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2021年08月04日 16:25

【業界を読む】斜陽産業だが改革進まず、新聞は恒常的な赤字事業へ(後)

 マスメディアの代表格である新聞の凋落が止まらない。新聞各社は本業のメディア事業で利益を出せず、不動産事業に頼らざるを得ない状況にある。新聞各社の最新の2021年3月期決算(日経新聞は20年12月期)を基に、新聞の現状と今後の可能性について検証する。

本社担保に資金調達した毎日

 毎日新聞は毎日新聞グループホールディングスの連結決算の公表がなくなり、持株会社と毎日新聞社の単独決算だけが公表されたため、別表は毎日新聞社単独の業績推移と決算内容である。19年3月期にすでに1,000億円の売上高を割り込んでいたが、さらに目減りし、21年3月期の売上高は800億円。営業損益段階では4期連続の赤字、経常損益段階では3期連続の赤字、最終損益は特別利益の計上により黒字を確保したが、金額はわずかだ。

 21年1月には資本金を1億円に減資し、中小企業扱いとなる道を選んだ。この処理により41億5,000万円だった資本金は1億円となり、40億5,000万円が資本剰余金に振り替えられた。21年3月期の純資産は39億円程度だが、繰延税金資産が51億円程度あり、朝日新聞のように取り崩しの処理をしていれば、債務超過に転落していたことになる。現預金が32億円しかない一方で、長短合わせた借入金は521億円と過大だ。最近では大阪本社ビルを担保に入れ、信託銀行から新たに210億円の資金を調達することも報じられた。

 21年3月の朝刊発行部数は200万部で、前年比で28万部減。減少率は全国5紙のなかでもっとも大きい。部数減少に歯止めがかからず、広告収入も増えなければ、経費削減や資産売却などのリストラを進めるしかない。経営危機が代名詞のような新聞になってしまったが、実際に負のスパイラルから抜け出すのは容易ではないだろう。まさに四面楚歌の状況だ。

毎日新聞 業績

新聞事業は連続赤字の西日

 ブロック誌の雄である西日本新聞も業績の悪化に歯止めがかからない。21年3月期の連結売上高は349億円となり、前期比で約67億円の減収となった。部数減少にともなう費用の減少もあり、営業利益は前期並みを維持したが、繰延税金資産の取り崩しなどもあり、4億円を超える最終赤字に転落した。業績悪化の要因は明確で、新聞発行を中心とするメディア関連事業の落ち込みだ。

 セグメント別で見ると、同事業の20年3月期売上高は368億円だったが、21年3月期では293億円と20%減少した。営業赤字も6億8,400万円となり、前期の5億5,700万円の赤字から赤字幅が拡大した。一方、不動産事業は増収増益で、41億円の売上高と21億円の営業利益を確保している。「香椎フェスティバルガーデン」などの賃貸用不動産を取得したことが寄与した。現預金は131億円程度を保有するが、不動産事業への傾斜もあり長短合わせた借入金は80億円を超えた。

 21年3月の朝刊発行部数は48万7,000部で、前年比で3万2,000部減。18年後半に60万部を割り込んだが、2年余りで10万部が減少したことになる。かつては80万部と言われた時代があったが、すでにその6割の水準だ。

 創刊150年の2027年に向けて直近3カ年の「2023中期経営計画」が策定され、3つの方針が打ち出されている。要約すると、デジタルシフト、不動産など新聞以外へのシフト、各事業の連携強化だ。新聞社の経営計画はどこも似たようなものであり、目新しさはない。こうした策で右肩下がりの業績から脱却できるのか、はなはだ疑問である。

西日本新聞 業績

ゆでガエル化した新聞社

 新聞社の歴史は、電通や通信社とともに日本の世論を牛耳ってきた歴史でもある。メディアヒエラルキーの特権階級であり、新聞各社に蓄積された膨大な資産はその象徴だ。だがネット社会の到来により、そのヒエラルキーが崩壊し始めた。ネット社会では人々の情報に接する環境が大きく変わった。SNSがその環境変化に拍車をかけ、氾濫する情報の渦から、自分にとって必要な情報をいかに効率的に収集するかが大きなテーマとなった。この過程で人々のメディアリテラシーも強化されたが、世代間の格差が大きく生じた。デジタルネイティブと呼ばれる世代にとって、新聞社のネット記事は数あるニュースの1つに過ぎない。

 新聞は権力と対峙するジャーナリズムとしての役割を担ってきたが、「記者クラブ制度」や「特殊指定と再販制度」「軽減税率適用」など不都合な真実が知れ渡るにつれ、世界標準のジャーナリズムには程遠いご都合主義で、自らが権力の座にあぐらをかいた存在であることも浮き彫りになった。その結果が「マスゴミ」と揶揄される昨今の状況である。

 業績悪化を受けて新聞各社は経営改革に取り組み、新たなビジネスを模索しているが、不動産業という資金力を背景にした単純なビジネス以外での成功事例は見かけない。この問題の根本には新聞紙法の存在がある。新聞社の株主は法律によって事業に関わるものに制限されており、アマゾンのジェフ・ベゾスがワシントンポストを買収したようなことはできないのだ。報道の独立性を保つ目的だが、裏を返せば閉鎖空間であり自浄作用が働きにくい組織となる。

 特権階級で育ち、外部株主のプレッシャーもない経営陣では、改革を進めるよりも経営を担う数年間をやり過ごす方針になるのも無理からぬところだ。かくして改革は先送りとなり、今後も新聞の衰退は続いていくのだろう。

(了)

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