2024年07月27日( 土 )

IR誘致が焦点だった横浜市長選挙 市民7割「カジノ反対」で山中竹春氏が当選

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横浜市庁舎
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 8月22日投開票の横浜市長選挙で、立憲民主党推薦の元横浜市立大教授の山中竹春氏が前国家公安委員長・小此木八郎氏を大差で破り、当選した。市長選挙の焦点のひとつが横浜へのIR誘致の賛否だった。山中氏が当選したのは「IR誘致反対」をはっきりと打ち出していたことが大きい。

 神奈川新聞社とJX通信社が7月に合同で実施した調査により、横浜の山下ふ頭が候補地として想定されているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致に対しては、市民の7割近くが反対しているという結果が出ている。昨年行われたIR誘致推進の是非を問う住民投票の実施を求める署名運動では、約20万人の署名が集まった。これは、住民投票条例を市に求めるために必要な法定数である約6万人の署名を大幅に上回ったものであるが、今年の市議会本会議で条例案が否決されたことからも、「このままの体制では市民の声が行政に届かず、横浜へのIR誘致を止められないのではないか」と感じた市民が多かったのではないかと考えられる。

 また、前回の2017年横浜市長選では、現職の林文子市長がIR誘致を「白紙」と発言して当選した後、19年8月にIR誘致を表明した。この動きからも、東京都の隣県であり、政権の意向を強く受けやすい横浜市では、今回の市長選で「IRを誘致しない」と公約を掲げている候補者も、市長に当選した後に「IR誘致推進」の立場に変わる可能性があるのではないかと市民の間で不信感があった。このことが、当選後もIR反対を貫いてくれそうな山中氏に票が流れ、年初までIRを推進する立場だった小此木氏が菅義偉首相からの支援を得て「IR誘致反対」を表明して出馬したにもかかわらず落選した理由だろう。

 今回の市長選の投票率は49.05%と前回17年の37.21%より11.84ポイント上昇している。コロナ禍とIR横浜誘致に対する関心の高まりにより、現体制に疑問を抱き、市長選挙に関心をもって投票した市民が増えたのではないかと考えられる。

 史上最多8候補が出馬した今回の選挙で当選した山中氏は市長に就任後、どのような政策を行うのか。その行方を見守りたい。

【石井 ゆかり】

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