2024年03月29日( 金 )

九州新幹線長崎ルートを長崎県の視点から考える(前)

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 九州新幹線長崎ルート(武雄温泉~長崎/以下、長崎ルート)の2022年秋暫定開業まで、残り2年を切った。トンネルや高架橋などの土木工事は完了済みで、線路や電気設備などの工事に入っている。駅舎についても、諫早駅、新大村駅に続き、20年7月に長崎駅でも建築工事が始まっており、開業がまさに目に見えるかたちで近づいている印象だ。その一方、国や長崎県、JR九州などが求める「長崎ルートのフル規格化」については、佐賀県知事の拒絶により、その行方がまったく見通せない状況のまま。長崎ルート問題をめぐっては、着々と建設が進むのをよそに、佐賀県の主張、動向にばかり注目が集まる傾向があるように思われる。そこで今回、長崎県の視点から、長崎ルートの暫定開業、フル規格をめぐる問題について、検証してみる。

開発が進む長崎駅(写真提供:長崎県)
開発が進む長崎駅(写真提供:長崎県)

フル規格以外の選択肢はない

 長崎県の主張は明確だ。2022年秋の長崎ルート開業はあくまで「暫定」であって、新大阪駅まで直通する全線フル規格を求めている。その実現のためには、新鳥栖~武雄温泉に新幹線路を整備し、現行の武雄温泉駅での対面乗り換え方式(リレー方式)を解消する必要がある。長崎県新幹線対策課職員は「我々が求めるのはあくまでフル規格。新幹線のメリットを最大限発揮するには、フル規格以外の選択肢はない」と話す。

キャッチコピーとロゴマーク(提供:長崎県)
キャッチコピーとロゴマーク(提供:長崎県)

 鉄道的には、暫定開業とフル規格は本来セットで考えるべきものだが、長崎県では暫定開業とフル規格を別事業として扱っている。パンフレットも別々だ。ここに、佐賀県への配慮が見て取れる。「長崎県としてフル規格は絶対に譲れないが、佐賀県の言い分もわかる点はある。佐賀県の意見、要望をできるだけ取り入れ、最終的には一緒にフル規格を進めたい」(同)という思いもあるからだ。

 長崎県は19年3月、暫定開業に向けたアクションプランを取りまとめた。その内容は、(1)「県民への情報発信(気運醸成)」、(2)「訪問者の満足度向上と県外プロモーション」、(3)「新幹線駅からの二次交通の構築」などからなる。

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 (1)の施策としては、「ふらり長崎 それもいい」というキャッチコピーやロゴマークの作成、車掌風コスチュームの長崎県マスコットキャラクター「がんばくん」「らんばちゃん」の登場、開業フォーラムなどのイベントの実施などがある。(2)では、島原鉄道での観光列車の運行、JR九州とタイアップしたデスティネーションキャンペーンの実施などがある。(3)としては、島原鉄道とJR九州をセットにしたフリーきっぷの販売、などがある。

マスコットキャラクター「がんばくん」(左)、「らんばちゃん」(右)(提供:長崎県)
マスコットキャラクター「がんばくん」(左)、「らんばちゃん」(右)(提供:長崎県)

(つづく)

【大石 恭正】

(中)

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