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2021年06月15日 10:08

認知症は「治せる病気」になるか?~米FDAがアルツハイマー新薬を承認

いまだ解明されないアルツハイマー病のメカニズム

脳 イメージ エーザイ(株)と米国バイオジェンが共同開発した新薬「アデュカヌマブ(一般名)」がこのほど、アルツハイマー病の初の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認された。

 全国の認知症患者数は約460万人。認知症の約6割を占めるのがアルツハイマー病だ。アルツハイマー病は脳の働きが低下し、記憶や思考などの能力が低下してしまう病気であるが、その原因やメカニズムは解明されていない。

 アルツハイマー病には3つの特徴がある。(1)アミロイドβ(ベータ)と呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積し、老人斑ができる、(2)タウと呼ばれるタンパク質が脳の神経細胞で異常に凝集(神経原線維変化)している、(3)神経細胞が死に、大脳が萎縮している。

 そのため、アミロイドβが脳内に蓄積していることが病気の原因とする「アミロイドβ仮説」と、タウの蓄積が原因とする「タウ仮説」が提唱され、この2つの理論を基に治療薬の開発が進められてきた。

 これまで発売された薬は症状を緩和するものであったため、病気の進行を抑える治療薬の開発が待ち望まれていた。とくに有力視されてきたのが、アミロイドβを減らす治療薬だ。

アミロイドβを減らす効果

 「アデュカヌマブ」は、軽度認知障害や軽度認知症にあたるアルツハイマー病の初期段階の患者を対象に治験(第3相臨床試験)が行われ、アミロイドβを59~71%減らす結果が得られたと報告されている。この結果から、FDAは「患者に重要な利益をもたらすことが合理的に予想される」と説明したと報じられている。脳内のアミロイドβが減ることで、理論上、認知症の進行を抑えることが期待されるという意味と受け取れる。

 「アデュカヌマブ」は日本でも2020年12月に新薬承認申請が行われ、承認されれば国内でも処方されると予想されている。

 「アデュカヌマブ」の第3相臨床試験は2件実施されている。そのうちの1つでは、主要評価項目である症状の臨床指標について、高容量(10mg)投与群はプラセボ投与群()と比べて、約1年半後の臨床症状の悪化が23%抑制されたが、もう1つの試験では「主要評価項目を達成しなかった」といわれている。FDAは承認条件として、臨床試験を再度行って有効性を確認することを求めており、その結果が待たれる。

 一方、アルツハイマー病の薬の目的は病気の悪化を抑えることであるが、2005年から米国で開始されたバイオマーカー開発プロジェクト「ANDI」や08年開始の「DIAN」研究などの結果を通して、脳内にアミロイドβが蓄積していても認知機能が正常な人もいることから、アミロイドβがアルツハイマー病の真の原因かどうかは明確でないという見方もある。

認知症の完治薬は研究途上

 アルツハイマー病によって認知機能がいったん低下してしまうと、壊れてしまった脳の神経細胞を元に戻して症状を回復することは現時点ではほぼ不可能とされている。認知症が進んでしまってから薬を使っても遅いため、今回の新薬は認知症の初期段階で使う。認知症そのものを完治する薬はいまだ存在せず、今後の研究の進歩が期待される。

 バイオジェンが米国で設定した「アデュカヌマブ」の卸価格は1回投与あたり4,312ドル(約47万円、平均体重74kg)で、年間コストは5万6,000ドル(約610万円、投与量10mg/kg、4週間に1回投与)。今後、日本で導入された場合も、費用をどのように賄うのかが議論されるだろう。

 アルツハイマー患者は50年までに世界で1,380万人に増えると予想されており(アルツハイマーレポート2020)、今回の新薬承認により、アルツハイマー薬の市場はさらに拡大すると予想される。

※:有効成分は入っていないが、本物の薬と見分けがつかない偽薬を投与した患者のグループ。 ^

【石井 ゆかり】

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