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2021年06月03日 16:00

『日本弓道について』(3)竹矢について(後)

 今年5月に弓道の写真集を出版した。父を師として、42歳から弓を始め、弓歴は30年を過ぎた。弓を初めた頃から30年かけて撮影してきた、名人といわれる先生、弓道大会、弓にまつわる演武や祭などを載せた写真集だ。長年、弓を続けてきた者として、弓についてつづる。

筆者が使用している一手(甲矢、乙矢) 2セットの矢  矢師:宮崎弘才の銘がある
筆者が使用している一手(甲矢、乙矢) 2セットの矢 
矢師:宮崎弘才の銘がある

矢の筈(はず)

 「そんな筈はなかった」など、弓の筈(はず)から生じた言葉はたくさんある。筈は、弦の仕掛け(弦に少し太く麻を巻いてつくる)に合わせる。水牛の角など動物の角を材料にした筈や、人工的につくった練り筈などがある。

 矢を射るときは、引き手(射手)が微調整をして、弦から矢がこぼれ落ちないようにする。矢が弦から離れて矢を落とすことを「失」といい、引き直しはできない。審査や競技では落とした矢は不可となるため、「失礼しました」といい、落とした矢の処理を作法によって行う。

 筆者も審査で矢を落としたことがある。「しまった」と思っても、平然として次の一手にかける。昇段審査では、2回引くチャンスがあるため、1つの矢を落として失敗しても、段位次第であるが、その処理の作法ができていて、片方の矢が中って(あたって)良い射(しゃ)であれば、審査員は合格の判定をしてくれることもある。

 戦国時代は筈の材料は使い捨てであったため、竹の節を炙って使っていたと考えられる。筆者は竹製の筈の矢を1本持っており、大事にしている。

 筈には弦を入れる溝がある、この溝の角度が矢の飛ぶ方向に大事なポイントとなり、上手な人ほど溝の太さ、角度に気を遣っている。竹の穴の太さに合わせて糸を巻いたり、筈の先を削って調整して筈を矢に取り付ける。筈は竹のなかに入れるため、筈の根本はそれぞれわずかに太さが異なる。

 若い人や学生用にカーボン矢やグラスファイバー製の矢もあり、アーチェリーの道具を製造しているミズノなどから和弓用の矢も販売されている。竹弓や竹矢は湿気を嫌い入念な手入れが必要であるが、人工的につくられた弓や矢はさほど入念な手入れが必要ではなく、値段も安く、手軽に使える。

鏃(やじり)について

 矢の先端に付いているのが鏃(やじり)だ。(公財)全日本弓道連盟の審査や競技では、被せ鏃を使用することになっている。被せ鏃は竹に被せて付けるものだ。鏃の材料は鉄矢、アルミ、真鍮がある。

 演武用の鏑矢(かぶらや)は鏃に笛を付けて魔物を追い払う儀式のため、矢を離すと「ヒュー」と音がする。また、征矢(そや)と呼ばれる矢先には、槍の穂先のような鉄の鏃(やじり)が付いている。

 石器時代の鏃(やじり)は黒曜石など硬い石を植物の繊維で巻いて使っていた。古墳から出た鏃を使って、福岡県弓道連盟が狩猟時代の矢を弓道場で再現したことがある。連盟のなかで最も強い弓を引く人を選び、厚い板を的に使った特別の矢を矢師につくらせて実験した結果、分厚い板は真ん中から見事に割れた。古代の鏃は、それほど動物に対する殺傷能力があったことがわかったのだ。

 日本弓道は28m先(近的)の的に向かって矢を放つ。弓や矢、弦を掛ける弽(ゆがけ)などをそれぞれ職人がつくり、日本の伝統を受け継いでいる。

(了)

福岡地区弓道連盟会員
錬士五段 池田友行

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