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2021年04月30日 13:19

スカイマークの展望

運輸評論家 堀内 重人 氏

 スカイマークの佐山展生取締役会長が、4月20日付で退任した。加えて佐山氏は、スカイマークの筆頭株主の投資ファンド・インテグラル(株)の代表取締役も、4月21日付で退任している。スカイマークの後任の会長には、インテグラルの山本礼二郎代表取締役が就任したが、洞駿代表取締役社長らほかの役員の体制に変更はない。山本氏は、2015年9月からスカイマークの顧問を務めていた。

スカイマーク イメージ   スカイマークは、身の丈に合わない巨額の設備投資などで経営が悪化して、2015年1月28日に民事再生法の適用を受けるかかたちたちで経営破綻した。経営破綻の理由として、「A330」という機材のリース料の負担が円安の影響で増大したことや、発注していた「A380」という機材の契約解除にともなう7億ドルの違約金の存在を挙げ、JALやANAなど同業大手からの出資については、「第三極」の立場から否定していた。

 加えて、前社長であった「西久保愼一氏のワンマン体制という企業文化にも問題があったのでは」という指摘もある。スカイマークは、航空事業で日銭が入ることもあり、メインバンクをもっていなかったが、西久保氏が第三者割当増資や個人融資を引き受けることで経営が継続されていた。

 スカイマーク自身も、「当社はLCCではない」と公言しており、A380という超大型の4発式の2階建てのジャンボジェット機を導入し、東京からロンドン、ニューヨーク、フランクフルトを結ぶ路線を開設し、ビジネスクラスなどの上級クラスを中心とした、コンフィギュレーション(機内の客室の仕様)として運航を計画するなど、後発の航空会社やLCCのビジネスモデルとは、あまりにも乖離したビジネスモデルであった。

 筆者自身も、この時点でスカイマークの将来に対して、「大丈夫か」という危機感を覚えており、『新幹線VS航空機』(東京堂出版刊、12年3月)で、その旨を指摘していた。世界一のドル箱路線である羽田~新千歳線にA330というワイドボディー機の導入や、“シグナスクラス”という上級クラスの設定程度に、留めるべきだったと考えている。

 佐山会長は、会社を再建する際に出身のインテグラルだけでなく、ANAホールディングスなどからも出資を受けるための陣頭指揮を執り、業績を回復させた。そこで再度、19年度に株式の上場という目標を掲げていた。

 しかし、コロナ禍に見舞われ、旅客需要が急激に落ち込んだことから、20年までの再上場という目標は果たせなかった。航空需要の低迷が続くなか、経営陣はコスト削減や運転資金の確保、財務体質の改善などが急務になる。

 スカイマークは20年12月に、資本金を90億円から1億円に減資している。JALやANAは、第三者に割り増し増資を実施できたが、後発のスカイマークは経営基盤が脆弱なこともあり、資本金を取り崩すことで剰余金の欠損を補てんする。

 減資の実施はスカイマークだけに限らず、20年4~9月期に782億円の最終赤字となったJTBも実施している。国内店舗の25%を閉鎖し、早期退職や自然減で6,500人の人員を削減するだけでなく、税制上の優遇を得るために減資も行い、23億400万円の資本金を1億円として、“中小企業”になる。

 中小企業となることで、法人事業税の一種である外形標準課税が免除される。04年に導入された外形標準課税は、赤字企業に対しても一定の税負担を求める仕組みであるが、資本金が1億円以下の中小企業は、支払いが免除される。

 この制度が導入されて以降、減資して外形標準課税を免れることが、節税の手段になるという矛盾が生じるようになった。これはシャープという大企業であっても、1,200億円超の資本金を、1億円に減資することを経営再建案に盛り込もうとしたほどである。 

 コロナ禍では、外食や航空、旅行などの業界が大打撃を受け、未曽有の危機下で雇用を守り、企業を維持するうえでやむを得ない一面もあるが、税制のゆがみも浮き彫りになっており、コロナ後には何らかの歯止めが必要である。

 スカイマークの2021年3月期の決算は、例年6月に公表されるが、現時点の見通しでは、300億円程度の営業赤字になる見通しである。同社の20年3月期末の純資産は216億円であり、仮に最終損益として300億円の赤字をそのまま計上すると、バランスシートの上で80億円程度の債務超過に陥る。これはスカイマークにとって、15年に経営破綻して以来の重大局面といえる。

 スカイマークは、債務超過を回避するため、実質的な税金の前払い分を資産に計上する「繰り延べ税金資産」として、21年3月期に100億円を超える金額を積むことで、最終赤字を150億円程度に圧縮する方針である。

 今期発生した大幅な赤字は、今後見通せる利益と相殺し、将来の税の支払額を減らす効果を生む。税金や会計に関する法律上の問題はないが、「繰り延べ税金資産」は、将来の利益に期待するため、予想通りの結果が実現するか否かは不透明である。

 民事再生法の手続の終結後のスカイマークであるが、「定時運航率」と「顧客満足度の向上」という基本に立ち返った企業戦略に注力している。18年に定時運航率1位を獲得して以来、3年連続で1位である。また20年1月には、英国OAG社が実施した、19年における世界の航空会社の定時運航率のランキングに関する調査では、世界で3位であることが発表された。さらに20年11月には、(公財)日本生産性本部が実施した顧客満足度指数調査による顧客満足度では、国内航空会社では1位であることが発表された。

 筆者自身も、何度もスカイマークを利用しており、定時運航率が高い上、機内サービスも悪くないと感じている。「機内でドリンク類を販売している」とはいえ、市場価格と同程度であり、これで儲けようという考えではなく、その分を乗客に負担してもらうという考えである。

 一方、スカイマークは、利益が出ないとすぐに撤退していたため、筆者自身が利用しようとするときに「まだ路線があるのか」と気にしてしまう。

 「定時運航率」「顧客満足度」という基本的なサービスがしっかりとできているため、コロナ後には、筆者は需要が回復すると考えている。その際は、拠点空港である神戸空港からの路線に重点を置き、「地域とともに発展する」という姿勢を明確化してほしいと考えている。また、他社との差別化を図るため、かつて設定していた“シグナルクラス”という上級クラスの復活と国際チャーター便の運航を提案したい。

 現時点では、国際旅客輸送は壊滅的な状況に追いやられているが、24~25年ごろになれば、コロナ以前の状況に回復することが予想される。神戸~ソウル、神戸~台北、神戸~香港などは、需要が期待できる路線である。その際は、ビジネスクラスの需要も期待できることもあり、ビジネスクラスを国内線で復活させ、ノウハウを取得する必要を感じている。

 スカイマークの将来に関しては、決して悲観的ではなく、コロナ禍であっても貨物輸送に関しては、大きな落ち込みがないことから、ベリー(旅客機の貨物室)の部分などを活用して、貨物の営業に力を入れ、少しでも増収に力を入れて欲しい。その取り組みがコロナ後に、大きな花を咲かせると期待している。

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