2024年05月05日( 日 )

中国経済新聞に学ぶ~中国共産党「14億共同富裕社会」へ邁進

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中国共産党が創立100周年

 7月1日、中国共産党が創立100年の節目を迎える。

 1921年7月、12名の共産党員が上海のある民家に集まり、内密に中国共産党の設立会議 (中国共産党第1次全国代表大会)を行った。ともにかつて早稲田大学に留学し、北京大学教授であった李大釗、陳独秀もそのときの指導者であった。また、後に共産党トップに立った毛沢東も書記として会議に出席していた。

 発足当時、党員は全国でわずか50名であったが、100年経った今は9,000万人以上に達し、世界最大の政党となっている。

 中国共産党は、21年から武力で政権を奪おうとする懸命な戦いを始めた。蒋介石率いる国民党の包囲に抵抗し、日本との戦争に加わって勝利し、そして3年間の内戦を経た末、28年後の49年に蒋介石政権を倒して、「中華人民共和国」を樹立した。

 それから78年までの30年間、国づくりの経験のなかった中国共産党は、幾度もの政治・経済運動という苦しみに喘ぎ、さらに「文化大革命」という災禍の10年間により、中国を崩壊状態に陥れてしまった。

 そして79年、鄧小平率いる中国共産党は改革開放運動を始めた。

 人民公社を解散させて土地を農民に割り当て、大量の地方国有企業を民間企業に変えて民間経済を発展させ、創業に対するやる気を引き起こした。また、経済体制の整備に向けて外国企業の参入を進め、製造業の技術革新力を伸ばした。さらには法律面や社会の管理体系も整えて、近代国家の土台を築いていった。

「ともに豊かになる」ための指針制定

中国 イメージ 2010年、中国は日本のGDPを追い抜いて世界第2位の経済大国になり、20年には1人あたりGDPが1万ドルを超えた。現在、GDP全体における民間経済の占める割合は60%以上となり、全就業者数の95%が民間企業に勤めている。

 貧しく、立ち遅れ、半植民地状態だった中国は、共産党の指導の下、経済大国そして軍事大国となった。共産党設立100年に際し、14億の中国人が誇りに感じる成果である。

 鄧小平は改革開放の当初に、「一部の人を先に豊かにする」という政策を実行した。40年余りの歳月を経て富豪が続々と生まれ、中産階級が3億人に達した一方で、「いまだに6億人が1カ月の所得1,000元(およそ1万6,000円)以下」(李克強総理)という状態である。

 北京大学の「中国民生発展報告2015」によると、中国は1%の世帯が国全体の財産の3分の1を所有しており、最低辺の25%の世帯が所有する財産はわずか1%程度という。21年、長者番付首位の馬化騰氏(テンセント創業者で会長)は資産額が612億ドル、一方、日本人トップである孫正義氏は446億ドルである。

 貧富の大きな格差で社会の不安定を招いている中国は、これからどのような進路を歩めばいいのだろうか。

 習近平総書記は、中国共産党第19回全国代表大会で「社会主義強国の建設」を訴えた。「貧困を解消し民生を改善してともに豊かになることは、社会主義の本質的要求であり、共産党のあくなき奮闘目標だ。ゆとりのある社会が形成され、社会主義近代化国家への道のりを本格的に歩むにつれて、国民全体を豊かにすることをより重要な位置に据え、着実な足取りで成果を目指し、この目標に向かって前向きに努力しなくてはならない」と主張している。

 習総書記のこの話はつまり、中国共産党は「一部の人を先に豊かにする」という鄧小平理論がすでに役目を終えたと気づいていることを意味する。結成当時の初心に帰って、誰もが豊かになれるように、国民を社会主義の道へ率いるべきなのだ。

 そこで、「ともに豊かになる」ための「2段階方式」の指針が制定された。第1段階は20年から35年に社会主義の近代化を概ね実現し、生活がより豊かになり、中間所得層の割合が拡大し、都市部の発展や生活水準の格差が縮小、公共サービスがほぼ均等化して、国民全体がともに豊かになるよう着実に歩んでいく。

 第2段階は35年から今世紀半ばころに、国全体を社会主義の近代化強国とし、国民全体がほぼ豊かになって、より幸せで安らぎのある生活を送れるようにする。

 中国政府はこうした指針に沿って、50年までのおよそ30年間に国民全体を「豊かにする」という目標に向かって、14億人を中産階級とするよう努力する。そのころには間違いなく世界一の富裕国となり、また経済など各分野でアメリカを追い抜くのではないか。

 中国政府は、このための手本を全国に示すため、浙江省を「共同富裕モデルエリア」に指定した。6月10日に発表された「浙江省をともに豊かになるモデル地域とすることに関する中国共産党中央・国務院の意見」によると、浙江省は25年までに実質的な成果を上げ、35年までにはさらなる結果を残してほぼ全住民が豊かになる、との目標が示されている。

 すなわち、人口が日本のほぼ半分である浙江省(6,456万人)が、全国より15年早く目標を達成するのである。

外国企業が無視できない巨大市場

 中国共産党の「14億の国民をともに豊かに」という目標によって、中国は消費面を中心に世界で一番大切な市場であり続けることは確実だ。世界中がコロナの猛威に喘ぐなか、中国経済もしばらくは失速するとみられるが、農村部から都市部への年間1,000万人におよぶ転入者が「内循環経済」(国内市場経済)を刺激している。

 また、「外循環経済」(国際貿易市場)が向こう数年間以内に回復し成長をはたせるかは、もちろんコロナの状況や米中関係の動き次第である。いずれにしても中国共産党は、中国を一段と繁栄させ、政権を長期的に安定させるため、「ともに豊かに」という目標を迷わず遂行していくだろう。

 考え方の違いや社会制度の争いは別にして、国際展開している外国企業からすれば、中国は常に無視も撤退もできない巨大市場であるゆえ、中国共産党を理解し、社会主義である中国との協力を維持していくことは大きな課題となる。


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