2024年04月19日( 金 )

【IR福岡誘致開発特別連載25】IR大阪開業時期の白紙報道とIR福岡との比較

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 大阪市行政は11日、コロナ禍の影響により、IR大阪の開発事業に関して、2026年開業予定も含めた、すべてのスケジュールを白紙にすると発表した。米国MGM Resorts Internationalとオリックスが主導するこの開発事業では、今の環境下で止むを得ない判断だ。

 主たる理由は公にはされていないが、事実上は米国MGM側にある。世界的なコロナ禍により、MGMは過去に経験のない1万8,000人という大量の人員解雇を実施し、未曾有の巨額損失を出しているからだ。それゆえ日本への投資は事実上の凍結状態にある。

 米国ラスベガスをビジネスの中心地とするMGMは、ライオンの彫像で知られる国内一の規模である約5,000室の部屋数を誇るMGMグランドに、噴水のショーやハリウッド映画の『オーシャンズ11』で知られているホテル、ベラージオなど米国最大のカジノホテルを含めて数多くの施設を所有し運営する総合エンターテイメント企業だ(映画制作スタジオのMGMは別とされる)。

 IR大阪のほか、北海道苫小牧、和歌山、長崎・佐世保など後背地人口の少ない観光客を主とする地域でのIR開発にはつきもののリスクが、コロナ禍で如実に露呈した。

 また、IR大阪の共同事業者であり、オーナー企業のオリックスも、同様に大きな影響を受けている。当初からのIR大阪事業計画予算などの全面的な見直しを迫られて白紙となったのだ。

 当然、大阪市行政からのMGM側への依頼でもあった、鉄道インフラ整備延長工事の負担要請額の約200億円も、コロナ前の話であり、米国を含めた海外のIR投資企業側に、これらを負担する余裕は現在まったくない。すべての条件がコロナ前から一変している。

 ところが幸か不幸か、IR福岡の場合は、本件候補地の当地の福岡市行政はいまなお正式には手を挙げていない。

 IR福岡を促進している(一社)福岡青年会議所(JCI福岡)を筆頭に民間グループ組織は、昨年8月に福岡市行政と市議会ならびに(一社)九州経済連合会や在福岡米国領事館などの各関係機関に対して、この誘致促進を促すための「上申書」を提出し、その後、さらに、3万筆にも上る市民からの本件促進要請書名簿も併せて提出している。これらは、全国IR候補地ではほかに例がない。つまり、行政がコロナ以前に計画していたわけではないということだ。

 前回、IR福岡はコロナ収束後の、当地での各鉄道事業者の唯一の"救世主"であると、すでに説明している。また、IR福岡に関わる巨額な流動資金は、国と当地行政が進める「国際金融都市構想」を実現し、各地元金融機関からみても大きな"付加価値"と説明している。

 さらに、IR福岡は苦境にある各種観光関連業であるJAL、ANA、JTB、近畿日本ツーリスト、HIS、近年中に完成する天神のザ・リッツ・カールトン福岡などの宿泊業にも多大な貢献をするだろう。

 それどころか、コロナ前にIR福岡関係者から聞いた話によると、5つ星ホテルの少ない当地に、世界的著名なペニンシュラ、フォーシーズンズ、マンダリン、シャングリラなどのホテルも、隣接するアイランドシティの活用も含めて、続々と誘致開発が可能になるという。当地には、それを受け入れるだけの市場性は十分にある。

 MICEのほか、世界大会が開催可能な国際規格のリトルリーグ専用野球場(現在は神奈川県逗子市に1カ所のみ)、家族で楽しめるエンタメ施設、ギター型のIR高層ホテルなどが進出する可能性もイメージできれば、なんとワクワクする話ではないか!

 しかし、行政機関という組織は厄介なもので、IR大阪でも一度決めたことを変えるには、大変な労力が要る。従って、コロナ禍の影響で、当初のスケジュールを"白紙"に戻さざるを得なかったのだ。

 IR福岡の場合は、候補地までの既存の交通インフラが充実しており、ほぼ揃っているといえる。加えて前述の民間組織が先行して戦略を練っている。それゆえIR福岡は今後も規制を受けることなく柔軟に準備できる。タイミングも良い。若い人が集うJCI福岡が主導する魅力的な案件ではないか!

 筆者は、コロナ禍で苦境にある福岡の新たな雇用促進および経済の再生には、このプロジェクト以外には方法がないものと確信する。

【青木 義彦】

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