2024年05月02日( 木 )

中国経済新聞に学ぶ~中国の少子化問題が深刻、女性の5割が「出産しない」

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少子化段階に移った中国の人口構造

 今年5月、中国国家統計局が第7回国勢調査のデータを発表した。それによると、2020年の中国の総人口は14億1,000万人に達し、世界の総人口の約18%を占め、依然として世界一の人口大国となっている。しかしデータからもわかるように、人口増加率は鈍化している。過去10年間の年平均増加率は0.53%となり、その前の10年間に比べて0.04ポイント低下、中国の人口構造は少子化段階に入った。

 国勢調査データによれば、中国では2人っ子政策がスタートしてすぐの16年と17年は出生数が大幅に増加し、16年は1,800万人、17年は1,700万人を超えた。しかし18年以降は低下に転じている。20年は約1,200万人まで減り、16年に比べて3分の1減少した。

 社会の変遷にともない、「多子多福(子が多ければ福も多い)」「不孝有三、無后為大(跡継ぎがいないことが最も親不孝である)」という伝統的出産観は、徐々に「少生優生(少なく優れた子を産む)」「生男生女一個様(男児を産んでも女児を産んでも同じ)」の新たな出産観に変わりつつある。大手健康サイト「39健康網」がこのほど国内ネットユーザーを対象に行った出産観調査によると、回答者総数3,360人のうち「子どもは産まない」とした女性が1,610人に上り、48%を占めた。

出産に対して心理的障害に遭う現代女性

中国 イメージ 現代女性にとって、彼女たちの出産観は時代の風潮とともにすでに大きく変化しており、出産を望まない女性の比率は相当高く、一部の女性は「結婚しても子どもはいらない」としている。

 出産を望まない理由について、「出産すれば自分の人生が失われる」が35%、「時間的にも条件的にも良好な育児環境がない」が30%、また「婚姻が不安定になったとき、子どもが負担になる」も17%に達した。

 専門家は今回の調査結果について、現代の働く女性、とりわけ学歴が高い知的な女性は独立心が強く、事業心が旺盛なため、出産にあまり関心がないと指摘する。加えて現代社会は競争が熾烈で、生活のプレッシャーは大きく、出産がほかのチャンスに影響する可能性があるため、一部の女性は往々にして、出産を自身のキャリアアップの障害ととらえている。さらに現在、離婚率が不断に急増していることも、ある程度、出産の不確定性を押し上げているという。

 安心すべきは、「子どもは産まない」とした1,610人に対して行った「不意の妊娠があったら」との質問について、「出産して育てる」との回答が65%に上ったことだ。ネットユーザーの出産に対する心理的障害はそれほど強固ではないようだ。

 北京・上海・広州などの大都市以外でも、子どものいる世帯には「家計」の負担が重くのしかかる。さまざまなコストが積み重なって、若者は子どもを持つ前に、昔よりもずっと複雑になった「帳簿」をしっかり計算しなければならなくなった。南開大学人口・発展研究所の原新教授は、「これまでは、子どもを1人多く生むことは『箸が一膳』加わるだけに過ぎなかったが、今ではこの箸はまるで『純金製』に変わったようにお金がかかるものになった」と述べた。

 「子どもの世話をしてくれる人がいない」「仕事が中心」というのも、多くの人が2人目を望まない主な原因だ。2人目を産むことで、女性は健康リスクも考えるようになる。年齢が上がると、出産は老化を加速させ、高血圧や出産後の血栓など合併症のリスクを増大させる可能性もある。

 また、子どもを産み育てることのコストはすでに経済的要因だけとは限らず、時間的コストもあれば、社会的コストもある。女性の教育レベルと社会的地位が上昇することにともなって、出産への意欲がどんどん低下し、子どもを産む時期が先送りされていく。

低出生率の問題をどうやって解決するか

 適切な出生数の実現を推進し、出産への意欲を高めるにはどうすればよいか。復旦大学社会発展・公共政策学院社会学部の王豊特任教授は、「明確にしなければならないのは、出産は家庭のプライベートな問題ということだ。私たちがより議論すべきなのは、どのような社会に暮らしたいかということであり、この点を出発点としてより広義の社会政策を議論・策定し、人々がより生きやすい社会環境をつくり出して、ジェンダーの平等がより進んだ社会を実際に構築することが必要だ。人々のニーズを出発点として問題を検討すべきだ」との見方を示す。

 王氏は、「私たちができることはたくさんある。比較的容易なものとしては、育児サービスを増やして充実させること、女性に産休を保障することだ。現在、男性にも育児休暇を与えるべきだという議論をする人もいて、こうしたことはいずれも容易に改善できる。より深いレベルのより複雑な改善点、たとえば不動産価格の抑制、医療サービスの質と効率の向上、性別の面で不平等な観念や制度設計の変更といったものは、それほど簡単なものではない。まず簡単なところから着手し、複雑なことはよく考えて一歩ずつ改善すればよい。社会を変えるには長期的な努力が必要だ」と述べている。

 中国・グローバル化シンクタンクの特別招聘上級研究員で「人口と未来」サイト共同創設者の黄文政氏は、「個人のレベルでは、すべての人に自分のライフスタイルを選択する権利がある。結婚したいと思う人もいれば、子どもがほしくないという人もいるし、子どもは1人でいいという考えも理解できる。出産の奨励は、生まない人や1人だけ生みたい人に対して決して懲罰的であってはならない。社会が持続可能な発展を遂げ、民族が代々続くようにするため、複数の子どもを産み育てる家庭の社会への貢献を補償し、子育ての負担を減らすことが必要だ」と語る。

 また黄氏は、「具体的な方法はたくさんある。たとえば、税還付や現金による補助金支給などの方法で、複数の子どもがいる家庭に累進制の奨励策を適用、公的な普恵型幼稚園を大規模に建設、保育所サービスを行き渡らせ、学制の期間を短縮する。複数の子どもがいる家庭の住宅購入に際して土地使用権譲渡金を還付、子どもの数と年金額が連動するようにし、『子育てデー』を設定するなどだ。もちろん、こうしたすべての出産奨励措置の前提は、低出生率の危機を直視することにある」と述べている。


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