• このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年06月07日 16:16

ミャンマー軍事クーデター、日本政府が沈黙する陰に日本企業と軍の深いつながり(2)

(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
CMCオフィス(株)代表取締役 大谷 賢二 氏

 2月1日のミャンマー国軍によるクーデターは、昨年のミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサン・スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。
 国連や欧米各国は、ミャンマー軍に対して、市民の殺りく停止、スーチー女史などの逮捕者の即時釈放、民主化の回復を求めて厳しい対応をしているが、日本は毅然とした態度をみせていない。そのような対応しかできない背景には、日本企業とミャンマー軍との深いつながりがあった。

日本企業とミャンマー軍部とのつながり

 ミャンマーにおいて、2011年の民政移管後、15年11月に実施された総選挙の結果に基づく国民民主連盟(NLD)政権の発足後も、08年に制定された憲法により軍の政治的影響力は依然として温存されたままであり、ロヒンギャやカチンを含む少数民族に対する軍による国際人道法に違反した攻撃が報告され、少数民族に対する人権侵害が起きていることについて、筆者は重大な懸念を表してきた。

 21年2月1日のミャンマー国軍によるクーデターにより、その懸念は現実のものとなった。ミャンマー国軍は、アウンサン・スーチー女史率いるNLDが大勝した20年11月の選挙で不正投票があったと主張している。

 民主的に選ばれたスーチー女史を含むNLD関係者が、ミャンマー国軍によって拘束され、1年間の「非常事態」が宣言された。このクーデターに反対して、若者を含む大勢のミャンマー市民による民主化を求めるCDM(市民不服従運動)がミャンマー全土で実施されているが、ミャンマー国軍は非暴力・平和的に活動している市民に対して実弾を発砲。現地の人権団体によれば、これまでに約800人が死亡、3,000人以上が拘束されるなど、深刻な人権侵害が広がっている。

 憲法上も、国軍の政治的役割が保証されるなど、民政移管、民主選挙によっても民主化が実現したとはいえず、軍の政治的影響力が依然として強いことは、かねてから問題視されていた。加えて、現役、あるいは退役した軍の幹部が、ミャンマーの複数産業にまたがる、少なくとも120の事業を共同で展開する主要軍産複合体「ミャンマー経済ホールディングスリミテッド(MEHL)」と「ミャンマー経済公社(MEC)」を率いるなど、軍が強い経済的影響力をもち、ミャンマーにおける経済活動の主だった部分を実質的に支配している。

 軍はいまだに広大な土地を支配しており、膨大な数のビジネス、仲介業者、代理会社を通じて自己資金を調達しており、その事業は、ホテル、醸造所、銀行、タバコ、製造業、運輸業、農業、国際貿易、鉱業、翡翠、宝石など多岐にわたる。スーチー国家顧問率いる文民政府は、これらの事業を通じて調達された資金を十分に監視できていないと指摘されてきた。アメリカ政府は21年3月25日、MEHLとMHLに国内資産の凍結や取引の禁止を含む制裁を科すことを決定した。

 そのため、外国の政府や企業がミャンマーで政府開発援助を含む経済活動を展開することは、その主観的意図にかかわらず、結果として、軍の経済活動を支援することにつながり、さらに軍による国際人道法違反、人権侵害を助長するというリスクが常に存在していた。軍によるクーデター下の現状において、各国政府および各国企業の責任は一段と高まっている。

ミャンマーの現状と、ビジネスと人権に関する課題

 ミャンマーの民主化への取り組みを評価する欧米諸国による経済制裁解除の効果もあり、11年の民政移管後、ミャンマーは軍政下の計画経済から市場経済への転換を図るなかで多くの投資を呼び込み、経済成長を遂げた。しかし、軍の政治的影響力は憲法上も依然として強く残っており、民主的選挙が実施されたとはいえ、民主主義が確立されたとは言い難い。民主主義の根幹をなす法の支配、基本的人権は発展途上にあるのだ。

 このような状況下で、ラカイン州で主にミャンマー国軍が引き起こしたと批判されているロヒンギャに対する国際人道法に違反する殺人、強姦、放火といった大規模な虐殺行為(ジェノサイド)など、ミャンマー国軍は少数民族居住地域において人権侵害行為を行っていることがこれまで数多く報告され、現在も紛争状態の地域が各地に残っている。

ロヒンギャ虐殺(大谷氏提供)
ロヒンギャ虐殺(大谷氏提供)

 国連人権理事会が指名した国際的な独立調査団は、19年8月に報告書を発表し、同国に投資をする海外の企業に対し、同国軍とつながるビジネスから手を引くことを提言している。また、西部のラカイン州でのロヒンギャの問題だけではなく、北部のカチン州のカチン族などの他の少数民族に対しても、軍は、国際人道法違反の攻撃や人権活動家の拘束など人権侵害を続けている。

 こうした今日のミャンマーにおける深刻な人権侵害状況にもかかわらず、日本企業を含む多くの国際企業は、事業活動がこれらの人権侵害におよぼす影響を十分に検討することなく、経済的利益を過度に重視し、ラカイン州などの紛争地域で事業を展開し、ミャンマー軍あるいは軍が関与する企業と投融資を通じて事業展開を行い、結果として同国内おける人権侵害を助長・加担していると批判されている。

 11年、国連人権理事会にて全会一致で承認された国連「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業は世界人権宣言、自由権規約、社会権規約、また国際労働機関(ILO)中核的労働基準といった、基本的な国際人権を尊重する責任を負うことを明示している。

(つづく)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年06月24日 12:30

【福岡県】中小企業等月次支援金~5・6月分に加え7月分も申請可能に、酒類販売事業者向け給付上限額を拡充NEW!

  福岡県は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態措置またはまん延防止等重点措置にともなう、飲食店の休業・営業時間短縮などの影響により、売上が大きく減少している...

2021年06月24日 11:27

太刀浦コンテナクレーン更新、10.2億円で三井E&Sが落札NEW!

 北九州市発注の「太刀浦コンテナクレーン更新工事(R3)」を、(株)三井E&Sマシナリーが10億2,250万円(税別)で落札した。同入札には、JFEプラントエンジ(株...

2021年06月24日 11:07

【読者からの投稿】朝倉未来戦を見て感じたことNEW!

 先日行われた「RIZIN」の朝倉未来対クレベル・コイケ戦を見ました。朝倉未来を応援していましたが、これまで朝倉未来はセンスだけでやってきました。すごいことではあるの...

2021年06月24日 10:48

コロナ危機を乗り越えて~「選ばれる福岡県」を実現する(1)NEW!

 今年3月24日、病気治療のため3期目途中で辞職した小川洋・前福岡県知事の後継として、4月11日の県知事選で当選をはたした、前副知事の服部誠太郎氏(66)。それまで総...

2021年06月24日 10:25

2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想(33)~新福岡空港島(案)と玄海国定公園指定区域との位置関係NEW!

 2008年の福岡空港総合的調査で検討された新空港案で示された6案のうち、4案は玄海国定公園の指定区域内に計画されていた。

2021年06月24日 10:17

【福岡銀行】融資型CFでコロナ禍の『山の上ホテル&スパ』を支援 スイートルーム割引もNEW!

 福岡銀行は貸付投資会社「ファンズ」(東京都港区)と連携し、クラウドファンディングで集めた資金を融資する「融資型クラウドファンディング(融資型CF)」で、地場企業を支...

2021年06月24日 09:55

「減塩」など企業の取り組みを推進、今夏に産学官による組織を発足~厚労省NEW!

 厚生労働省の「自然に健康になれる持続可能な食環境づくりの推進に向けた検討会」は23日、日ごろの食生活で健康を維持・増進できる環境の整備を目的に、内食・中食の減塩対策...

2021年06月24日 09:15

【7/6~8】「関家具大川展示会 2021 SUMMER」を開催NEW!

 福岡を代表する家具の総合商社、(株)関家具(福岡県大川市、関文彦代表)は7月6~8日の3日間、福岡本社ショールームで「関家具大川展示会 2021 SUMMER」を開...

2021年06月24日 06:00

【凡学一生の優しい法律学】民間学術研究団体のお粗末な憲法論(後)

 従軍慰安婦問題について、日本学術会議が「学問的立場からの見解を表明すべき」という前提は国際歴史論戦研究所の独りよがりであるため、同研究所の主張や公開質問は道理に合わない。

2021年06月24日 06:00

主要9社の2~3月期の販管費率、チラシ減で軒並み低下 タイヨー2.8、ナフコ2.4、MrMax1.4ポイントなど

 主要9社の2021年2~3月期の販管費率を調べたところ、イズミと丸久を除く7社が前年度から引き下げた。巣ごもり消費で売上が好調だった一方で、チラシなどの販促宣伝費が...

pagetop