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2021年10月06日 10:25

【大手企業を糾弾する/大和ハウス】バイオガスプラント事業でずさん工事 プラント正常化を「投げ出し」の卑劣(3)

 国内住宅・建設業界のトップランナー、大和ハウス工業(株)(本社:大阪市北区)が受注したバイオガスプラント新設工事をめぐり、発注者である養豚農家との間でトラブルが長期化している。

浦ファーム バイオガスプラント

賠償認識に大きなズレ

 大和ハウス工業と養豚農家の(有)浦ファーム(本社:福岡県糸島市)は2017年10月16日に工事請負契約を締結し、浦ファームは請負人である大和ハウス工業に対し、バイオガスプラントの施工を発注した。

 約60年にわたって糸島市板持で畜産業を営んできた浦ファームは、糸島市バイオマス産業都市構想の一環としてバイオガスプラント事業への参入を決定。事業内容は、敷地内にバイオガスプラント1基を建設して、豚のふん尿などを原料とするメタン発酵で発電した電気を売電という計画だった。

 17年10月、浦ファームと大和ハウス工業は、バイオガスプラント新築工事の工事請負契約を締結。請負金額は約5億7,000万円。完成予定日は翌18年9月で、当初の計画では2カ月間の試運転を経て18年11月に引き渡される予定だった。

 18年11月、計画から2カ月遅れてプラント設備工事が竣工。ところが、試運転の開始早々にエンジンが停止するなどの複数のトラブルが発生し、その後も正常稼働には至らず、計画していた売電はいつまで経っても開始できずにいた。

大和ハウス工業からの申し出

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 竣工から15カ月後の20年2月、プラント正常化を断念した大和ハウス工業は、完成物件を引き渡すことができなくなったことを謝罪したうえで、浦ファームに請負契約の解除を申し出た。同年6月には、契約解除の条件として、(1)既払工事代金などの返還、(2)竣工物件の解体・更地引き渡し、または手切れ金3億円を支払ったうえでの現状渡しが提示された。

 浦ファームは契約解除の提案を受けた時点で、大和ハウス工業に対して3億5,296万円の工事代金などをすでに支払っていた。提示された返金額は、浦ファームの既払金から大和ハウス工業による立替金(2,405万8,859円)を控除して算出されたものであり、試運転期間中の改修工事費用については別途協議するという内容であった。

瑕疵認識の現れ

 浦ファームはバイオガスプラント事業の新設にともない、事業予算として金融機関から5億9,570万円を借り入れたほか、国から農山漁村6次産業化対策事業補助金8,433万9,000円の交付を受けている。これらの事業予算はバイオガス発電による売電収入に基づいた事業計画であって、売電が開始されない限り、プラント設備への投資は回収できない。

 浦ファームによる金融機関への利払い返済は17年11月から、元利金返済は18年11月から開始される計画であった。しかし、いつまで経っても売電収入が得られないため、浦ファームは元利金返済の立替払いを要請、大和ハウス工業はこれを承諾し、実施している。このことは、この時点で大和ハウス工業ではプラント正常化遅延に瑕疵の認識があったことの現れであろう。

 ところが、20年6月に提示された手切れ金は、浦ファームがこれまで投じてきた費用、プラントの撤去費用、残った消化液の処理費用にも満たないものであり、浦ファームにとっては到底受け入れられない提案となった。

どちらの債務不履行か

 契約解除の申し出に際して、既払金の一部を返還したうえで、プラント設備の解体・更地引き渡し、または手切れ金3億円とプラントの現状渡しを提示されたところで、浦ファームとしてはそのどちらも受け入れることができないのは当然だろう。これまでに多額の借り入れを行い、多くの関係者を巻き込んでのバイオガス発電事業の破綻は浦ファーム自身の破綻を意味する。

 そこで20年12月、浦ファームはバイオガスプラントについて、エンジンなどの設備の動作不良により正常な運転ができないことや、契約図面どおりに施工されていないといった瑕疵があったことなどから、バイオガスプラントの完成引き渡しに至らなかったとして、大和ハウス工業の債務不履行を理由に工事請負契約の解除を通達した。

強引な法務対応

 これに対して、大和ハウス工業は工事竣工受領書があることを盾に、本契約において債務の不履行は一切ないと主張。むしろ、20年2月の契約解除の申し出によって工事請負契約は合意解約に至っていたが、浦ファームがその事実を争うようであったため、改めて21年1月に浦ファームの債務不履行により契約を解除したと主張している。

 確かに、プラント設備工事が竣工した時点で、浦ファームは竣工受領書にサインをしている。しかし、その後、プラントが正常化しないなかで、計画図面と実施図面に300カ所以上の差異が生じていることが発覚していることや、浦ファームの元金返済を立て替えていたこと、浦ファームに対し手切れ金3億円の支払を申し出ていた事実などから、一切の責任がないと主張するのは無理があるのではないか。

 大和ハウス工業の主張の多くは事実を捏造しているという。浦ファームとしてはそれらを覆す物的証拠は十分にそろえており、本件については命がけで争う構えをみせている。国内住宅・建設業界のトップランナーと地方の中小企業の争いは、司法の場に委ねられることになる。今後の動向に注目したい。

【児玉 崇】

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