わらび座ミュージカル「北斎マンガ」特設ページ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年03月08日 14:57

ポスト・コロナ時代をどう生きるか?変化する国家・地域・企業・個人、そして技術の役割(5)

 ポスト・コロナ時代に、バイデン新政権下での米国、中国、ミャンマー、台湾、韓国、北朝鮮、中東などの国際情勢はどう動き、日本はどのような役割をはたすべきなのか。さらに、管理社会化が進むなか、国家や企業、個人は新しい時代をどのように切り開いていくべきなのか。国際政治経済学者・浜田和幸氏、元公安調査庁第2部長で現アジア社会経済開発協力会会長・菅沼光弘氏、経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏が鼎談(ていだん)を行った。

不安定な中東、イランが台頭

国際政治経済学者 浜田和幸氏
国際政治経済学者 浜田和幸氏

 浜田 安倍前首相は米国とイランの国際関係を仲裁しようとイランを訪問しましたが、イラン核合意では成果が出ませんでした。欧州はイランの核合意復帰を望みますが、バイデン政権はイランが核開発をストップしないと交渉に乗らない、イランは経済制裁の解除が先だと互いに主張を譲りません。中国はその間を縫うようにイランにもワクチン外交を行い、石油を購入して関係の構築に努めています。日本は、親日国のイランが欧米との関係を改善できるように役割を果たせないでしょうか。

 藤 イランは外交に長けています。「危機」と報道されるイランよりも、OPEC主要生産国のサウジアラビアやイラクで危機が起こる可能性が高いです。米大手証券の格付け機関ムーディーズは、ムハンマド皇太子の失政で財源が悪化して消費税が5%から15%に上がり、公務員の給与を半分にする動きから、「第2のアラブの春」が起こるのはサウジアラビアではないかと予想しています。イランの石油産出量は1日当たり200万バレル以上もありますが、日本はイランから石油を輸入していません。一方、サウジアラビアとイラクの情勢が不安定になると、石油輸入が大打撃を受け、市場にあふれるマネーが流れ込み、激しいインフレが起こることが懸念されます。

 イエメンの内戦は、武器や軍事資金を援助しているサウジアラビアとイランの代理戦争です。米国は、バイデン政権がイエメン内戦の解決に向けて「ゴーサイン」を出したので、国連の特使も紛争解決に向けてイランを訪問しており、大きな進展があるでしょう。

 菅沼 米国は、対テロ作戦と称して戦争を起こし、イラクやアフガニスタンを弱体化しました。その結果、中東ではイランの勢力が急拡大しています。

 かつて安倍晋三前首相は秘書官として安倍晋太郎外務大臣のイラン訪問に同行したことがあり、最高指導者のハメネイ師との関係を築いていますが、中東の対立の複雑さは日本人の理解の範囲を超えるものがあり、結局イランと米国との仲裁はできませんでした。

(独)経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏
(独)経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏

 藤 米国は自国が支配できる世界秩序を保つため、イランが大帝国になるのを阻止すべく、イスラエルに力を付けさせて勢力を削ごうとしています。日本は中東で紛争が起こると石油の輸入が止まりダメージを受けますが、脱炭素政策で中東の原油に対する米国の関心がなくなると、中東との外交で日本が軽視される恐れがあります。

 菅沼 脱石油が進むと、石油資源のある中東は米国にとって外交上の重要性が下がるでしょう。

富の源泉は石油からデータへ

 浜田 21世紀は石油に代わって、データが富を生むと言われています。

アジア社会経済開発協力会会長・菅沼光弘氏
アジア社会経済開発協力会会長・菅沼光弘氏

 菅沼 1971年のニクソンショックで「紙切れ」になったドルが、その後も基軸通貨として信用されたのは、世界が石油代金をドルで支払っていたからです。ニクソンショックの後、キッシンジャー氏がサウジアラビアを急遽訪問し、安全保障を担保する代わりに石油をドル決済とすることを取り付けたのです。一方、サダム・フセイン大統領がイラク産の石油をユーロ決済にしようとしたときは、米国が基軸通貨ドルを守るべくイラクを軍事攻撃しました。石油に代わりにデータが富を生む時代になると、基軸通貨ドルの信用はどこから生まれるのでしょうか。

 藤 ドルの信用があるのは、米国が世界の警察官として各国に軍を展開していて、軍事費用がドルで支払われるからです。世界の主導権がイギリスから米国に移ったときも、基軸通貨がポンドからドルに変わったのはその50年後でした。通貨は保守的な性格をもっているため、中国が仮に覇権を握ったとしても、すぐに基軸通貨はドルから人民元になることはありません。人民元は資本取引が自由化されていないので、デジタル化しても換金可能な信用力の高いハードカレンシーにはならないと予想されます。

(つづく)

【石井 ゆかり】


<プロフィール>
浜田 和幸
(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

菅沼 光弘(すがぬま・みつひろ)
 アジア社会経済開発協力会会長。東京大学法学部卒業。1959年に公安調査庁入庁。入庁後すぐにドイツ・マインツ大学に留学、ドイツ連邦情報局(BND)に派遣され、対外情報機関の調査に携わる。帰国後、対外情報活動部門を中心に、元公安調査庁調査部第二部長として旧ソ連、北朝鮮、中国の情報分析に35年間従事。世界各国の情報機関との太いパイプをもつ、クライシス・マネジメントの日本における第一人者。主な著書に『この国を脅かす権力の正体』(徳間書店)、『日本人が知らない地政学が教えるこの国の針路』(KKベストセラーズ)、『ヤクザと妓生がつくった大韓民国』(ビジネス社)、『米中新冷戦時代のアジア新秩序』(三交社)など。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)
 (独)経済産業省経済産業研究所コンサルティング・フェロー。1960年生まれ、愛知県名古屋市出身。早稲田大学法学部卒。84年通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギーや通商、中小企業政策などの分野に携わる。2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、16年から現職。主な著書に『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』(PHP研究所)、『石油を読む―地政学的発想を超えて 』(日経文庫)、『原油暴落で変わる世界』(日本経済出版社)など。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年05月16日 06:00

『日本弓道について』(1)

 今年5月に弓道の写真集を出版した。父を師として、42歳から弓を始め、弓歴は30年を過ぎた。弓を初めた頃から30年かけて撮影してきた、名人といわれる先生、弓道大会、弓...

2021年05月16日 06:00

「パークサンリヤン大橋」耐震強度問題、仲盛氏による弁護士懲戒請求を解説(後)

 訴外の仲盛氏としては、不当・違法な訴訟行為を故意に実行したことを懲戒請求手続きで問い、当該弁護士の懲戒手続きにおける弁明書などの証拠を残して、次に民事賠償責任を問う...

2021年05月15日 15:41

力の源 HD へ麻生が資本注入

 (株)力の源ホールディングス(東証一部)は 14 日、(株)麻生(飯塚市)へ第三者割当増資を行うことを発表した。調達額は約 16 億円。割当日は 31 日を予定している。

2021年05月15日 06:00

【5/30】国際政治経済学者・浜田和幸氏のZOOM 講演会「ポスト・コロナ時代をたくましく生き抜くヒント」

 メルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者・浜田和幸氏がZoomによる講演会を開催する...

2021年05月15日 06:00

「パークサンリヤン大橋」耐震強度問題、仲盛氏による弁護士懲戒請求を解説(中)

 被告の準備書面で、訴外である仲盛昭二氏の公的資格が争点になること自体、まるで子どもの口げんかのレベルといえる。専門的な言い方をすれば、「争点とは関連性がない」わけで...

2021年05月14日 17:29

西武HD、723億円の赤字~ホテル売却を検討

 西武ホールディングス(HD)は13日、2021年3月期連結決算を発表した。営業収益は前期比39.2%減の3,370億6,100万円、営業損益が515億8,700万円...

2021年05月14日 17:18

【山口FG】続々と内部告発届く 必聴!「社歌」音源付告発状

 「山口FGの吉村猛会長に対する「内部告発状」を検証する」 を読んだ山口FGの元社員から、残念ながらお蔵入りとなってしまったという「社歌候補」の音源が送られてきた...

橋下維新勢力の黒い背景

 東京都の小池百合子都知事にさまざまな問題があることは事実としても、いま、東京五輪を中止するという重大案件に小池百合子氏の貢献余地があるなら、その力を活用することは悪...

「イーロン・マスク氏が先導役を務めるAIビジネスの未来」(前)

 世界中がコロナ騒動で揺れ動いているが、コロナ禍を逆手に取るような人体の能力向上研究が進んでいることは間違いない。コロナ騒ぎが収束した暁には、これまでと違った世界が広...

pagetop