、半導体の製造にはEUV(極端紫外線)露光装置という新しい露光装置が使われ始めている。

(つづく)

(後)

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