2022年05月25日( 水 )
by データ・マックス

『脊振の自然に魅せられて』大雪の金山登山(前)

金山の登山口となる坊主ヶ滝登山口へ

 1月の7日から12日にかけて、全国的に寒波がやってきた。脊振山系でも5年ぶりに本格的な冠雪がみられた。天気の状態を見て、ワンゲル(ワンダーフォーゲル)の先輩で「脊振の自然を愛する会」の副代表Tへ「雪が降りましたね、いつ行きましょうか?」と筆者は電話を入れた。すると「池田から電話があるとば、待っとうたい」と先輩Tが博多弁で返してきた。

 天候が安定する13日(水)に金山に登山に行くことに決めた。ワンゲルの後輩3人に「都合はどうか」とメールで連絡を取ったが、元気な後輩らも加齢とともに体調に変化があり、膀胱がんや前立肥大の手術をする年齢になっていた。後輩Hから「行けます」との返事があり、先輩T、後輩H、筆者の3人で行くことにした。

 筆者の自宅の近くに住む先輩Tを車で迎えに行って、集合場所の早良区のJA脇山支店に隣接するワッキー主基の里に午前8時30分に集合し、さらに後輩Hを車に同乗させて金山の登山口となる坊主ヶ滝登山口へ向かった。

 坂道に雪が積もっているのではないかと懸念していたが、登山口までの坂道ではすでに溶けていた。未舗装のため、10㎝ほど積もった雪が残る工事用の空き地に車を入れる。「ググー」と、冬タイヤが雪を踏みしめる音がする。

坊主ヶ滝上流となる沢の支流ルートへ

 登山準備をしていると、知人の平田氏がやってきた。平田氏には昨年夏に野河内渓谷の沢登りで世話になっていた。先輩 Tとは旧来の山仲間であり、ベテランの登山家である。ピッケルを片手に冬山の装備をしていた。時間はちょうど午前9時であった。

 途中まで、平田氏と一緒に歩いた。標高400mくらいまでくると、登山道に雪が現れた。我々が設置した道標やレスキューの表示板を確認しながら歩みを進める。平田氏は単独登山のため、「奥にある氷瀑を見たいので」と途中から沢ルートに入っていった。平田氏は筆者より10歳若い。我々は金山へ直登する予定であったが、先輩Tが「沢ルートへ入ろう」と言い、坊主ヶ滝上流となる沢の支流ルートへと歩き出した。平田氏と同じルートである。

 歩くごとに雪が少しずつ深くなり、岩に積もった雪が丸みを帯びてきた。足下には浅い沢の水も流れており、慎重に歩く。先輩Tが先頭を切ってルートをつくりながら歩く。雪はますます深くなった。

 沢を飛び越えようとした後輩Hが石の上でバランスを崩し、冷たい水に足を入れてしまった。膝から下が濡れていた。先輩 Tも筆者も、「大丈夫か」と同時に声をかけたが、後輩Hはすぐに水から出たので、ずぶ濡れにはなっていなかった。脚に付けていた雪対策のスパッツが幸いした。

ますます深くなる雪

 沢道は谷になり、さらに奥へと進む。谷が傾斜を増し、雪もますます深くなってきた。樹木に降り積もった雪がきれいだと、見惚れながら足を進める。雪景色に感動してカメラを構えると、後輩Hもカメラのシャッターを盛んに押していた。

雪深い谷沿いのコースを進む
雪深い谷沿いのコースを進む

 筆者らは75歳も過ぎており、脊振山系で雪山を堪能できるのはこれが最後かもしれないと、雪に足を一歩ずつ入れてさらに奥へ進んでいると、人が歩いたと思われる足跡があった。よく見ると猪が歩いた跡であった。雪をかき分けて、力強く歩いた足跡が左右に続いていた。過去にも、雪の登山道で小動物2匹の足跡が点々と山の上まで続いていたことがあり、筆者は、小動物のおかげで当時のルートを間違わずに済んだ。

 雪道を歩くのは、普段の3倍近くの時間を要する。まず、積雪のために足を上げる動作が多くなる。次に、ルート確認に手間取る。ルートを判別しにくい場所には、登山愛好者が赤テープを付けてルート表示をしていることもあるが、今回は途中からそのテープが見当たらなくなった。

 先に歩いて別の沢へ向かっている平田氏の足跡が残っていた。一段落して小休止すると、ここまで2時間は要していたことに気づいた。後輩Hがリンゴを出してくれた。筆者が食べやすいように切られたリンゴを口に頬張ると、「もう1つどうぞ」とH。後輩Hは「リンゴ屋のリンゴですから美味いですよ」と大きめタッパーにたくさんのリンゴを持参していた。Hはいつも果物を持参してくれる気配りの後輩である。

 一息ついて、筆者のザックにカメラを乗せ、セルフタイマーで3人の記念写真を撮る。さらに谷を進むと、20年前によく撮影にきたシャクナゲの群生地にやってきた。初めて使うスマホの地図アプリ「ヤマップ」でルートを確認する。ルート判別が難しい雪山では、やマップが大いに役に立つ。

 先輩Tが日没を気にして、「戻ろうか」と言ったが、筆者はスマホの地図を確認しながら「あと標高100mで西山のピークに出ます。そこまで行きましょう」と提案する。背をかがめてシャクナゲの林をくぐり抜けると、雪で被われていたシャクナゲからバッサリと雪が落ちてきた。

(つづく)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(後)

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