2024年04月20日( 土 )

内装業界に風穴を開ける 自ら動きアイデアを生むクリエイティブ集団

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クレアプランニング(株) 代表取締役社長 中田 泰平 氏

 有名企業のブランド戦略を牽引するクリエイティブディレクター・佐藤可士和氏の個展や、飲食施設「大濠テラス 八女茶と日本庭園と。」などを手がけるクレアプランニング(株)。内装工事の施工だけでなくプランニングから携わり、その洗練された企画とデザインは注目を集めている。同社が内装工事業者の枠を飛び越えて進化を遂げた経緯と今後の展望について、代表取締役社長・中田泰平氏に話を聞いた。

「当たり前でないこと」により付加価値が生まれる

 ――内装工事だけでなく、プランニングから携わるようになった経緯をお聞かせください。

クレアプランニング(株) 代表取締役社長 中田 泰平 氏
クレアプランニング(株)
代表取締役社長 中田 泰平 氏

 中田泰平氏(以下、中田) 内装業界は、工事を受注したい会社がそれぞれ条件を提示する合見積もりが一般的で、先代社長のころは当社もそうしていました。その時代は建設需要も多く、技術力と各業者とのネットワーク構築に磨きをかけることが求められていたので、それを生業にすることに問題はありませんでしたが、「これは一生続くものではないな」と考えていました。リーマン・ショック以降、建設不況という時代の荒波によって案件数が減り、仕事をつくり出すためのアプローチを変えないといけない時代になりました。どの内装工事業者でも与えられた仕事を完遂することはできます。しかし、「良い場」を生み出すことは簡単にできることではありません。ここに、社会的価値や利益といった付加価値が創出されるのです。

 ――付加価値を生み出すために、どのようなことを行っていますか。

 中田 お客さまに当社を選んでいただくためには、自分たちが「場づくりの達人」であることを知ってもらうことが必要だと思っています。そのためには、私たち自身が「魅力的な場」を開発・運営しているという実績が必要不可欠です。その実績に共感していただくことにより、新しい空間づくりの企画の依頼につながると考えています。もちろん、そのほかのサービスも重要で、デザイン・コスト・スケジュール・安全性なども、安心して依頼していただける要因となるでしょう。

 そのように、我々自身がリスクを承知のうえで体現することにより、お客さまの気持ちを「ジブンゴト化」することが可能になります。その結果、「良い企画」が生まれ、メリットのある提案ができると信じています。地方の内装工事業者は空間づくりのインターフェース的な役割でしたが、従来の領域を超えた提案によってお客さまをサポートしていく時代になると思っています。

 ――それを体現しているのが「大濠テラス 八女茶と日本庭園と。」でしょうか。

 中田 そうですね。「大濠テラス」は福岡市のPFI事業で携わったもので、近年高まっていたインバウンド需要を受けて、大濠公園の南側にある日本庭園の活用を目的としています。当社が代表企業を務める「大濠公園『つなぐ』プロジェクト」は、隣接エリアに八女茶をフィーチャーした飲食店と着物のレンタル店を誘致し、大濠公園の池や緑の景観を眺めながらくつろげる新しい時間の過ごし方を提案しています。

 ――直近では「佐藤可士和展」が注目されました。

 中田 「佐藤可士和展」は国立新美術館で今年2月3日から4月24日まで開催された、クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏の個展です。アート関係の仕事は難しいとされていますが、当社の製作スタッフのきめ細やかな仕事を評価していただいています。当たり前ですが、「企画が良くても現場がおざなり」では意味がありません。そして、これを機にさまざまな有名アーティストからご依頼を受けるようになり始め、ご縁のすばらしさに感謝しています。当社には、日本を代表する家具産地の大川市に木工什器製作工場があります。我々を取り巻く環境に応じながら、「木工とアート」の融合を図るプロジェクトも進めている最中です。

大濠テラス 八女茶と日本庭園と。
大濠テラス 八女茶と日本庭園と。

「良い違和感」を忘れずに

 ――今後の取り組みについて、どのようにお考えですか。

 中田 今までの売上構成比は工事が9割を占めていましたが、それを6割くらいにして、今後はデザインや企画といったソフト部分の割合を増やしたいと考えています。利益率を高めることで、再びコロナ禍のような問題が発生しても耐えられるようにしたいです。それだけでなく、受注を取ることに必死である社員の心に余裕が生まれるという効果も期待できます。人・物・出来事に触れることで、アイデアやセンスは磨かれます。他者に触れようとする余裕がなければ、クリエイティブなものづくりはできません。ソフト面の向上は今後取り組みたいと思う部分です。

 ――内装業界で貴社はどのような立ち位置ですか。

 中田 仕事の仕方も進め方も内装業界はまったく変わっていません。だから、私たちは「変わっている」という見られ方をするのだと思います。当たり前が当たり前でなくなったり、予想できない出来事が起こったりすることは常に念頭に置いています。ただ、劇的な変化は、歴史を振り返れば何度も通ってきた道ですよね。この数十年間、大きく生活様式が変わるようなことがなかったせいで忘れていたのでしょう。

 停滞した雰囲気のなかで挑戦する新しい事業や領域は「良い違和感」につながります。単なる違和感は的外れでしかありませんが、「良い違和感」はこれまでになかった時間や日常を生み出し、ひいてはクリエイティブなものづくりを可能にします。会社の伸びしろとなるように、社員全員が「良い違和感」を意識すること、そして私はそれを可能にする環境づくりに注力しなければならないと考えています。

【杉町 彩紗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中田 泰平
所在地:福岡市中央区天神4-7-11
設 立:1981年12月
資本金:5,000万円
売上高:(20/3)20億6,265万円 


<プロフィール>
中田 泰平
(なかた・たいへい)
1975年生まれ。岡山理科大学を卒業後、楽器店勤務を経てクレアプランニング(株)に入社。2011年6月に同社取締役社長に就任。2代目社長として同社を牽引するほか、地元・博多を盛り上げる活動など社外でも精力的に活躍している。趣味は音楽、アウトドア、各種スポーツ。

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