2024年03月29日( 金 )

球磨川流域治水協議会がとりまとめへ 流水型ダム前提に流域治水プロジェクト

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 球磨川流域治水協議会の第2回目の会合が、2020年12月18日に開かれた。席上、11月に熊本県知事が国土交通大臣に建設を要望した新たな流水型ダムの有効性、必要な調査検討内容などについて事務局から説明があった。今後は、流水型ダム建設を前提として、球磨川緊急治水プロジェクトをまとめたうえで、20年度中に球磨川流域治水プロジェクトをまとめる。 

 河川対策として事務局からは、川辺川に流水型ダムを建設する場合、既存の多目的ダムとしての川辺川ダム計画に示された利水容量を洪水調節容量に振り替えれば、1万600㎥が洪水調節容量として増強活用できるなどとした。その際の洪水調節ルールの変更については、慎重な検討が必要になるとした。その一方、流水型ダムの実現に向けては、貯水池法面の安定性に関する追加の地質調査、環境調査のほか、ダム機能を最大化する洪水調節計画の策定、流木閉塞や環境に極限まで配慮するための土砂堆積対策に関する検討について、速やかに着手すべきとの考えを示した。 

流水型ダムの特徴(協議会資料より)

 流水型ダム以外の河川対策としては、球磨川上流部(多良木町など)、中流部(球磨村など)で河道掘削を行う。人吉地区では堤防位置を極力変更せず、川側に突出した箇所のみを河岸拡幅(引堤)する。人吉地区を除く区間では、必要に応じて輪中堤・宅地かさ上げを行う。上流部(錦町など)区間に遊水地を整備する。整備方式は、平時に営農可能な地役権方式、より多くの貯水容量を確保できる掘り込み方式を組み合わせ配置する。一房ダムの基本的な最大放流量を400㎥/s(現行650㎥/s)とし、一定量放流操作を検討する。浸水リスクのあるエリアでの土地利用規制、リスクの低いエリアへの移転などの誘導、住まいの工夫などを進める――などとした。 

 流域対策としては「上流域での田んぼダム(約3,300ha)」のほか、「流域全体のため池(50カ所、約73万㎥分)を活用する」「校庭や公園など(約85ha、約25万㎥分)に雨水貯留機能を確保する」「浸透ますや透水性舗装など雨水浸透機能を整備する」「間伐などの森林整備を行い、保水、土砂流出防止機能を増強する」――などを挙げた。ソフト対策としては、水害タイムラインの作成検討などを挙げた。 

 流域市町村の首長からは、事務局の提案に対して、とくに異論や反論はなかった。引き続き、まっとうな治水対策が期待される。ただ、熊本県知事が打ち出した「緑の流域治水」について、具体的に何を指すのか説明されることはなかった。実体をともなわない「屁のようなスローガン」がそのまま残り続けるのが気がかりだ。 

【大石 恭正】

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