2022年08月11日( 木 )
by データ・マックス

【コロナで明暗企業(13)】ワタミ創業者・渡邉氏の社長復帰、息子への事業承継の布石か!?(後)

 「ワタミの渡邉美樹会長が2009年以来の社長復帰」。新聞・テレビが一斉に報じた。渡邉氏はかつて「ブラック企業」の批判を浴び、「ワタミには1,000%戻らない」と公言していたが、19年に会長に復帰。10月1日からは会長兼社長として前線の指揮を執るという。その狙いは何か。「息子への事業承継」の意図が透けて見える。

「ブラック企業」の代名詞だった

焼肉 イメージ ワタミといえば、「ブラック企業」の代名詞であった。ブラック企業とは、長時間労働など働く人に苛酷な労働環境を強いる企業のこと。ワタミがブラック企業の代名詞になったのには、それなりの理由がある。

 2008年6月、持ち株会社ワタミ傘下の外食事業会社ワタミフードサービス(株)(現・ワタミフードシステムズ(株))が運営する居酒屋「和民」で働いていた女性従業員(当時26歳)が入社2カ月後に自殺。和民はこの従業員に対し、7日間連続の深夜勤務を含む長時間労働に加え、月140時間におよぶ時間外労働を強いていた。この事実を踏まえ、神奈川労災補償保険審査官は12年2月、女性の死亡への労災適用を認定した。

 報道各社は自殺した女性従業員の生々しい日記を公開した。

 「体が痛いです 体が辛いです 気持ちが沈みます 速く動けません どうか助けてください 誰か助けてください」

 この日記が報じられると、ワタミへの批判が殺到した。ワタミ会長・渡邉美樹氏が、この報道について言及したツイートが火に油を注いだ。

 「労災認定の件、大変残念です。四年前のこと昨日のことのように覚えています。彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。労務管理できていなかったとの認識はありません。ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思います。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」

 さらに翌日、バングラデシュで学校をつくる事業と、過労認定された女性従業員を結びつけるツイートを渡邉氏は投稿した。

「バングラデシュ朝、5時半に、イスラムの祈りが、響きわたっています。たくさんのご指摘に、感謝します。どこまでも、誠実に、大切な社員が亡くなった事実と向きあっていきます。バングラデシュで学校をつくります。そのことは、亡くなった彼女も期待してくれていると信じています」

 被害女性へは一言の謝罪もなかった。批判は止まらず、ネット上で大炎上した。これらの自分自身の正義のみを重視し、被害女性への配慮に欠けた発言により、ワタミフードサービスはブラック企業大賞で12年に市民賞、翌13年に大賞を受賞した。

 ワタミは遺族との面談や謝罪を事実上拒否。女性の遺族はワタミや代表取締役だった渡邉氏を相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を提起。15年12月、東京地裁で日本では前例のなかった「懲罰的慰謝料」(計1億3,365円)を認める内容で“和解”が成立した。

渡邉氏の長男・将也氏へ世襲か

 渡邉氏は13年に参院選立候補のためにワタミの全役職を退き、参院議員を1期6年務めた。参院議員任期満了を受け、「会社には1,000%戻らない」と公言していた渡邉氏は態度を翻して、19年7月にワタミの取締役に就いた。同年10月、代表取締役会長兼グループCEOに就任。そして今年10月には会長兼社長に就き、全権を掌握する。

 渡邉氏は社長に復帰して、創業事業である居酒屋から焼肉への業態転換を進める。その狙いは何か。長男・将也氏への事業承継を意図したものといえる。

 有価証券報告書によると、将也氏は1987年12月生まれの33歳。スイス系金融機関に就職し、その後、ワタミに転職。サントリースピリッツ(株)(東京都港区)やビームサントリー(米国シカゴ)で修業を積んだ。サントリー酒類(株)は株式10.22%を保有するワタミの第2位の株主だ。この間、マギル大学でMBAを取得している。

 19年10月に代表に帰り咲いた渡邉氏は、就任3カ月後の20年1月、将也氏を執行役員海外事業本部長へ昇格させた。その半年後の20年6月には取締役に。そして21年4月1日、ナンバー3のポストである取締役CFO(最高財務責任者)兼上席執行役員に就任させた。異例のスピード出世である。

 将也氏は渡邉氏の資産管理会社(有)アレーテー(横浜市)の代表を務めている。アレ-テーは3月22日にワタミの第三者割当増資を引き受け、10億円を出資。保有比率を28.29%まで引き上げた。アレ-テー=将也氏の支配力を強める狙いが透けて見える。

 10月1日からの渡邉会長兼社長の新体制では、CEO、COO職を廃止し、渡邉氏に権限を集中させる。脱居酒屋、「焼肉」に業態転換する仕組みが整った暁に、長男の将也氏に経営を移譲するとみられている。渡邉氏の社長復帰は、「親子禅譲」の布石と見るのが妥当だろう。

ワタミ業績推移

(了)

【森村 和男】

(前)

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