2024年04月26日( 金 )

「業界の安売り体質を変えたい」社員がリードする関家具経営の心得(後)

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(株)関家具 代表取締役 関 文彦 氏

コロナ禍でも増収黒字経営

 ――創業以来赤字なしの経営を続けておられますが、今期におけるコロナ禍の影響はいかがですか。

(株)関家具 代表取締役 関 文彦 氏
(株)関家具 代表取締役 関 文彦 氏

 関 家で過ごす時間が増え、家具と向き合う時間も増えたのだと思います。家具の新調需要などを受け、売上は堅調に伸びています。大川本店で実施した「新春プレミアムベッドフェア」は好評を博し、期間を延長したほどです。また、eスポーツ用のデスクとチェアの売れ行きは目を見張るものがあります。販売自体は1年ほど前から始めていたのですが、コロナ禍で急速に売上が伸びた印象です。おかげさまで、今期の売上高は190億円を超える見込みです。

 ――オフィス関連の業務用家具はいかがでしょうか。

 関 オフィス環境の変化が進み、オープンスペースが増え、コミュニケーションが取りやすくなった反面、落ち着いて商談や会議ができる場所が減っています。重要な案件など、聞かれたくない話があるときに、フォーンブース「Kolo(コロ)」が重宝されます。オプションでチェアやテーブルもありますので、業務に集中したい方向けの作業場としても使用可能です。

『Kolo』:最大4名入れる「Duo(デュオ)」(左)から、1人用の「Solo(ソロ)」(右)まで取りそろえる
『Kolo』:最大4名入れる「Duo(デュオ)」(左)から、1人用の「Solo(ソロ)」(右)まで取りそろえる

 ――「家具」と聞いて連想される製品以外も幅広く取り扱う御社ですが、やはり木へのこだわりを強く感じます。元日に発表された1億1,500万円の一枚板テーブルに驚かされました。

神代欅の一枚板テーブル:販売価格は1億1,500万円(税別)
神代欅の一枚板テーブル:販売価格は1億1,500万円(税別)

 関 西暦50~133年ごろの神代欅(じんだいけやき)を使用した1億1,500万円の一枚板テーブルは、製作に5年を費やしており、品質、価格ともに最高峰の一品です。

 木が大好きだからこそ、木材の価値が適正に判断されていない状況に悔しさを覚えていました。そこで、思い切って価格を上げることにしたのです。販売する木製製品の平均価格がどんなに高くとも20~30万円だったころに、私たちは1,500万円の製品をつくり、販売しました。これが自信につながりました。それまで100万円の製品を販売して万々歳だったのが、目立たなくなるのです。そして、今は1億1,500万円の神代欅の一枚板テーブルを販売中です。

 業界で続く安売り体質を変えたい。価値に見合った価格で販売することで、木工業者はもちろん、山で働く林業関係者にまで、利益が循環するようにしたいのです。

 ――大川は家具のまちとして有名ですが、御社のようにシェアを拡大し続けられている企業は稀です。ズバリ違いはどこにあると考えられますか。

 関 日清食品グループには「カップヌードル」「どん兵衛」など、複数の人気ブランドがあります。そうすると、ブランド間で切磋琢磨し、さらに成長していく。当社でも、この好循環を生み出したいと考えています。

 たとえば、当社にはカフェ、レストランからホテルまで、幅広く内装設計、インテリア・空間デザイン設計を手がけ、施工まで全部ワンストップで行うスペースデザイン事業部があります。このほか、新しい事業の“種”を見つけてくるシード事業部や、オフィス事業部などもあり、各事業部が互いに刺激し合って活動しています。そして、各事業部は社員主導で動いています。社員を信用することが、最も大切です。

 ――仕事を任せてもらえるということは、やりがいにもつながります。現在、御社は何名体制で事業展開されておられるのですか。

 関 パートタイムの方まで含めると525名になります。高卒採用や外国人技能実習生の受け入れも行っており、社員の平均年齢は32歳。大川で働く木工業者の平均年齢が58歳と考えると、組織としての新陳代謝は促進されており、アイデアも活発に出てきています。

 ――大川を拠点にさまざまな取り組みを行う姿勢は高い評価を受け、「地域未来牽引企業」にも選定されました。

 関 地域未来牽引企業に選定され、経済産業大臣から表彰状を受けたことで、これからも家具で地域や、ひいては日本を元気にできるよう全力で取り組んでいかなければと気持ちを新たにしました。

 当社の主役は、あくまで社員。社員にはいつも「関家具の基盤を活用して思いっきりやってください」といっています。楽しくなければ仕事じゃない。やりたいことがあるというのなら、一切を社員に任せ、失敗しても責任は代表である私が取る。実際に行うのは難しいことですが、これを徹底してきて、今があります。

 私が社員に厳しく口を出すことがあるとすれば、それはケガにつながるような危険なことをしたときか、人に危害を加えたときです。

誰よりも働き、生涯現役を貫く

 ――コロナ禍が長期化していますが、今後何か変えようという動きはありますか。

関家具によるオフィス空間の提案例
関家具によるオフィス空間の提案例

 関 当社は直接家具を見たい、触れたいという顧客のために、ショールームを設置しています。これはBtoCへの対応で、BtoBの事業ではもうだいぶ前から顧客とのやり取りがメールなどの非対面で完結するようになっており、これから大きく業務の進め方が変わるということはないと思います。BtoCに関しても、オンラインでの購入は増えていますが、やはり先ほど述べたように、「実際に見てみたい」「使い心地を確認したい」という顧客は少なくないため、ショールームがなくなるということはないでしょう。また、実店舗があるというのは、顧客にとって安心感につながると思います。

 ――関代表がこれまで事業を継続されてきて、ピンチを感じたことはございますか。

 関 代表として365日ハードワーク、年中無休の覚悟をもって働いてきましたが、ピンチと感じたことはありません。たとえピンチを前にしても、「何とかなる」「ピンチはチャンス」だと自分に言い聞かせ、これまでやってきました。「関家具経営の心得」第2条にも『棺桶に片足を突っ込み、後の片足を突っ込む寸前まで火の玉の様に生きる』と記しました。その結果が、創業54年目を迎え、1期も赤字なし経営の実現です。

 コロナ禍で、改めて仕事を続けられること、生きていられることのありがたさを感じました。朝起きて、今日はアレとアレを消化してと1日の計画を立てていると、自分にはまだまだやりたいことがいっぱいあるのだと気付かされます。目標の1つである売上高1,800億円の達成は、これまでに蓄積してきた人材、資金、情報が、新たな人脈、金脈を構築し、必要な土壌ができ上がりつつあります。目標の達成に向けて、これからも生涯現役で、火の玉のように生きていきます。

(了)

【聞き手:内山 義之/文:代 源太朗】


<プロフィール>
1942年4月、大川市出身。家具屋に勤めながら68年に福岡大学商学部を卒業後、家具卸の関家具を個人創業。82年11月に(株)関家具として法人化した。


<COMPANY INFORMATION>
(株) 関家具

代 表:関 文彦
所在地:福岡県大川市幡保201-1
創 業:1968年
設 立:1982年11月
資本金:1億4,000万円
URL:https://www.sekikagu.co.jp

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