2024年04月19日( 金 )

【マンション管理を考える】「吉」と出るか?神戸市タワマン規制(後)

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 神戸市は2020年7月、市中心部に当たる三宮駅周辺でのいわゆるタワマンの立地に規制をかける改正条例を施行した。規制緩和によって誕生したタワマンに対して再び規制をかけるという点で、画期的な試みだったが、不動産関係者などから「時代に逆行するものだ」と批判の声が挙がるなど、波乱含みのなかでのスタートとなった。タワマン規制施行から半年を経て、どのような動きがあったのか。市担当者に取材した。

規制の効果は現状「なし」

 先の条例公布1年後の20年7月、一部改正条例が施行された。神戸市のタワマン規制をめぐっては、すでに横浜市で導入事例があったにもかかわらず、条例公布以降、「市の人口減少が続くなか、タワマン規制は悪手。時代に逆行し神戸を衰退させるだけだ」「タワマンを規制しても、オフィスや商業施設を誘致できるとは限らない」など、市内外から批判する声が挙がった。

 とくにタワマンを手がけるデベロッパーからは、市に対し「困惑まじりの問い合わせが相次いだ」(同)という。デベロッパーにしてみれば、タワマンを庶民憧れの物件としてプロモーションし続けてきたところであり、立地する自治体から感謝されこそすれ、規制されるとは思ってもいなかっただろう。デベロッパーをはじめとする利害関係者の思いが一部メディアを通じて、反対意見として世間に噴き上がったと見て差し支えないだろう。

 気になるのは、それだけ批判的な声が集まった今回の規制が、施行後、実際にどう働いたかだが、結論からいえば、施行後半年の段階では「目に見える効果はまだ見えていない」(同)ということになる。

 施行後、規制エリア内でのオフィスや商業施設の新たな立地はゼロ。施行後まだ日が浅いということもあるし、施行がコロナ禍の真っ最中だったことも少なからず影響しているとしても、肩透かし感が否めない状況だ。これは市担当者にもあるようで、「今回の政策(タワマン規制)が吉と出るか凶と出るか。効果を出したいという思いはあるが、今のところは何ともいえない」と歯切れが悪い。

コロナ禍、まちづくりへの影響

 1997年の建築基準法改正にともなう「規制緩和」をきっかけに、東京や大阪を中心に建設ラッシュが始まったタワマン。自治体経営を考えるうえで、「人口増」は絶対的な正義だった。それは現在も基本的には変わらないが、特定エリアへの一極集中は、鉄道や小学校などのインフラのキャパ不足やコミュニティの崩壊といった悪影響を招くことが明らかになってきた。そこで、タワマン規制に乗り出す自治体がポツポツと出始めた。

 自治体による「規制強化」は今後のトレンドとなり得るのか。平たくいえば、「まちの中心にタワマンは不要なのか」を検証したいというのが、今回の取材の狙いだった。ところが、あいにく取材のアテは外れた。今回の取材自体が勇み足だったわけだ。市長の肝いりで実施したタワマン規制が空振りしたまま有名無実化するとは考えにくいが、コロナにともなう経済の冷え込みを考えれば、目に見える成果が上がるのは、かなり先のことになりそうだ。

 三宮駅周辺では「えきまち空間」のコンセプトに基づき、ウォーカブルなまちづくりを目指した再整備が進められている。こちらでも、コロナの影響によって、新たなJR駅ビルの都市計画決定に遅れが出ている。神戸三宮のまちづくりは今後どうなるのか。タワマン規制をめぐる動きを含め、その行方を引き続き追っていきたい。

三宮駅周辺(写真:神戸観光局)
三宮駅周辺(写真:神戸観光局)

(了)

【フリーランスライター・大石 恭正】

(中)

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