「観光立国」にコロナ禍の大打撃、問われるインバウンド事業の本質(中)
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日本は2003年以降、「観光立国」としてインバウンド事業拡大に力を入れてきた。リーマン・ショック、東日本大震災と苦難を受けながらも驚異的な躍進を続けてきたが、コロナ禍によってその状況は大きく変わり、関連企業は軒並み厳しい状況に追い込まれている。
インバウンド消費約84%減(つづき)
その後も日本のインバウンド政策は、関東・関西の大都市を中心に好調だったが、新型コロナウイルスによる世界的パンデミックによって頓挫する。20年の訪日外国人旅行者数は約411万人と急落。これにともない、訪日外国人旅行消費額(試算)【図3】は7,446億円と前年比で約84%減となった。
現時点で3回にもおよぶ緊急事態宣言の発令などもあり、コロナ禍はインバウンドのみならず国内旅行にも多大な影響をおよぼし、多くの観光業者・宿泊施設・飲食業が窮地に追い込まれている。なかには、インバウンドを専門に扱う旅行仲介業者もあり、「20年の売上は95%減」(大手旅行仲介)という声もある。
「日本のインバウンド事業、とりわけ観光業者は3つの岐路に分かれている。このまま倒産するか、回復するまで耐え忍ぶか、アフターコロナに向けて準備を行うかだ」(観光カリスマ・山田桂一郎氏)。
観光立国とは、単に旅行者数や消費額などの上昇を謳ったものではなく、地域社会の持続可能な発展に向けた観光旅行の促進にある。コロナ禍という大きな壁にぶつかり、地方を中心とした関連事業の多くが大不況に見舞われる現在、観光立国の真価が問われている。
業績急伸に隠れた課題
インバウンド事業はこれまで、観光立国の下で急成長を続けてきたが、その半面、課題も多いとされてきた。コロナ禍は、急伸する事業拡大に歯止めをかけたかたちとなったが、有識者らはアフターコロナに向けてこれまでの課題と向き合うべきと指摘している。
国策、円安などによって日本のインバウンド事業は急激に拡大してきた。観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向 2019年の年次報告書」の訪日外国人旅行消費額構成比を見ると、買物代が34.7%と最も多く、次いで宿泊費の29.4%、飲食費21.6%の順で多い。1人あたりの旅行支出額は15.9万円。
【図4】にあるように、13年以降で消費額は急伸している。とくに買物代は飛躍しており、14年の7,146億円から15年の1兆4,539億円と前年に比べ2倍以上となっている。これは円安によって起きたアジア圏旅行者を中心とした「爆買い」が大きな要因の1つといえる。19年の買物代の費目別購入率を見ると、最も購入率が高いのは菓子類で69.5%(購入者単価8,222円)、続いて化粧品・香水42.2%(同3万4,176円)、その他食料品・飲料・たばこ38.0%(同8,345円)、衣類36.6%(同1万9,585円)、医薬品34.6%(同1万4,637円)となっている。
(つづく)
【麓 由哉】
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