2024年05月18日( 土 )

中国経済新聞に学ぶ~少子化止まらず 中国政府は学習塾を閉鎖へ(後)

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学習塾 イメージ 中国政府がこのようにバッサリと切り捨てる策に踏み切った一番の理由は、少子化に歯止めをかけるためである。

 今年5月11日、中国国家統計局の寧吉詰局長が第七回国勢調査の結果を発表した。新生児の数は16年には1,800万人であったが、20年には1,200万人で、率にして30%以上となる600万人も減少している。

 中国人は子どもを産みたくなくなっているのだ。

 中国では今、莫大な出費先として持ち家、医療、教育があり、「3つの大山」と呼ばれている。

 まず家であるが、過去10年間で売値が2倍に膨れ上がり、北京、上海、深センはいずれも東京の2倍を超え、新築物件はすべて「億ション」である。高額なローンの返済へ若者たちは遊ぶ間もなく懸命に働いている。中国では、結婚の条件として持ち家や自家用車が必須アイテムであって、北京や上海などの大都市では結婚にかかる費用が1,000万元以上(約1億6,000万円)に達する。住宅や自動車、家電や家具の購入にかかるものであり、このために多くの若者たちは結婚することができない。

 次に医療であるが、中国でも国民保険制度が実施されているものの、日本のそれとは開きがある。薬について、1万品目以上が甲、乙、丙の3種類に分けられ、18年版のリストによると甲は685品目で全額保険負担、乙は1,466品目で個人負担割合が10~20%、丙はおよそ8,000品目で全額自己負担である。(注:現在、日本の医療機関などで、保険診療に用いられる医療用医薬品として官報に告示されている品目は約1万4,000程度)。つまり、中国では保険の対象となる薬は20%程度で、大部分が自腹購入なのである。このため、一度入院すると巨額の医療費がかかり、重病でも患えば家計が破綻する。

 そして、三大出費のもう1つが子どもの教育である。最近の言葉で、「スタート地点で負けてはならない」といわれる。小さいころから一歩でも先を走らせるためにいろいろな習いことに通わせるので、幼稚園から高校へと成長していくなかで、ひたすら休日もなく夏休みもなく、楽しみが奪われる。また家族からすれば、長期間にわたって月謝などにかかるお金が家計を大きく圧迫する。

 上海市の場合、小学生の習字やダンス、音楽などといった習いことにかかるお金は年間でおよそ6万元(約100万円)である。「10大都市における子どもの教育費用ランキング」を見ると、生まれてから大学卒業までの教育費は、北京市の場合は276万元(約4,678万円)で、一般家庭で両親が飲まず食わずの23年間の収入分である。10位の長春市は131万元(約2,220万円)で、同じく11年分の収入である。

 以上の三大出費により結婚は高嶺の花となって若者たちから遠ざかり、仮に結婚しても子どもを生めず、こうして急激に結婚離れが進んでいる。

 中国民政部によると、18年の結婚数は1,013万組であったが、19年には927万組、2020年には813万組と減少の一途である。

 よって中国政府は、「家、医療、教育」という三大出費を崩さないことには少子化か防げないと判断した。塾や習いことでの子どもたちの負担を軽減し、教育費用を削減することで、2人目、3人目の出産につながっていく。その第一策として「習い事禁止令」を打ち出したのである。

 産業に規制をかけてまで出生者数の大幅減を食い止める。この策が功を奏するのは相当難しいだろうが、政府として、少子化問題の解決に向けて第一歩踏み出した。

(了)


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