2024年04月28日( 日 )

【熊本】全国初の乗合バス共同経営エリア、5社で9,000万円超の赤字圧縮

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運転手不足の緩和にも期待

 同じエリアで路線バスが競合する熊本市のバス会社5社が、同市と周辺の4区間で運行を調整する「熊本地域乗合バス事業共同経営計画」を作成。国交省に2月下旬、独占禁止法の特例法(地域特例法)に基づき認可申請する。

 国交省は、公正取引委員会の協議を経て計画を認可。バス会社5社は4月のダイヤ改正で競合路線の解消や等間隔の運行を開始し、全国初の乗合バス共同経営エリアが生まれる見通し。

 熊本市の九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バス(旧・熊本市営バス)の5社は、年間90億円の運営費のうち30億円近くが自治体の補助金。このため19年春、熊本県と熊本市も参加して、5社で公共交通網の維持と持続可能な経営の在り方について話し合いを始めた。この動きとほぼ並行して、地方の乗合バス事業と地方・第二地方銀行のサービス維持を目的とした地域特例法が20年5月に成立、同年11月に施行された。

 共同経営計画案などによると、競合を解消する4区間は、いずれも熊本市の熊本桜町バスターミナルを起終点に、(1)玉名市方面(2)宇城市方面(3)熊本市東部(熊本県運転免許センター)方面(4)大津町方面を結ぶ路線で、各路線とも2社が競合する。

 これを(1)は熊本都市バスが九州産交バスに、(2)は熊本バスが九州産交バスに、(3)は九州産交バスが熊本都市バスに路線譲渡することや、運行一本化などにより重複を解消。(4)は九州産交バスと熊本電気鉄道が運行時間を調整する。

 こうした取り組みにより、4区間では1日当たり最大150便程度、最小100便程度の減便が可能という。また始発便から終着便まで5分間隔から20分間隔での運行を目指す。その結果、1日当たりで運転手5.5人を新たに確保するのと同じ効果があり、慢性的な運転手不足の緩和につながるとしている。

 同計画は21年度から3年間だが、赤字の圧縮幅は5社合計で3年間に総額9,100万円を見込む。その一方で、4月23日の商業施設「アミュプラザ熊本」の開業に合わせて、JR熊本駅前、熊本桜町バスターミナル、通町筋を循環する『まちなかループバス』を投入、“稼げる”乗合バスを模索する。

全国で共同経営化の流れ

 同一エリアの乗合バスの共同経営は、岡山市の両備ホールディングスと岡山電気鉄道の2社が同市の一部路線についてすでに合意、4月中の実施を目指す。群馬県の群馬中央バス、日本中央バス、永井運輸、関越交通、群馬バス、上信電鉄の6社は7月をメドに、前橋市の市街地で路線バスの共同経営計画を国交省に認可申請する構え。広島県では広島電鉄と広島バスを軸に複数のバス事業者が、広島市などの一部路線を対象に共同経営の協議を進めるなど、全国各地で乗合バス事業の共同経営が大勢になりつつある。

 相談に応じる国交省は、「住民へのサービス維持を目的に1つの県単位で路線バスを再編する経営統合計画は、地域特例法の対象になる」(総合政策局地域交通課)と話している。

【南里 秀之】

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