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2021年10月12日 15:02

【BIS論壇No.356】映画『ONODA 一万夜を越えて』

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は2021年10月8日の記事を紹介。

 戦争終結後もフィリピン・ルバング島に30年潜伏し、残置諜者の任務を全うした故小野田寛郎・元日本陸軍少尉をモデルにした映画「ONODA 一万夜を越えて」が10月8日、公開された。TOHOシネマズほか全国で上映されている。

 小野田氏は日本に帰国後、戦後の日本の風潮に失望し、1年足らずでブラジルに新天地を求めて、妻の町枝さんと移民した。筆者はニチメン(現・双日)のリオデジャネイロ支店駐在中の1977年に面識ができて以来、ご夫妻にはブラジル、東京と実に40年近くにわたり、親交をいただいた。

 筆者が92年に設立した「日本ビジネスインテリジェンス協会」の創立記念国際情報大会では、日本側の参加者を代表し、ドクター中松氏とともに顧問としてご挨拶をいただいた。以来、機会あるごとに町枝夫人と同協会情報研究会にご参加いただき、ご指導を願った。

 日本陸軍情報将校として情報の収集・分析にはことのほか厳しく、「情報源は信頼に足るか」「その情報の信憑性はどうか」を常に吟味することの大切さを強調していた。 

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 20年ぶりに再訪したルバング島に同行を勧められ、得難い貴重な体験をさせていただいた。フィリピン空軍が提供したヘリコプタ-から、同乗の小野田氏ともども見下ろしたジャングルはとても人が住めるようなところでなく、この大密林で戦後30年も戦われた小野田氏の人智を超えた生き様に強い感銘を受けたことを今でもありありと思い出す。

 この小野田氏をモデルにした映画「ONODA 一万夜を越えて」を企画、演出したのは日本人ではなく、フランスの新鋭アルチュール・アラリ監督(40)である。映画はフランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の国際共同製作で、フィリピン人俳優も出演。アラリ監督は「小野田さんというキャラクターへの『共感』が重要だったが、脚本を書き進めるうえで『倫理や道徳の問題にもっと正面から向き合うべきでは』と考え、その複雑な心情に迫ると同時に島民への暴力なども描きこんだという」(朝日新聞2021年10月8日付)。

 アラリ監督は本作をカンヌ映画祭の「ある視点」部門に出品。「すでに古典の風格を漂わせ、現地では(メインの)コンペ部門に入れるべきだったと主張する外国人記者の声を何度も聞いた。同じ顔ばかり起用する日本の業界キャステイングと無縁。作品に心身を捧げるべく集まった俳優陣の演技のアンサンブルに心が震えた」(映画ジャーナリスト・林瑞絵氏、日本経済新聞 21年10月8日付夕刊)。

 小野田氏は日本ビジネスインテリジェンス協会の永久顧問である。協会会員各位がコロナ禍の状況にありながらも、上映館のTOHOシネマズに足を運ばれることを希望する。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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