2024年03月29日( 金 )

地元になくてはならない銀行となり「共通価値の創造」を実現させる

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(株)豊和銀行 代表取締役頭取 権藤 淳 氏

 一昨年に70周年を迎え、大分県内を中心に42店舗を展開する(株)豊和銀行。中小企業や個人の顧客の成長と発展を支え、サステナビリティを高めることを目的とした販路開拓支援業務「Vサポート」で地元大分の発展に寄与する同行に、大分市の現状とこれからについて聞いた。

顧客に頼られる金融機関を目指して

 ――これまで地元金融機関として、大分市とはどのように関わってこられましたか。

(株)豊和銀行 代表取締役頭取
権藤 淳 氏

 権藤 現在、大分県および県内16市町(姫島村を除く)と連携協定を結んでおり、地域ごとの行事や会議などに積極的に参加させていただいています。私たちは、常に大分県の経済や社会をどう活性化させようかということを念頭に置いておりますので、大分市に限らず、それぞれの市町が行う取り組みには常に関心をもっています。

 大分市では、大分駅の南側にある大分市の複合文化交流施設「ホルトホール大分」の1階に、ご相談業務を中心とした専門店舗「ほうわホルトホールプラザ」を開設しています。現金の取り扱いはありませんが、住宅ローン・教育ローン・マイカーローンなどの各種ローン相談から、資産運用相談、相続・年金相談、保険相談、創業支援・事業承継・経営改善に至るまで最適なソリューションをご提案する経営サポート業務など、地元のお客さまの金融に関する疑問やお悩みを解決する場としてご活用いただいています。

 ――「JRおおいたシティ」の開業以降、大分駅前の風景は一変しました。市内の再開発などは大分県内でも見られますが、やはり一番活発なのは大分市でしょうか。

 権藤 そうですね。昔と比べると駅周辺は大きく変わり、勢いがあると思います。府内中央口(北口)周辺は大分市街地の中心部で、百貨店などの商業施設や商店街、大分県庁などの行政機関、金融機関も多く立ち並んでいます。

 一方で、上野の森口(南口)周辺には先ほどのホルトホール大分をはじめ、大分市美術館などの公共施設、高校や専門学校などの教育機関のほか、閑静な街並みが広がっています。再開発によって、これまで鉄道によって分断されていた南側エリアのアクセスは良くなり、多くのマンションが好調に売れているようです。周辺に住民も増えたことで、昔の寂しい雰囲気というのはなくなりましたね。ある意味、大分市は県内における“ミニ東京”のような一極集中型になってきていると思います。

「ほうわホルトホールプラザ」外観
「ほうわホルトホールプラザ」外観

 ――そう捉えると、大分市はまだポテンシャルを秘めているということですね。

 権藤 ポテンシャルは非常に高いと思います。しかし現状を申せば、大分市の人口は10年前に比べると微増しているのですが、それは周辺の郡部から引き寄せているにすぎません。さらに県外から人を誘引できるようになれば、大分県全体の発展にもつながっていくはずです。そのためにも、大分市には今後、県都としてさらにリーダーシップを発揮し、「大分らしさ」を打ち出してもらいたいと期待しています。

 観光業でいえば、九州全体を見据えて大分ブランドの魅力を発信し、福岡をはじめとした九州の人々に訴求していくことが大事だと思います。また、関東や関西、さらにはインバウンドをターゲットに九州各県との連携を密にし、本当の意味での「九州は1つ」を実現させなければならないでしょう。各県独自の取り組みではなく、九州を1つのコンテンツとして、それぞれの県が連携することで、活性化を図るべきと考えています。

顧客同士をつなぎ、新たなビジネスを創出

 ――地域活性化の支援のために、どのような取り組みをされているのでしょうか。

 権藤 今は新型コロナウイルスの影響で大変厳しい状況が続いていますが、販路開拓支援業務(=本業支援)を通じてお客さまの売上増加を図る「Vサポート」と、経営改善支援を必要とする地元の中小企業のお客さまに対して、経営改善計画の策定と円滑な資金供給を行う「経営改善応援ファンド」に力を入れています。

 ――「Vサポート」はいつスタートされたのですか。

豊和銀行本店
豊和銀行本店

 権藤 2016年11月にスタートしました。「Vサポート」はお客さまの業種やビジネスモデル、取扱商品・サービスの内容、強み・弱みを把握・分析し、お客さまの事業に対する理解を深めたうえで、それらの情報を専用データベースに登録します。その情報を全店の行員が共有し、新たな販売見込先を選定します。そしてその後、商談を設定し、売上入金が確認されるまでお客さまを徹底サポートしていくというものです。

 以前、津久見市内の給食センターが台風による水害に遭った際に、ある弁当屋さんに給食の代わりを提供できないかとお願いしました。普通なら給食センターの補修が終わればその両者の関係はそこで終わります。しかしその弁当屋さんの技術があれば、その他のまちの幼稚園や保育園にも給食提供できるのではないかと私たちは考えました。

 さまざまな規制があり、調理済みの食事を提供できない園もあったのですが、アイデアを重ね、調理前の生の食材と調理用のレシピを提供するという、新たなビジネスモデルを誕生させました。お弁当屋さんにとっては仕事が増え、園にとっては管理栄養士さんの食材購入や献立を考えるという労力が低減でき、Win-Winの関係を築くサポートができたと思います。

 ――単純に顧客をつなぐ、ということだけではないのですね。

 権藤 つないだ先に生まれた問題も深掘りして解決していこうというのが、私たちの取り組みの考え方です。その結果として、新たなビジネスも生まれる。いずれにせよ、中小企業の方々の商流を拡大し、雇用を守り、社員の方々の生活水準の向上に寄与できれば、その結果として、私たちの収益にもつながっていきます。それこそが“共通価値の創造”なのです。お互いがサステナブルになっていかなければ、これからの時代は生き残っていけません。

 これは大分市に限らず、すべての地方都市にいえることですが、地元の中小企業が元気にならなければ、地域経済は活性化されません。今後も私たちは「地元大分になくてはならない銀行」として、地元の方々がいかにハッピーになれるかを第一に考えていきたいと思います。

【文・内山義之/構成・藤谷慎吾】


<プロフィール>
権藤  淳
(ごんどう・あつし)
1952年4月生まれ。東京大学法学部を卒業後、76年に三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。2002年に(株)ジェーシービーに入社し、06年に取締役に就任。09年5月に豊和銀行に入行し、同年6月には代表取締役専務に就任。12年6月に、代表取締役頭取に就任した。

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