2021年12月05日( 日 )
by データ・マックス

縄文社会に戻れば人類は救われる(後)

(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏

失われた生命力を縄文道で取り戻す

(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏
(一社)縄文道研究所 代表理事
加藤 春一 氏

 縄文文化をつくり上げた縄文人の特徴を述べてみたい。現代日本の限界を打破する可能性を秘めているからである。哲学者で歴史学者でもあった故・梅原猛氏は、縄文文化は日本文化の源流で基層だが、この長期に形成された縄文魂が日本が艱難(かんなん)に遭遇したときの復元力になってきたと指摘している。多くの自然災害、疫病、戦争、経済危機を縄文時代~後弥生時代から約2,000年の間、日本人は乗り越えてきた。これはまさに縄文時代に形成された復元力であるが、この復元力とは何か考察したい。

 まずは、「未知の世界を切り拓く挑戦力」が挙げられる。日本に約3万8,000年前に到着したホモサピエンスは、ユーラシア大陸に到着するまでに自然のあらゆる脅威や飢餓と戦い、自然動物から襲われる恐怖を克服してきた人々だ。彼らは楽園の日本列島で約1万年間の氷河期を潜り抜け、縄文土器を発掘したことで長期の縄文文化を形成した。縄文時代も気候の温暖差や自然の猛威と闘い、最終的に自然と共存・共生して生き抜く力を身につけた。この歴史的体験は、まさに未知の世界への挑戦心と挑戦力である。

 次に、「創造力と開拓力」だ。縄文土器、土偶、狩猟採集道具、漁労の竿から仕掛け、竪穴式住居、四季折々の食材の確保、貯蔵、編み物、衣食住……など々、生活の全般が創意工夫の連続である。現代の世界的ファッションデザイナー、三宅一生もパリコレクションで縄文の服飾文化を発表したように、そのデザインは創造性に溢れている。

 3つ目は、「ダイナミックなパワーとエネルギー」。創造的な分野に飽くことなく挑戦するダイナミズムは、そこに凄まじいパワーとエネルギーがないと縄文土器も土偶も住居も生み出すことができない。それは強烈な生き抜く「生命力」だ。ユバール・ノア・ハラリ博士が現代文明の利便性、快適性のために人間の五感、六感が失われていることを警告しているが、それこそまさに生き抜くための「生命力」なのかもしれない。

「世界を良くする――世界を救う」縄文道

 縄文人と対比されるのが弥生人だ。農耕、鉄器、青銅器、古墳などを日本に技術導入し、現代人に近いとされる弥生人。縄文人との相互比較(キーワード)は次の通りである。

縄文人との相互比較(キーワード)

 日本社会はさまざまな問題を抱えているが、これらの解決にはリーダーが弥生型から縄文型に思考と行動を変える必要がある。縄文道で一貫して提唱しているように、縄文時代は(1)自然環境との共存、共生、(2)長期な平和社会、(3)女性の地位―diversity(多様性)実現社会、(4)富の平等性、が実現していた社会である。いわば日本は、縄文時代にユートピアを実現していたのだ。かかる意味で、世界は縄文文化を見直す時期にきているといえよう。

 冒頭に述べたように、今年7月15日から7月31日に、北海道、東北3県の17カ所の縄文遺跡の正式登録される予定だ。登録が正式に認められれば、世界が縄文文化を見直す大きな歴史的転機になる。

 縄文文化の意義と意味をアートと農業、林業を通じて16年間にわたって展開し、新潟県奥阿賀にコスモ夢舞台を展開している彫刻家の佐藤賢太郎氏がいる。縄文ミュージアムや縄文ストーンサークルをつくり、縄文の温泉もある。自然再生エネルギーの太陽光を使用した縄文ビレッジでもある。現在、3回目の奥阿賀アートフェステイバルを開催中だ。これまで世界からも多くの外国人が訪れているが、縄文文化が世界に広く知られるようになれば、世界から現代版縄文文化を堪能していただくために来訪されることを期待したい。

 「故きを温ね新しきを知る」上で、縄文文化は世界性と普遍性をもった文化なので、環境問題や平和問題、経済格差問題を解決する、世界を救うヒントが隠されている。衣食住等の日本文化はすべて、縄文時代から長期にわたって環境と健康を考え抜いて徐々に完成させてきた日本の誇るべき結晶である。日本が今後世界に発信するのは精神文化と武術文化であろう。

(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏 筆者が注目するのは動と静のコンビネーションとしての合気道と座禅である。座禅は現在、「世界のための日本の心」の主催者である土居征夫代表がインターネットで座禅会を毎週木曜日の早朝に主催している。筆者も過去半年参加しているが、毎回奥行きが深いことを実感する。

 アップルの創業者スティーブ・ジョブズや多くのカトリック司祭も座禅を組んでいるという。筆者は日本の陶祖・加藤藤四郎景正の末裔で、陶祖が曹洞宗開祖・道元禅師と一緒に当時の南宋を訪問して最新の陶器の技術を学んだことから座禅には関心を寄せてきた。静の精神文化として期待したい。

 「動」の武術では、日本の柔道、剣道、空手道のすべての武術を保身術として完成させたのが武田惣角と植芝盛平だ。筆者はいま、真中流合気道師範・中村義一先生の下で修業中だ。中村師範は、アメリカ大陸で約20年にわたって主にアメリカ人とカナダ人に合気道、空手を教授してきた。現在、世界に合気道を習う人口が約140万人いて、半分が女性と聞く。合気道が保身術で相手の力と気を極めて自然体で柔軟に使う術は縄文の平和思想に結びつく、日本武術の完成形だと思う。

 世界最古の縄文文化を源流、基層とした衣食住文化、精神文化、武術文化は、今後世界にますます発信され、そこに流れる平和、環境、健康な思想が「世界を良くする――世界を救う」という1つの方向性をもって貢献できると思う。まさに縄文文化の精神に根差す縄文道は温故知新になると確信する。

(了)


<プロフィール>
加藤 春一
(かとう・はるいち)
(一社) 縄文道研究所 代表理事・(株)APIコンサルタンツマネージングパートナー。1944年満州大連にて日本の陶祖 加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。1968年上智大学経済学部卒業後 大手商社・日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間5大陸56カ国訪問。1998~2016年、東京エグゼクティブ・サーチ勤務(2000年から2008年まで社長)、世界のサーチファームITPグループ日本代表。2016年(一社)縄文道研究所創設 代表理事に就任。著書として、『能力Q セルフプロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア‐パースへのいざない』(「国会図書館永久保存版」。

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