2024年03月28日( 木 )

九州最大級の物流施設、筑紫野ICそばに23年初め完成(後)

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 2020年11月、Mapletree Investments Japan(株)が福岡県筑紫野市に大型のマルチテナント型物流施設「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」を開発する計画を正式に発表した。同社は、シンガポールに本社を置く総合不動産会社Mapletree Investments Pte Ltd(以下、メープルツリー)の日本法人。メープルツリーは、約5兆円(20年3月末日時点)の資産を運用する業界のリーディングカンパニーの1社だ。九州最大規模となる「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」について、日本法人代表取締役CEO・名村真人氏に話を聞くとともに、筑紫野市の政策について取材した。

メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター計画地
メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター計画地

筑紫野市で計画される、九州最大級の物流施設

 23年初めから24年春にかけて完成予定の「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」は、九州自動車道・筑紫野ICから西に約1kmに位置し、地上4階建ての物流施設2棟(敷地面積11万6,319m2、2棟の総床面積23万2,161m2)で構成され、総投資額は約430億円。完成すれば、九州最大級の物流施設となる。ダブルランプウェイ方式を採用することでトラックの出入りをスムーズにし、運搬のストレスを軽減するなどの工夫が図られた施設となる予定だ。1棟目は23年初旬、2棟目は24年春頃の完成を予定しており、施工業者は入札で決定するというが、入札の時期などは非公表。

日本法人 代表取締役CEO 名村 真人 氏
日本法人 代表取締役CEO 名村 真人 氏

 メープルツリーにとっては九州初上陸の物件となるが、「東アジアに近い福岡は、九州の玄関口でもあり、進出は必須だった」とMapletree Investments Japan 代表取締役CEOの名村真人氏は話す。日本では、大都市近郊に拠点を設けていく予定とのことだが、顧客ターゲット層(テナント)や交通アクセス、周辺人口などを鑑み、九州第1弾は福岡・筑紫野市となったようだ。テナントは、自動車や通販関連業者のほかサード・パーティー・ロジスティクスを想定しているが、将来的には「九州各地に偏在している業種、企業などの集合地帯になってくれば」(名村氏)と期待を寄せる。

地域経済活性化へ 雇用創出にも期待

 筑紫野市にある日本たばこ産業(株)の九州工場が22年3月末で閉鎖という発表がされるなか、九州最大級の物流施設「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」は、新たな雇用を生み出すとともに、地域経済活性化への大きな一歩になるとの期待の声が高まっている。「雇用はあくまでもセンターを活用するお客さまが直接生み出すもの」(名村氏)としつつも、筑紫野市のみならず九州の物流業界において重要な役割を担うのではないかと自信をのぞかせる。

メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター(イメージパース)
メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター
(イメージパース)

 「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」が立地するエリアは、筑紫野市の都市計画マスタープランにおいて、大規模な流通業務施設として土地利用を図る区域と位置づけられており、06年5月に22haの開発許可、07年8月に地区計画の決定がなされていた。14年2月には、流通団地としてより一層の発展を図るため、西側に隣接する18haを区域に含める地区計画の変更が行われた。さらに、17年12月には西側に隣接する約4.9haを新たに地区計画の区域に含める、地区計画の変更が行われた。流通業務施設の拠点としての土地利用を誘導していくため、2回目の拡張となった。なお東側では、13年6月に100円ショップ・ダイソーを展開する(株)大創産業が九州RDC(延床面積約4万5,000m2)を開業させている。

 筑紫野市は企業誘致に力を入れており、市内で新たに事業所などを新設、増設または移設し、設備投資額などの要件を満たす場合は、筑紫野市企業立地促進条例に基づき、2つの優遇措置を適用している。1つは、固定資産税の課税免除。事業所の新設にともない取得または移設した固定資産に対して課税する固定資産税について、操業の翌年度以後3年間分を課税免除する。もう1つは、筑紫野市民を常時雇用した場合、1人あたり20万円(上限1,000万円)の補助金を交付するというもの。

  

 江戸期の筑紫野市域は、九州最大の幹道といわれた長崎街道や日田街道、薩摩街道の3つの街道が通っており、これらの街道には山家宿、原田宿、二日市宿の3つの宿駅が置かれていた。1889年には、私設鉄道の九州鉄道会社が開業し、博多~久留米間において、最初に二日市、次に原田駅の2つの停留所が設けられた。現在も、JR鹿児島本線、西鉄天神大牟田線、九州自動車道、国道3号線、主要地方道や一般県道などが通っており、広域的な交通基盤が形成されている。

 このように筑紫野市は、古くから交通の要衝として、文化・経済の結節点であり続けた。「メープルツリーの物流施設新設は、さらなる企業誘致のほか、九州最大規模という宣伝効果や雇用創出面でも期待できるのでは」と市職員は話す。新規供給が少なかったこともあり、九州、とくに福岡市近郊では物流施設の受給が逼迫しているが、九州最大級のマルチテナント型物流施設が筑紫野市に完成することで、九州の不動産マーケットにどのような影響を与えるのか、注目を集めている。

(了)

【麓 由哉/内山 義之】


<COMPANY INFORMATION>
Mapletree Investments Japan(株)

代 表:名村 真人
所在地:東京都品川区南大井6-21-12
設 立:2007年7月
資本金:2億円
売上高:(20/3)14億円

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