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2021年03月08日 17:44

アフターコロナの市民の心を癒す「パブリックアート」の大きな役割!(1)

画家・造形作家 佐藤 雅子 氏

 ニューヨークはアートの街として2つの点で有名である。1つは、ニューヨークには「メトロポリタン美術館(MET)」「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」など83もの美術館が存在すること。もう1つは、「パブリックアート」の街であることだ。このパブリックアートがコロナ禍の市民の心を大きく癒し、注目を集めていることについて、ニューヨーク在住の画家・造形作家である佐藤雅子氏に聞いた。
 陪席は、米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長、米国コロンビア大学経営大学院客員研究員として2度のニューヨーク滞在を経験した中川十郎 日本ビジネスインテリジェンス協会理事長である。

物心つく前から描いている絵は、いつもそばにある存在

 ――佐藤氏は幼少からほとんど海外でお過ごしですね。社会人としてのスタートは、Citibank(米国シティバンク)であったと聞いています。

佐藤 雅子 氏
佐藤 雅子 氏

 佐藤 父が新聞記者であった関係で、マニラ、ロンドン、ワシントンDC、カイロ、香港、そしてニューヨークに住んでいます。日本と他国の文化を比べるのが日常となる日々を過ごしました。絵は物心つく前から描いており、美術がいつもそばにありました。どこで暮らしていても、絵は言葉以上に自分を知ってもらえる手段となり、助けられました。常に私の足許を照らす存在であった気がします。ワシントンDCの高校生時代には、地域の美術コンペなどでさまざまな賞をいただき、著名な美術学校への推薦もあり、そのままニューヨークに住んで、アートの道に進むのが自然だと考えるようになりました。祖父の弟が春陽会の画家である石田正典氏とも聞いていました。

 しかし、当時のニューヨークは治安が悪く、1人で住むにはとても危険だったことが理由だと思いますが、父の勧めもあって、日本に帰国し上智大学新聞学科に進むことになります。大学時代は時事問題、新聞論などを学び、並行してテレビ局のアルバイトにも没頭しました。自分の人生のなかで、唯一、絵から遠ざかった時期になります。しかし、今考えると、現在の自分のアートスタイルは、貴重なこの時期(財産)があったからこそ、確立できたものと考えています。海外で育ったこと、日本の美大にいかなかったので日本色に染まらなかったこと、社会人をCitibankでスタートした経験も含めて、父にはとても感謝しています。その後、美術の世界に復帰するのは、縁があって香港の画廊、Asia Fine Art Galleryの「New Year Exhibition」に出展したことによります。

NYは芸術・文化で、世界に例を見ないすばらしい都市

 ――中川先生もニューヨークでのご経験が豊富であると聞いています。

 中川 商社マンとして、海外駐在20年を含む33年間で60カ国以上を訪問しましたが、ニューヨークはそのなかでもっとも好きな都市の1つです。商社マンとして約6年、大学教員として約2年、計8年の長期滞在の経験があります。ニューヨークは世界最大のビジネスセンターであるのみならず、美術、音楽などの芸術・文化において世界に例を見ないほどの刺激があるすばらしい都市であると感じています。

public art
public art

海外在住が長いゆえに憧れをもつ日本、日本画法

 ――佐藤氏は、ご自分のアートスタイルをどう考えていますか。

 佐藤 “余白”や“余韻”という言葉を大切にしています。ほとんど海外で過ごしてきたので日本の文化や言語から離れてしまうことがないように、また父が物書きだったせいもあり、“行間を読む”など、目に見えない意をくむ術を身につけてきました。さらに海外に住んでいたゆえに、自分のなかに強い憧れに近いような日本そして日本画法への愛があるのを感じています。

 画面いっぱいに迫力があふれ、圧倒される美人、グラマラスでセクシーな女性が西洋美とするならば、通りすがりに出会うと、ふと振り返りたくなる女性、香水の「残り香」の余韻に浸りたくなる女性、そんな優美な日本美を描くことが私の理想でもあります。

 「花」の描き方1つをとっても、西洋画と日本画は違います。同時代の絵画を比較しても、西洋画では、花瓶に活けてある花が多く、日本画では、自然のなかに存在している花が描かれています。私の理想は、自然美をありのままに描き、そのなかで、光と影、色彩の明暗を感じていただくことです。

佐藤氏作品「NADESHIKO」
佐藤氏作品「NADESHIKO」
Art Students of New York
Art Students of New York

 親しみやすい写生を重視した画風で知られる江戸時代中期~後期の絵師、円山応挙氏の襖絵にも見受けられる余白、余韻の美や、近代に通じる都会的洗練化と理知的な装飾性が際立ち、近代日本画の先駆的な絵師だと位置づけられている江戸時代後期の絵師の鈴木其一氏のリズミカルに踊る朝顔の絵に見られる空間の使い方を見ていると、目の覚める思いがします。

 私は海外の経験で身に付いた西洋画とこれらの日本画の知恵を融合した新しい世界を、自分のキャンパスに描き出したいと精進を重ねています。これはミクストメディア(※)といわれる技法ですが、描き方だけでなく、画材についても、西洋のものに加えて日本画材(墨、岩絵具、水干、胡粉、染料、金箔、金属材料、膠など)を組み合わせることを試みています。

(つづく)

【金木 亮憲】

※:現代美術において、性質や種類の異なる複数の媒体または素材を用いる技法。ミクストメディアとして使われる媒体は油絵具、水性絵具といった特定の種類を指すこともあれば、版画での技法として用いられることもある。


<PROFILE>
佐藤雅子氏
(さとう・まさこ)
 2014年の香港Asia Fine Art Gallery の「New Year Exhibition」以来、画家/造形作家としての活動を開始。ニューヨークへ移住後、さまざまな展示会の審査に合格し、賞を受賞しながら活躍の拠点を広げる。なかでも、ニューヨーク・マンハッタン区長オフィスアートショー、The Art Students League of New York の栄誉あるブルードット賞、Bronxville Women’s Club での最優秀賞は新聞、ビデオでも放映された。日本では2016年に東京都美術館でのグループ展示会にて入賞をはたし、2017年には新国立美術館、2019年には東京都美術館、2020年は代官山や銀座で出展。マニラ、ロンドン、ワシントンDC、カイロ、香港、そしてニューヨークでの生活を通し、育まれた感性と知覚を活かし、ユニークな色彩感覚と想像力を使い作品をつくり出している。
上智大学新聞学科を卒業後はCitibank に入行、その後、画家・造形作家に転身。現在に至るまで数々のポスターや商品のデザイン、雑誌の挿絵から港区立白金小学校の図書館の壁画なども手がける。ニューヨークの名門The Art Students League of New Yorkのメンバー、MoMAのアーティストメンバー、上智大学ソフィア会文化芸術グループ、現代造形表現作家フォーラムメンバー。

中川十郎氏(なかがわ・じゅうろう)
 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現・双日)入社。海外駐在20年。米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長を経て、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師、ハルピン工業大学国際貿易経済関係大学院諮問委員。米国コロンビア大学経営大学院客員研究員。中国対外経済貿易大学大学院客員教授、同大学公共政策研究所名誉所長、WTO-PSI 貿易紛争パネル委員。JETRO貿易アドバイザー。
 日本ビジネスインテリジェンス協会理事長。米国競争情報専門家協会(SCIP)会員。中国競争情報協会国際顧問。日本コンペティティブ・インテリジェンス学会顧問。天津市河北区人民政府招商大使、産業発展顧問、世界銀行CSR(企業の社会的責任)コンサルタント。オリンパス(株)特別委員会委員。日本貿易学会元理事。国際アジア共同体学会学術顧問(前理事長)。一帯一路陝西友愛研究所副会長などを歴任。14年に東久邇宮国際文化褒賞を授章。

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