2024年12月10日( 火 )

ヤマダHD、創業者・山田会長が2度目の社長復帰~三嶋社長は1年で辞任、後継者問題はどうなる?(前)

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 吃驚のニュースが飛び込んできた。報道各社が、家電量販店最大手(株)ヤマダホールディングスの創業者、山田昇会長の社長復帰を一斉に報じた。2013年にも業績不振を受けて社長に復帰。2度目の社長復帰となる。最大の課題である「後継者問題」はどうなる?

三嶋社長は就任1年で退任

ヤマダ電機 (株)ヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD、群馬県高崎市、東証一部上場)は15日、三嶋恒夫代表取締役社長兼COO(経営執行責任者)(62)が9月30日付で辞任する人事を発表した。同日付で、創業者の山田昇代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)(78)が社長を兼務する。 

 15日に三嶋社長から、健康上の理由により代表取締役および取締役を辞任したいという申し出があり、受理したという。

 2020年10月1日、(株)ヤマダ電機の商号を(株)ヤマダHDに変更し、持ち株会社体制に移行した。事業は(株)ヤマダデンキが承継した。HDの社長には三嶋氏が就任。事業会社ヤマダデンキの社長も兼任した。創業者の山田氏はHDで代表権のある会長に就いた。

 持ち株会社体制への移行を発表した20年3月時点では、山田氏がヤマダHDの社長を務める予定だったが、事業会社との連携を重視して計画を変更した。

 三嶋氏は20年10月のヤマダHDの誕生時に就任してから、わずか1年で辞任することになった。「後継者」と目されていたため、突然の社長辞任がもたらした衝撃は大きい。

 〈「三嶋氏が道半ばで辞められるのは残念だ」。三嶋氏の辞任を聞いた同社幹部は声を落とした。主力の家電量販の事業再編にめどが立ち、さらに多角化を進める矢先だったからだ〉。

    日本経済新聞電子版(9月15日付)は、社内の動揺をそう報じた。

創業者・山田氏は住宅関連事業に力を入れる

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 ヤマダ電機は18年6月28日に開催した定時株主総会で社長が交代した。三嶋執行役員副社長が代表取締役社長兼代表執行役員COOに昇格。桑野光正代表取締役社長兼代表執行役員COOは代表取締役を外れ、執行役員副会長に退いた。事実上の更迭である。

 創業者の山田氏は代表取締役会長兼取締役会議長、山田氏の甥の一宮忠男氏(2代目社長)は代表取締役副会長兼代表執行役員CEOを続投した。

 ヤマダ電機は店舗網を広げすぎて不採算店舗が増えたうえに、米アマゾン・ドット・コムに象徴されるネット通販の台頭も重なり、15年に57店舗の大量閉店に踏み切った。その穴は埋まらない。

 そもそも人口減少が続くなか、新商品がどんどん売れる時代ではない。大量の仕入れを前提として低価格商品を大量に売るというビジネスモデルが限界に達した。

 その代わりに山田氏が力を入れてきたのが住宅関連事業だ。11年に注文住宅のエス・バイ・エル(株)(現・(株)ヤマダホームズ)を買収。17年には家電と住宅関連サービスの複合店「家電住まいる館」の出店を始めた。この複合店を担当していたのが、18年に社長に就任した三嶋氏だ。

持ち株会社初代社長・三嶋氏は異色の経歴

 三嶋氏は同業他社出身という異色のキャリアの持ち主だ。福井県出身。82年金沢経済大学(現・金沢星稜大学)卒。北陸ソニー販売(株)(現・ソニーコンシューマーセールス(株))を経て、89年に北陸地盤の家電専門店「100満ボルト」の(株)サンキュー高島屋(現・(株)サンキュー)に入社。住宅リフォーム事業の立ち上げに関わり、12年に社長に昇格した。その後、サンキューが家電量販店大手(株)エディオンの子会社となったことから、15年にエディオンの取締役ELS(住宅リフォーム事業)本部長となった。

 住宅リフォーム事業の実績を買われて、ヤマダ電機に転じた。17年6月、執行役員副社長に就き、1年後の18年6月にヤマダ電機社長に抜擢された。

 ヤマダ電機グループは19年12月に(株)大塚家具を傘下に収め、20年には住宅メーカーの(株)ヒノキヤグループを子会社化するなど多角化を進めてきた。三嶋氏は社長として(株)ベスト電器などのグループの家電量販店事業を手がける8社を一本化させるなど、買収で膨張した事業を整理した。

 その手腕を山田氏は評価し、20年10月の持ち株会社移行後、HDの初代社長に就けた。当初、山田氏自身が社長になるつもりだったが、三嶋氏を大抜擢した。それほど買っていたわけで、山田氏は三嶋氏を事業の継承者にしたと業界は受け止めた。

 ところが、三嶋氏は突然の退任。78歳という高齢の山田氏が社長に復帰する。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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