わらび座ミュージカル「北斎マンガ」特設ページ
【八ッ場ダムを考える】八ッ場ダムと川辺川ダムは何が違ったのか?(前)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年03月10日 07:00

【八ッ場ダムを考える】八ッ場ダムと川辺川ダムは何が違ったのか?(前)

共通点は工事ストップ

 国土交通省ではかつて、八ッ場ダムと川辺川ダムを「東の八ッ場、西の川辺」と並び称していた時期があった。いずれのダムも、地元住民の反対などにより、数十年かかっても建設事業が前に進まなかったからだといわれる。ダムの規模が似ていることもさることながら、2009年の民主党政権誕生にともない、ダム事業の検証のため、本体工事がストップしたこと、当時7割ほど事業が進んでいたことも共通している。

最大の違いは県知事

※いずれも国交省資料を基に作成
※いずれも国交省資料を基に作成

 当然違いもある。まず違うのは流域の規模だ。流域面積を見ると、利根川が1万6,840km2なのに対し、球磨川が1,880 km2と9倍近い開きがある。流域人口に至っては、利根川の約1,300万人に対し、球磨川が約14万人、その差は90倍以上に上るなど、比べものにならない違いだ。

 ダムの目的も異なる。八ッ場ダムが治水、利水、発電などを担う特定多目的ダムなのに対し、川辺川ダムは、当初は多目的ダムとしてスタートしたものの、利水事業者が相次いで撤退し、2000年代後半には事実上、治水専用ダムとなっていた。八ッ場ダムには6都県などの共同事業者としての利水受益者が存在したが、川辺川ダムには存在しなかった。存在したのは、ダム立地県であり、治水受益者である熊本県だけだった。

 最大の違いは、やはりダムが立地する県知事の立場、態度だろう。八ッ場ダムは群馬県、川辺川ダムは熊本県だが、群馬県はダム賛成、熊本県はダム反対(計画を白紙撤回)の立場をとった。いずれもダムの有効性などに関する検討が行われ、ダム建設継続が最も有力と評価されていたが、異なる判断が下された。熊本県知事が下した判断の是非についてはもう論じないが、有識者の意見よりも流域首長や住民の意見を尊重したと考えて差し支えない。不思議なのは、八ッ場ダムは最初から国主導で建設が進められたのに対し、川辺川ダムは熊本県が要望して建設がスタートした経緯があるにもかかわらず、群馬県がダムに賛成し、熊本県が反対している点だ。スジ論でいけば、ダムに反対する資格があるのは、むしろ群馬県のほうだろうと思われる。

住民はダム事業継続を求めた

 ここで注意を促しておきたいのは、09年にダム本体工事にストップがかかった際、水没自治体である長野原町(八ッ場ダム)、五木村(川辺川ダム)では、いずれもダム建設継続を望んでいたという事実だ。もちろん住民のなかには筋金入りの反対論者はいるが、自治体、住民の多くは事業継続を求めた。その理由としては、すでにダム建設に合意していたこと、生活再建関連の工事がある程度前に進んでいたこと、ダムができる前提で生活設計を立てていたことなどが挙げられる。

 住民がダム事業継続を望んでいたのは事実だが、それはダム建設に前のめりになっていたことを意味するものではない。多くの住民にとって、「ダムをつくるかどうかわからない」という状況が続くことが、精神的に一番キツイ。ダムはないほうが良いに決まっているが、現実問題として、今さらダムをなかった話にすることは難しい。仕方がないので、とりあえず事業継続を求めたというのが実際のところだろう。

(つづく)

【大石 恭正】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年05月05日 08:00

コロナ拡大後に「自宅で食事を食べる回数」が増えた人は35.5%~農水省の調査

 農林水産省がこのほど公表した2020年度「食育に関する意識調査」結果から、新型コロナウイルス感染症の拡大前と変化した点について、「自宅で食事を食べる回数」の増加を挙...

2021年05月05日 08:00

西鉄「パークサンリヤン大橋」耐震強度問題~仲盛昭二氏、弁護士懲戒請求を提出!(7)

 前回に続き、原告側弁護士からの質問に対する仲盛氏の回答を以下に紹介する...

2021年05月05日 07:00

【特別対談】ピエトロ新工場を起点に、賑わい&活力を古賀市全域へ――(前)

 『当社では現在、古賀市の食品加工団地内に3つの工場を構え、ここですべての製品の製造を行っています。一番新しい第三工場は昨年竣工したばかりなのでまだ大丈夫ですが、第一...

2021年05月05日 07:00

【熊本】城下町の面影残す中心市街地、九州第3位・熊本市の今昔――(4)

 1891年7月には、九州鉄道の高瀬(現・玉名駅)~春日(現・熊本駅)間が開通。このとき、植木駅、池田駅(現・上熊本駅)も同時に開業している。当初の計画では、中心地に...

2021年05月04日 08:00

九大と丸紅、医療・ヘルスケア分野などで協定締結

 九州大学と丸紅(株)は「医療・ヘルスケア」「新技術・新素材」などの分野で「連携・協力の推進に関する基本協定書」を締結した...

2021年05月04日 08:00

西鉄「パークサンリヤン大橋」耐震強度問題~仲盛昭二氏、弁護士懲戒請求を提出!(6)

 前回に続き、原告側弁護士からの質問に対する仲盛氏の回答を以下に紹介する...

2021年05月04日 07:00

「業界の安売り体質を変えたい」社員がリードする関家具経営の心得(後)

 『家で過ごす時間が増え、家具と向き合う時間も増えたのだと思います。家具の新調需要などを受け、売上は堅調に伸びています。大川本店で実施した「新春プレミアムベッドフェア...

2021年05月04日 07:00

【熊本】産官学で総力を挙げて「新しい熊本を創る」(後)

 『コロナ禍で市中心部の繁華街でも空き店舗が目立つようになり、老舗ホテルや老舗アパレル店も閉業するなど、熊本市内にはやや疲弊感や閉塞感が漂っています...

2021年05月03日 08:00

香椎テイクアウト専門店で大人気 「フルーツサンドmori」博多マルイに期間限定オープン

 福岡市東区香椎の飲食店のテイクアウト商品が集まる「香椎テイクアウトステーション」で人気のフルーツサンド「フルーツサンドmori」が博多マルイに初めて出店している。5...

2021年05月03日 07:00

「業界の安売り体質を変えたい」社員がリードする関家具経営の心得(前)

 『みやき町では「女子サッカーのまち宣言」を行うなど、幅広くまちづくりに取り組まれており、元気のある自治体という印象をもっていました。そうしたなかで、昨年秋ごろにみや...

pagetop