2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

コロナ感染対策は業務命令として有効?

岡本弁護士

 新型コロナウイルスの第3波が到来しました。社内から感染者が出ると、事業が一時的に停止する事態を招くこともあり得ますし、風評被害を受けるリスクもあります。また、会社は、従業員らに対する安全配慮義務を負っていますので、従業員が安心して働けるよう感染防止対策を実施する必要があります。

 それでは、従業員に対し、感染防止対策として推奨されている「マスク着用」を義務付けたり、懇親会への参加を禁止し、このルールを守らない従業員に対して懲戒処分を行うことなどは可能でしょうか。

 従業員は、労働契約に基づき、会社が業務遂行のために行う指示・命令(業務命令)に従う義務を負っています。つまり、一般論として会社は、従業員の企業秩序遵守義務や使用者の利益に配慮し誠実に行動すべき義務の範囲で、従業員に対し業務命令を発することができ、従業員が業務命令に従わない場合には、懲戒処分などをすることも許されるということです。

 マスク着用は、厚労省なども推奨している対策であり、感染防止対策の必要性があること、感染が発生した場合の結果の重大性(業務遂行に支障が生じるなど)、マスク着用にともなう従業員の不利益が人格的利益を損なうなどの大きなものではないことなどから、義務付けも可能であると考えられます。

 そのため、業務命令に違反してマスク着用をしない従業員は、懲戒処分の対象となり得ます。ただし、懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合は、懲戒権の濫用として無効となります。マスクの着用拒否は、労務提供そのものについての命令違反でないことや、怠ったからといって直ちに感染するわけではないことを考えると、直ちに懲戒処分にするのではなく、まずはマスク着用の必要性を丁寧に説明し、自発的にマスクを着用するよう誘導し、このようなたび重なる注意や指導を行っても従わない場合や、何か具体的にトラブルを招いた場合に、初めて懲戒処分を検討することになるでしょう。

 他方で、仕事から離れた私生活については、基本的に従業員本人の自由です。取引先との親睦会など業務に関連したものであれば、業務命令により禁止することも可能ですが、純粋にプライベートな懇親会などについて、会社が全面的に禁止し、従わない者に対し懲戒などの不利益処分を下した場合は、無効とされる可能性が高いでしょう。

 もっとも、従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、会社は、濃厚接触者の特定や、濃厚接触者への自宅待機などの指示、社内の消毒の実施、社内・社外への報告、他の従業員の出社制限や事業の停止といったさまざまな対応を迫られます。従って、感染防止や企業防衛の観点から、業務命令ではなく、懇親会を自粛するよう要請することは業務上必要であり、許容されると考えられます。

 また、病院などの院内感染により多大な影響をおよぼすような業種や、運行乗務員など多くの人々と密接に接触する業種、あるいは社会インフラに関わる業種などについては、他に適当な感染防止手段がないのであれば、禁止する行為の具体的な判断基準を示すなどの合理的な方法を講じることを前提に、それに従わない者に懲戒処分を下すことも可能とされるのではないでしょうか。

 いずれにしても、感染防止策の必要性を十分に説明して、従業員が自発的に防止策に取り組むよう教育していくことが重要です。


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岡本綜合法律事務所

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<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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